表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒薔薇の檻  作者: 麗夜
119/150

第119話「表舞台に出られない理由」

帝国に来て一週間が経った。

エレナは、皇宮の一室を与えられた。

ライアンが丁寧に帝国のことを説明してくれた。歴史、文化、宮廷の慣習——。エレナは聞いて、覚えた。

でも——一つの問題があった。

「表舞台には、今すぐ出られない」

ライアンが言った。

「なぜですか」

「お前が子を宿していることは、医師から私と母上しか知らない。しかし——公式に皇族として発表すれば、全てが明るみに出る」

「それが問題なんですか」

「帝国の皇族が、婚姻外で子を持つことは——政治的に、複雑な問題になる。子の父が誰か、なぜ婚姻していないのか——様々な憶測を呼ぶ」

エレナは少し間を置いた。

「子の父は——私には分からない」

「分かっている。記憶がないから」

「でも、子がいることは事実で——」

「だから、今は静かにしていてほしい。表舞台には出ずに、ここで静養していてほしい」

エレナは窓の外を見た。

帝国の庭が見えた。広くて、整えられていて、美しかった。

でも——どこか、違う庭を思い出した。

記憶にないはずの庭。黒い花が咲いている庭。

「……分かりました」

「記憶が戻れば——状況が変わるかもしれない。それまで待ってくれ」

「記憶が戻る見込みはありますか」

「医師は、時間がかかると言っている。ただ——完全に戻らない可能性もある」

エレナは、その言葉を静かに受け取った。

完全には戻らないかもしれない。

掌の中に、黒い薔薇の花弁があった。

これが誰にもらったものか、なぜこんなに大切にしているのか——分からないまま、ずっと持っていた。

「……この花弁のことを、調べることはできますか」

「黒薔薇か」

「はい。何か、大切な意味があると思って」

「調べてみる」

ライアンが花弁を受け取った。

エレナは空を見た。

遠くに、山の稜線が見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ