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第145話「エレナとルシアン、隔てられた窓」
ルシアンはエレナに直接会えなかった。
皇帝の命令で、エレナのいる棟への立ち入りが制限されていた。
しかしライアンが、一つの方法を作ってくれた。
庭の向こうの窓。
エレナの部屋の窓から庭が見えて、庭の反対側からであれば——距離はあるが、顔を見ることができた。
ルシアンは庭に立った。
窓の向こうに、エレナが見えた。
双子の一人を抱いて、窓の外を見ていた。
視線が合った。
エレナが、少し目を見開いた。
ルシアンは動けなかった。
遠い。声は届かない。触れられない。
でも——見えた。
エレナが、窓を少し開けた。
「……ルシアン」
かすかに、名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ああ」
「来てくれたんですか」
「来た」
「……子どもたちに、会えましたか」
「会えた」
「レインが——あなたに似ていますよね」
「……ああ」
エレナが、少し笑った。
窓越しの、遠い笑顔。
でも——確かに、エレナだった。
「また来ますか」
「来る。毎回来る」
「……待っています」
そこへ——廊下から足音が来た。
侍女が、エレナに何かを言った。
エレナが窓を閉めた。
ルシアンは、閉まった窓を見た。
それだけだった。でも——胸の中に、確かな温もりが残った。




