124/150
第124話「ルシアンが聞いた噂」
帝国の首都に着いたルシアンは、情報を集めた。
帝国の首都は広大だった。人の数も、建物の規模も、ヴァルドラ王都とは比べものにならない。
情報を集める中で、一つの噂を聞いた。
「皇宮に、最近新しい方が入られたそうですよ」
商人が話していた。
「皇族の方ですか?」
「詳しくは分からないが——皇后陛下の縁者だという話で。でも表舞台には出ていないそうです」
ルシアンは、その話を聞いた。
皇后の縁者。表舞台に出ていない。
「その方の特徴は聞いていますか」
「さあ……黒髪の若い女性だとか、誰かから聞いたような気もしますが」
ルシアンの胸が、速く打った。
黒髪の若い女性。皇宮に入った。表舞台には出ていない。
「皇宮には、どうすれば入れますか」
「それは——ヴァルドラの方ですか。外国の方が皇宮に入るには、外交上の手続きが必要で。王弟殿下でも、正式な訪問申請がないと難しいかと」
ルシアンは、外交ルートを使った。
ヴァルドラ王国の王弟として、帝国への正式な挨拶訪問を申請した。
帝国の外交担当から返答が来るまで、また数日かかる。
その間、ルシアンは宿に滞在した。
毎日、手紙を書いた。
エレナへの手紙を。届け先はまだ分からないが——書き続けた。
今日も、お前を探している。帝国の首都は大きすぎる。でも、諦めない。
必ず見つける。




