第118話「判定の結果」
血の判定は、帝国の最高医師団が行った。
一日かけて行われた判定の結果が出たのは、翌朝だった。
ライアンと皇后が、医師から結果を聞いた。
「間違いありません。エレナ様は——皇后陛下の御血筋です」
部屋に、静寂が落ちた。
「ヴェルク帝国皇族の特有の遺伝的特徴が、全て一致しています。皇后陛下の第二子として、二十五年前に生まれたお方に相違ありません」
ライアンが、エレナを見た。
「……妹だ。本当に」
エレナは、その言葉を静かに受け取った。
記憶はない。でも——この人たちが、自分の家族だということが、今分かった。
「……私は、なぜここにいなかったんですか」
「それを調べています」
ライアンが言った。
「二十五年前、何者かがお前を宮廷から連れ去った。長年調べてきたが、手がかりがなかった。お前が何という名前で、どこで育ったかも——」
「エレナ、という名前は」
「本名ではないかもしれない。育てた者が、付けた名前かもしれない」
エレナは、自分の名前を思った。
エレナ。
それだけは——知っていた。確かに知っていた。
「……エレナは、私の名前です。他の名前は、受け入れられません」
「それでいい。名前は、自分が選ぶものだ」
皇后が、エレナの手を取った。
「あなたを、ここに迎えます。家に、戻ってきてください」
エレナは、皇后の手を見た。
温かかった。
知らない手のはずなのに——どこか懐かしかった。




