第128話「訪問の日」
一週間後、ルシアンは正式な外交使節として帝国の皇宮を訪れた。
帝国の皇太子ライアンが、出迎えた。
「ルシアン王弟殿下、ようこそ」
「お招きいただき、感謝します」
二人は向かい合った。
ルシアンは、ライアンを観察した。藍色の目、整った顔立ち——賢そうな男だ。そして何かを、探るような目をしていた。
ライアンも、ルシアンを観察していた。
外交上の挨拶が続いた。
昼食の席で、二人は向かい合って座った。
「ところで、殿下」
ルシアンが、静かに言った。
「単刀直入にお聞きしたいことがあります」
「どうぞ」
「先月、ヴァルドラ近郊の市場町で、若い女性が倒れて帝国の方に助けられたという話を聞きました。その方が、この皇宮にいると聞いています」
ライアンが、少し間を置いた。
「……何故そう思われますか」
「探している人間がいます。黒髪で、薬草の知識を持つ。ヴァルドラ王宮で働いていた」
「……その方との関係は」
「大切な人です」
ライアンがルシアンを見た。
長い沈黙。
「……会わせることは、今は難しい」
「なぜですか」
「様々な事情があります。ただ——その方の安否については、教えましょう」
「生きていますか」
「生きています。体も、回復しています」
ルシアンは、その言葉に目を閉じた。
生きている。
「……会わせてください」
「それは——今すぐには」
「なぜ」
ライアンが少し間を置いた。
「……殿下、一つ聞いていいですか」
「何だ」
「その方を、どうするつもりですか」
「共に生きる。それだけです」
ライアンが、ルシアンを見た。
その目が、何かを測っていた。
「……少し時間をください。確認することがある」




