第114話「瞳の色」
三日が経った。
エレナの体は少し回復したが、記憶は戻らなかった。
ライアンは宿に留まり続けた。従者たちは不思議そうにしていたが、何も言わなかった。
四日目の朝、ライアンがエレナの部屋に来た。
「少し話せるか」
「はい」
「お前の目を見せてくれ」
エレナは少し驚いたが、ライアンを見た。
ライアンが、エレナの目を細かく見た。
「……やはり」
「何ですか」
「その目の色——深い緑がかった灰色で、光の当たり方によって金色に見える。この色の目を持つ人間は、限られている」
「どういう意味ですか」
「帝国の皇族に受け継がれる目の色だ。ヴェルク帝国の王族の血を引く者だけが、この色の目を持つ」
エレナは自分の目を確認しようとした。手鏡を取って、見た。
深い灰色の中に、緑と金が混ざった目。
「これが……特別な色なんですか」
「帝国では知らない者がいない。この色の目を見れば、誰でもヴェルクの血筋だと分かる」
「私が……帝国の血を引いている?」
「可能性がある。それに加えて——」
ライアンが、少し間を置いた。
「お前の顔が、帝国の皇后——私の母に、非常によく似ている」
エレナは黙っていた。
「どういうことですか」
「母は二十五年前、一人の娘を産んだ。しかしその娘は、生後まもなく何者かに連れ去られた。以来、行方不明のままだ」
「……それが、私だと?」
「断言はできない。だから——確かめたい」




