表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒薔薇の檻  作者: 麗夜
147/150

第147話「記憶が戻る日」

三月になった。

エレナの記憶が、少しずつ戻り続けていた。

断片的な映像が、夢の中に現れた。

霧の中の村。重い薪。宿屋の女主人。馬車と黒い紋章。目が合った瞬間。

「……コルヴィン村」

ある朝、その名前が浮かんだ。

「そこで生まれたんですか、私は」

ライアンに聞くと、首を振った。

「分からない。でも——育ったのかもしれない」

「宿屋で、働いていました」

「覚えたのか」

「少し。ヘルガという女性が——怒鳴っていた気がします」

ライアンが少し笑った。

「それがお前の育った環境か」

「でも——悪い場所ではなかったと思います。そこで、父がいて」

「父上? 農夫の、か」

「はい。大きくて、笑顔が多くて——料理が下手な人でした」

「農家なのに料理が下手か」

「二人で焦げた夕食を食べていました」

ライアンが、静かに言った。

「……それが、お前の原点なんだな」

「そう思います。帝国の皇女である前に——コルヴィン村で育った、エレナ・コールが私の根本にある気がします」

ライアンはしばらく黙っていた。

「それは——変えなくていい。それがお前の強さだと思うから」

エレナは双子を見た。

レインとソーン。二人が眠っていた。

「この子たちにも——根本を持たせてあげたい」

「どんな根本を?」

「正直であること。怖くても向かうこと。礼はいらない、と言われても、言いますと返すこと」

ライアンが少し驚いた。

「礼はいらない……それは」

「ルシアンとの話の断片が、戻ってきています」

「どんな断片が?」

エレナは少し笑った。

「怒らせましたか、と聞いたら——いいや、むしろ、と言いかけて止まった。そういう断片が」

「……それは、嬉しそうな記憶だな」

「はい。とても」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ