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第122話「ルシアンの壁」
帝国の国境に着いたとき、ルシアンは止められた。
「ヴァルドラ王国の方ですか。入国の理由を」
「個人的な用件だ」
「帝国への入国は、事前の申請が必要です。急な訪問は——」
「王弟として、正式に申請する」
「それでも、許可が出るまで数日かかります」
ルシアンは歯噛みした。
外交上の手続きを踏まなければ、帝国には入れない。それは分かっていた。
「……申請する。何日かかる」
「通常は三日から五日です。ただ——理由によっては、許可が下りないこともあります」
ルシアンは一日で書類を整えた。
目的は外交上の友好訪問——表向きはそう書いた。
でも実際は、エレナを探すためだ。
待っている三日間、ルシアンは国境の町に滞在した。
アグネスに文を送った。
『帝国の国境にいる。エレナが帝国の人間に連れられた可能性がある。入国許可を待っている』
翌日、アグネスから返事が来た。
『帝国で先月、市場で倒れた若い女性が帝国の人間に助けられたという話が、商人を通じて入ってきました。特徴が、エレナさんに一致します』
ルシアンは、その文を握りしめた。
生きている。エレナは生きている。
でも——倒れた、とはどういう意味か。
入国許可が下りたのは四日後だった。
ルシアンは帝国に入った。
しかし帝国は広かった。首都まで、さらに六日の距離があった。




