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第138話「届いた手紙」
ヴァルドラに、一通の手紙が届いた。
帝国の紋章ではなく、個人の封筒だった。
ルシアンが開けると——エレナの字だった。
読んだ瞬間、息が止まった。
『ルシアン様。雪の庭で、一緒に雪だるまを作った気がします。不格好で、左右の目が違って——でも笑った。それだけ思い出しました。少しずつ、戻るかもしれません。待っていてください。エレナ』
ルシアンは、その手紙を何度も読んだ。
雪だるまを覚えている。
あの朝のことを——エレナが覚えている。
記憶が戻り始めている。
「……待っている」
ルシアンは返事を書いた。
『エレナへ。雪だるまを覚えていてくれてありがとう。あれはひどい出来だったが、お前と作ったから良かった。来年も作ろう。どこでも、何年後でも。お前の記憶が戻る日を、待っている。毎日待っている。ルシアン』
手紙を、ライアン宛に送った。
返事が来るまで、また待つ。
でも今回は——待つことの意味が、少し違った。
エレナが覚え始めている。
それだけで、十分だった。




