137/150
第137話「記憶の光」
十二月のある夜、エレナは夢を見た。
いつもと違う夢だった。
雪の降る庭。不格好な雪だるま。隣で、困ったような顔をしている背の高い男。
「……来年も作りましょう」
夢の中のエレナが言った。
「来年も?」
「もっと上手になります。毎年やれば」
男が少し間を置いた。
「……そうだな」
目が覚めた。
エレナは起き上がった。
夢の内容が、鮮明だった。
雪だるまを作った。二人で。不格好で、左右の目の大きさが違って——でも、二人で笑った。
「……ルシアン」
名前が、自然に出てきた。
あの男が——ルシアンだ。
雪の庭で、一緒に雪だるまを作った。二人で笑った。
エレナは腹に手を当てた。
「あなたたちのお父さんと——雪だるまを作ったことがある気がします」
声に出して言った。
子たちは、もちろん答えなかった。でも——腹の中で、少し動いた気がした。
翌朝、ライアンに話した。
「少し、思い出したかもしれません」
「何を?」
「雪の中で——ルシアンと、一緒に何かをした。笑った、という記憶の断片が」
ライアンが少し目を細めた。
「それは良かった。少しずつ、戻っているかもしれない」
「ルシアンに——手紙を出せますか」
「……難しい状況ですが」
「断片でも、伝えたい。覚え始めていることを」
ライアンが少し間を置いた。
「……私が仲介する。父上には内緒で」
「ありがとうございます」




