第101話「見つからない」
四月になった。
ルシアンは海外訪問の合間に、エレナを探し続けた。
各地の情報網を使い、エレナの特徴を伝えた。黒髪、深い目の色、薬草の知識を持つ若い女性——。
しかし、今回は見つからなかった。
前の二回は、エレナの行動パターンから場所を絞れた。でも今回は——エレナ自身が、見つかりにくい場所を意識して選んでいるようだった。
カルセンでミラに会ったとき、ルシアンは言った。
「エレナを探している」
「また姿を消したんですか」
「三度目だ」
ミラが少し間を置いた。
「……今度は、遠いところへ行ったのかもしれませんね」
「どういう意味だ」
「前の二回は、すぐに見つかった。今回も同じなら、もうエレナさんは見つかっているはずです。でも見つからない——ということは、今回は本気で姿を消そうとしている」
ルシアンは黙っていた。
「彼女が消えた理由は、分かっていますか」
「分かっている」
「では——今すぐ見つけることが、正しいかどうかも、考えましたか」
「どういう意味だ」
「エレナさんは、あなたのために去りました。追いかけることで、彼女の選択を否定することになるかもしれない」
「彼女に、選ばせたくない」
「それは——あなたが、彼女の選択を尊重していないということでは?」
ルシアンは、ミラを見た。
「……では、どうしろと言う」
「エレナさんが戻ってきたいと思える状況を作ることが、先かもしれません」
「状況を変えるには時間がかかる」
「そうです。でもエレナさんは——待てる人だと思います。あなたが本気なら」
ルシアンはしばらく黙っていた。
「……どうすれば、状況が変わる」
「セルディアとの問題を、婚姻以外の形で解決できれば——国王の立場も変わるかもしれません」
「方法は?」
「カルセンが仲介できます。私が動きましょう」
ルシアンは、ミラを見た。
「……なぜ、そこまでしてくれる」
「あなたたち二人の話が、カルセンでも語り継がれているんです。平民出身の女性が、誠実さだけで王室に迎えられた話——それは、うちの国の人間にとっても、希望の話なんです」




