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黒薔薇の檻  作者: 麗夜
138/150

第138話「届いた手紙」

ヴァルドラに、一通の手紙が届いた。

帝国の紋章ではなく、個人の封筒だった。

ルシアンが開けると——エレナの字だった。

読んだ瞬間、息が止まった。

『ルシアン様。雪の庭で、一緒に雪だるまを作った気がします。不格好で、左右の目が違って——でも笑った。それだけ思い出しました。少しずつ、戻るかもしれません。待っていてください。エレナ』

ルシアンは、その手紙を何度も読んだ。

雪だるまを覚えている。

あの朝のことを——エレナが覚えている。

記憶が戻り始めている。

「……待っている」

ルシアンは返事を書いた。

『エレナへ。雪だるまを覚えていてくれてありがとう。あれはひどい出来だったが、お前と作ったから良かった。来年も作ろう。どこでも、何年後でも。お前の記憶が戻る日を、待っている。毎日待っている。ルシアン』

手紙を、ライアン宛に送った。

返事が来るまで、また待つ。

でも今回は——待つことの意味が、少し違った。

エレナが覚え始めている。

それだけで、十分だった。

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