第109話「手がかり」
国王の許可を得たルシアンは、本格的にエレナを探し始めた。
しかし——三ヶ月以上が経っていた。
最初の手がかりは、フェルン町だった。でもそこから先は、完全に途切れていた。
ルシアンは地図を広げた。
フェルン町から、エレナが選びそうな場所。川のそば、静かな村、薬草師が働ける場所——。
北は寒すぎる。東はガルデニアに近くて危険だとエレナは思うはずだ。西は王都に近すぎる。
南か。
フェルン町より南に、いくつかの小さな集落がある。
ルシアンは南の地図を細かく見た。
村の名前が並んでいる。グリン村、ウォーレ村、ヴァルン村——。
ヴァルン村。
国境に近い、山と川に囲まれた場所。
エレナなら——国境に近い場所を選ぶかもしれない。
何かあれば、国を越えて逃げられる。そういう場所を選ぶかもしれない。
「ヴァルン村に行く」
「殿下、今度もお一人で?」
「そうだ」
「せめて近衛兵を——」
「一人だけ連れていく。目立ちたくない」
ルシアンは翌朝、出発した。
馬で南へ向かった。
山の道を越え、川沿いを進んだ。
秋の景色が続いていた。色づいた木々、冷たい空気、遠くで鳥が鳴いている。
三日かけて、ヴァルン村に着いた。
小さな村だった。山と森に囲まれ、川が一本流れている。
村の入口で、老人に聞いた。
「最近、一人で来た若い女を見かけないか。黒髪で——」
「ああ、エレナさんかい」
老人があっさりと言った。
ルシアンは、息を止めた。
「……知っているか」
「ジーナ婆さんのところで働いてるよ。川沿いの小屋に住んでいる」
ルシアンは礼を言い、馬を進めた。
川沿いの小屋。
秋の午後の光の中に、小さな小屋が見えた。
軒下に薬草が吊るされていた。
窓に、蝋燭の光があった。
中に、人がいる。




