第141話「知らせ」
ライアンがルシアンに手紙を送った。
帝国の正式な文書ではなく、個人的な手紙として。
『ルシアン殿下。エレナが双子を産みました。二人とも男の子で、元気です。一人はあなたによく似た目をしています。エレナは回復しています。記憶も、少しずつ戻り始めています。ただ——父上の意向で、状況は複雑です。焦らず、しかし諦めずにいてください。ライアン』
その手紙がルシアンに届いたのは、双子が生まれて十日後だった。
ルシアンは、手紙を読んだ。
双子。男の子が二人。一人はルシアンに似た目をしている。
「……エレナ」
ルシアンは手紙を握りしめた。
一人でいる部屋で、しばらく動けなかった。
子どもたちが生まれた。エレナとの子どもたちが。
なのに——そこにいられなかった。
立ち合えなかった。名前も、まだ知らない。
「……必ず行く」
ルシアンは立ち上がった。
アグネスを呼んだ。
「帝国への外交訪問を、再度申請する」
「殿下、前回断られていますが——」
「今回は違う形で申請する。ヴァルドラ王国と帝国の正式な友好条約の締結交渉として」
アグネスが少し驚いた顔をした。
「それは——国王陛下のお許しが」
「兄上は協力してくださる。昨日、話をした」
「……では、準備を」
「急いでくれ」
ルシアンは机に向かい、エレナへの手紙を書いた。
『エレナへ。二人の誕生、おめでとう。会いに行く。必ず。名前を教えてくれ。ルシアン』




