↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/20

10.村おこしをしたい!






「……村の名産を増やしたい?」


 それは、モモちゃん事件から数日後のことであった。

 村長の娘であり、俺たちの世話係であるユリアがこう言ったのである。


「うん。うちの村って、過疎でしょ? 外からやってくる人だって、みんなヌタクサを買い取りにくる行商人さんだし。観光客さんがいたらいいのにな、って」

「観光客、か。そういえばこの村って、ヌタクサ以外は何もないんだよな」

『リクさん? 地味に失礼な言い方になってますよ』

「あははっ! 大丈夫だよアディアさん、本当のことだし!」


 家の裏の畑を耕す手を止めて、そんな会話をする。

 ちなみにユリアはしゃがんでこちらを見つめており、アディアに至っては壁に立てかけてあった。少し遠くに目をやると、ライムが子フェンリル――フリルに転がされて悲鳴を上げている。


「にゅほwwwちょ、おまwww痛いでござるwww!」

「キュキュッキュ~っ!」


 ……アレは、とりあえず笑ってるから死にはしないか。

 本気のヘルプが飛んできたら対応しよう。そう思って俺は視線を戻した。


「それで、例えばなにか思いつかないのか? ユリアは」

「もう。思いついてたら、相談してないよ~」

「あー、それもそうか」


 ユリアはそう言って、頬を膨らせる。

 まぁ、そうだよな。おそらくは彼女なりに考え、そして色々な人に相談して、巡り巡った結果に俺たちのところへ話を持ってきたのだろう。


「だとしたら、外部から来た俺たちが案を出すしかないか……」

「ごめんね、リクさん。変なことお願いしちゃって」

「いや、別に構わないけれど。そういや、アディアは何か思いつかないのか?」

『私、ですか? うーん。そうですねぇ……』


 しかし、残念ながら俺も特に思いつかなかった。

 なのでアディアに話を振ってみる。すると彼女は、しばし考え込むのであった。


『あ、そう言えば。この村のものではありませんでしたけど……』


 そして、何か閃いたといった風にこう言う。


『この村を助けに来る前に一緒に入った温泉、あれは気持ち良かったですね!』

「ぶふっ!? あ、あぁ……アレな。うん、そうだな」


 それを聞いて、俺は思いっきり吹き出した。

 なんとか取り繕うが、その様子を不思議そうに見ていたのはユリアだ。


「温泉? それに、何を動揺してるの? リクさん」

「な、なんでもねぇよ!?」


 指摘されて、つい声を裏返らせてしまう。

 余談であるが、ユリアにはアディアの性別を教えていなかった。したがって、ここでは物言う剣と一緒に風呂に入った男であると、ただそれだけなのである。だが、だからこそアディアの性別はバレてはいけないのであった。


 そう。知らなかったとはいえ、その……混浴してた、なんてことは。


『あ、そう言えばアレって混浴、って言うんですよね! 情報はあります!』

「ぶふ――っ!?」


 バレたくなかったんですけどねぇ!?

 思いっきり言った。アディアから大きな爆弾が投下された!

 俺はまたもや吹き出して、天を仰ぐのである。これは決定打であろうと、そう思われた。これで俺は晴れて、変態の名を授かることになるのである。


「あははっ! アディアさん。剣と人じゃ、混浴って言わないと思うよ?」


 と、思っていたのだが。

 どうやら、ユリアは微妙に勘違いをしてくれているらしかった。これはどうにか、極めて自然な流れで話を持っていかなければならない!


「そそ、そうだぞアディア! 剣と人間では、混浴とは言わない!!」

『……? そうなのですか。というか、何故に必死になってるのですか?』

「そそそそそそ、そんなことはないぞ!! 断じて!!」

『はぁ、そうですか。別にいいですけど……』


 かくして、俺の名誉は守られたのであった。

 アディアには不審がられたが、そのことはいっそどうでもいい。

 俺は自身の誇りを汚さずに済んだことに、拳を握りしめるのであった。


「……? ところで、二人はどこの温泉の話をしてるの?」


 その時である。

 ユリアが俺たちの話に割って入ってきた。


「どこって、この村の西の山の方にある温泉だよ。知らないのか?」

「え、知らないよ。そんなの、あったの?」


 俺が答えると、少女は不思議そうに小首を傾げるのであった。

 ふむ。どうやら、この様子だと本当に知らないらしい。


『あの温泉なのですけど……』


 今度はアディアがそう言った。

 何やら記憶を、彼女の場合は情報を探っているようである。

 そして、ようやく該当するものを見つけたらしい。聖剣さんはこう言った。


『湧き出す湯の中に、とても珍しい成分がありました。効能としては――おおよそ、万能と言っても良いでしょう。あらゆる病を治癒する効果があると、そう考えられます』

「マジ? あの温泉、そんなに凄かったのか……」

『だから、私も言っていたじゃないですか。効能が良い、って』

「お、おう。剣にも効くなら凄い効能なんだな、やっぱ」


 俺はアディアとそんな会話をする。

 それは本当に世間話のような、そんなものだと思っていた。


「………………………………」


 だけど、知らなかったのである。

 この時ユリアが、ひそかに瞳を輝かせていたことに。




 具体的に言うと、瞳にお金のマークを浮かべていたというコトに……。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。