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黒薔薇の檻  作者: 麗夜
103/150

第103話「海外で聞いた話」

セルディアへの訪問の日が来た。

ルシアンはカリア王女に会った。

噂通り、聡明な女性だった。外交の知識があり、落ち着いていて、人当たりが良い。

ルシアンは率直に言った。

「婚約はお断りします」

カリアが、少し間を置いた。

「……正直ですね」

「時間を無駄にしたくないので」

「理由を聞いてもいいですか」

「想う人がいます」

カリアが少し笑った。

「宮廷で話題になっていた方ですか。平民出身の」

「はい」

「今は、どこに?」

「……探している最中です」

カリアがルシアンを見た。

「あなたは——彼女のために婚約を断っているんですか。それとも、彼女が好きだから断っているんですか」

「どう違う」

「前者は義務から、後者は感情から。どちらかによって——あなたの行動の意味が変わる」

ルシアンは少し考えた。

「……両方だ。彼女が好きだから断る。それがひいては、彼女のためになる」

カリアがうなずいた。

「分かりました。婚約はなかったことにします。ただ——一つ」

「何だ」

「彼女が戻ってこないとしても——あなたは諦めますか」

「諦めない」

「何年かかっても?」

「何年でも」

カリアが、少し目を細めた。

「……羨ましいですね」

「何が」

「そこまで思われている人が。彼女は幸せ者だ、気づいていなくても」

ルシアンは、その言葉を静かに受け取った。

「……彼女が知るように、する」

「ぜひそうしてください」

帰路、ルシアンは馬車の中で考えた。

カリアの言葉。エレナが幸せ者だ。

(そうじゃない。エレナを幸せにするのが、私の仕事だ)

まだ、何もできていない。

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