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第142話「名前」
エレナは双子の名前を、しばらく考えた。
ライアンが手伝ってくれた。皇帝が帝国風の名前を提案してきたが——エレナは首を縦に振らなかった。
「この子たちの名前は、私が決めます」
珍しく、はっきりと言った。
皇帝が少し驚いた。
「お前が決めていい」
「ありがとうございます」
エレナは双子を見た。
ルシアンの銀灰色の目をした子と、エレナの緑灰色の目をした子。
「……レイン」
エレナが言った。
「銀灰色の目の子を、レインと呼びます。雨という意味で」
「もう一人は」
「……ソーン」
「茨、という意味か」
「棘のある薔薇の茎——それを思い出したので。この子の目の色が、黒薔薇を思わせるから」
ライアンが、静かに聞いた。
「黒薔薇を、覚えているのか」
「……夢の中に出てくるんです。黒い花が咲いている庭が。それと——レインという言葉も、何か大切な意味がある気がして」
「雨の廊下で、ルシアン殿下と話したことがあったそうだ。以前、殿下が教えてくれた」
エレナは少し間を置いた。
「そうでしたか」
「覚えていないが、感じているんだな」
「はい」
ライアンが、双子を見た。
「……レインとソーン。良い名前だ」
エレナはルシアンへの手紙に、名前を書いた。
『レインとソーンと名付けました。二人とも元気です。レインがあなたに似ています。早く、会わせたいです。エレナ』




