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黒薔薇の檻  作者: 麗夜
111/150

第111話「助けた男」

「誰か! この方が倒れた!」

市場に声が響いた。

人だかりができた。

その中に、一人の男がいた。

年齢は二十代後半。背が高く、日に焼けた肌に、深い藍色の目をしていた。豪華ではないが質の良い旅装束を着ていて、傍に数人の従者がいる。

男はエレナの傍に膝をつき、状態を確認した。

「脈は」

従者が確認した。

「あります。ただ——頭を打っています」

男がエレナの顔を見た。

そして——止まった。

「……この方は」

従者が首を傾げた。

「殿下?」

男の目が、エレナの顔に釘付けになっていた。

白い肌、黒い髪、整った顔立ち——そして、目の色。

まだ目を閉じているが、その目の形が——。

「運べ。近くの宿に」

「はい」

「丁寧に。頭を打っているから、揺らすな」

エレナは男の従者に抱えられ、市場の近くの宿に運ばれた。

男は宿の主人に金を渡し、一番良い部屋を借りた。

「医師を呼べ。今すぐ」

「はい、すぐに」

エレナが寝台に寝かされた。

男は椅子を寄せ、エレナの顔を見た。

(似ている。あまりにも、似ている)

藍色の目が、エレナの顔を細かく確認した。

鼻の形、口の形、顎のライン——全部が、男の脳裏にある一人の女性の顔と重なった。

「……ラウラ」

男は呟いた。

帝国の皇后の名を。

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