第108話「国王の変化」
九月、国王がルシアンを呼んだ。
「カルセンとの条約が正式に調印された。セルディアも、新しい枠組みを受け入れた」
「……ありがとうございます」
「礼を言うのはお前ではなく、私が言う立場だ」
国王が、ルシアンを見た。
「……お前は、この半年、何も言わずに仕事を続けた」
「言うべきことは言いました」
「エレナのことは言わなかった」
「……仕事で証明しようと思っていたので」
国王はしばらく黙っていた。
「……王妃に、叱られた」
ルシアンが少し驚いた顔をした。
「王妃が?」
「お前とエレナを引き離すことに加担したことを——王妃が、ずっと気にしていた。あれは間違いだったと、言われた」
「……王妃は」
「あの人は、私より人を見る目がある。エレナという人間を、最初から評価していた。私が外交上の都合で動かしたことを——責めていた」
ルシアンは黙って聞いていた。
「エレナは、今どこにいる」
「……まだ見つけられていません」
「探しているのか」
「ずっと」
「見つかったら——」
国王が少し間を置いた。
「……連れて帰っていい。私は——もう、反対しない」
ルシアンの目が、わずかに動いた。
「……本当に」
「お前が半年間、何も言わずに仕事で示したことは——私が間違っていたことを証明している。エレナが遠くから動かした関係が、この国を助けた。それは認めなければならない」
ルシアンはしばらく黙っていた。
それから——静かに言った。
「……ありがとうございます、兄上」
「礼はいらない。早く見つけて来い」




