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黒薔薇の檻  作者: 麗夜
104/150

第104話「ルシアンの手紙」

五月になった。

ルシアンは海外訪問を続けながら、毎日手紙を書いた。

エレナ宛の手紙を。

届け先が分からなかった。でも、書いた。

書くことで——自分の気持ちを、整理した。

今日はこんなことがあった。カルセンで美しい花を見た。お前が見たら何と言うか、と思った。

セルディアの市場に、お前が好きそうな薬草があった。名前を覚えておいたから、いつか一緒に来よう。

眠れない夜が続いている。お前の草薬茶が、やはり一番効いていた。

毎日、書いた。

届かない手紙を。

六月に帰国したとき、ルシアンの机には百通近い手紙の束ができていた。

アグネスがそれを見て、何も言わなかった。ただ、目を赤くした。

「エレナの手がかりは、まだ」

「ありません。申し訳ありません」

「……お前のせいではない」

ルシアンは手紙の束を引き出しに入れた。

「これをいつか、渡す」

「殿下——」

「必ず渡す。それが——今の私にできることだ」

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