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オズ  作者: 紗パカルギ
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若宮光

「で、海藤君はまだ来てないと」


藤崎先生は笑顔だが少し怒っているようにも見える。


「はい」

真はただ先生の目に視線を合わせないことを心がけながらそう答えた。今新崎と真は職員室前の廊下に立たされて軽い説教をされていた。

「藤崎先生、あの、俺が悪いんです」

新崎が唐突にそう言う。

「それはわかってます」

「あり?」

新崎はキョトンとする。


いや、そりゃあそうでしょうと真は思う。


「で?海藤君はいつ来るの?」


「わ、わかりません」

「奥橋さん!今校長先生とオズ学園からいらっしゃった中丸暁なかまる あき先生がお話ししてる間に海藤君呼んできてちょうだい?」

もう最後の?には拒否権など許さない意味が込められているような気がした。


そんな…次こそ私がとばっちりで黒こげにされるかもしれないのに?


真は泣きたくなった。

するとそこに助け舟を出してくれる人がいた。

「藤崎先生、僕も奥橋さんと一緒に拓斗を呼んできます」


金髪碧眼の美少年若宮光だった。


天使だ。まさに天使だ!

真は思わず若宮に手を合わせてしまいそうになった。


「あら、まぁ、そうね。若宮君が一緒なら大丈夫でしょう。じゃ、二人ともよろしくね」


にっこりと微笑みながら藤崎先生はそう言って職員室に入っていった。ちなみに新崎は海藤と会わせるとまた同じことの繰り返しになると判断されて職員室で待機となった。

はぁ…なんかもう疲れた。


「すみません。奥橋さん。霧と拓斗が迷惑かけてしまったようで」


「あ、いや、大丈夫ですよ!ちょっとビックリしたけど」


「そうですか?…なら良かったです」


若宮は軽く微笑む。

ま、眩しい…眩しすぎる!あなたは天からの使いですか?と聞きたくなるほど輝いて見える。


「では行きましょうか?」

「あ、はい」


行くと言っても職員室は二階にあり海藤が猫に囲まれたのは職員室の真上の三階だった。


というか海藤は何故猫を見て固まったのだろうか?


「あの、若宮君」

「何ですか?」

「海藤君って猫が嫌いなの?」

すると若宮は苦笑いしながら「いえ、」と言って

「その逆です」

と答えた。

「逆?」


若宮は歩みを止めて

「あんな状態になるほど好きなんです」と言って大きくため息をつく。

真も前方を見て固まった。


そこには猫に囲まれてスヤスヤと眠っている海藤がいた。

猫達も海藤にピッタリくっつき眠っている。


なんか…幸せそう…

海藤は表情こそ無表情だが気持ちよさそうに眠っている。


「…猫みたい」

「僕もそう思います」

「海藤君、起きるかな?」

「起こします」


若宮はキッパリと言いきった。


若宮は一匹の猫に近寄りその猫のすぐそばで床に手をつけた。

一体何をするつもりだろう?


そんなことを考えている内にみるみる床が音を立てだした。

パキッ…パキパキッ

廊下が…凍ってる?

海藤と周りの猫達の場所だけがあっと言う間にスケート場のように氷づけになってしまった。


そして若宮はその氷の床を一回軽くコンと叩いた。


ピシッと氷の床全体に小さなヒビが少し入る。この時点で何故か猫達は一匹残らず一斉にどこかへ駆け出していった。


そして海藤だけが氷の床の上で寝ている状態になった。


すると若宮はまた大きなため息をひとつつくとポツリと呟いた。

「最後のチャンスだったのに」

そう言って再び氷をコンと叩いた。


次の瞬間


バキィィンとザバァッという音と共に海藤が氷の中に落ちた。


「え!?」

真は首を傾げる。


海藤が氷の中に落ちた。しかも水しぶきが見えた。


真は慌てて氷の中を覗こうと駆け寄る。

すると若宮は慌てる真に大丈夫ですよと言って微笑む。


「少し冷水を浴びせただけですから」


いや、浴びせたというより冷水に沈めたのでは?と真は言いたかったがなんか怖いので止めた。


するとすぐにザバァッという音がしてずぶ濡れになった海藤が氷の穴から這い上がってきた。


真は海藤に水も滴るいい男!と言ってやりたかったがオーラがまた怒りに近くなっていたので止めた。


「光…なんだこれは?」

落ち着いた声でだが殺意のこもった声で海藤が若宮に問いかける。


「見ての通りだよ。拓斗が眠って起きないから冷水を浴びせただけさ」


「浴びせるというより沈めただろ?」

あ、私も同意見です海藤君。


「どちらにせよ冷水で目が覚めただろう?」


「覚めるどころかショック死してもおかしくねぇ温度に思えたが?」

確かに海藤の髪の毛の先がよく見ると凍っている。

「いや、拓斗なら死なないかなって」

若宮は平然とそう答えた。


あれ?実は若宮君は腹黒かったりする感じなのかもしれないぞ?

真は少し震えを感じた。


「…霧は?」

「もうとっくに職員室にいるよ。皆拓斗待ちだったんだ」

「あいつ…殺」

「わかったから早く行くぞ。奥橋さんは拓斗と霧のせいで帰宅時間が遅くなってしまっているんだ。少しは頭を冷やせ」

「十分冷えたんだが?」

「なら良かった」


何だろう?なんかこの二人はこの二人で仲悪いの?

なんか火花が散ってますがどうしたんですか!?


海藤はスタスタと先に行ってしまった。

そこで真は気づく。

もう服が乾いてる。

恐らく彼は炎のオズなので自分で乾かしたのだろう。


意外に器用だな…下手な人は炎のオズを持っていても乾かそうとして自分の体を燃やしてしまう人もいるのに。

真はそんな人を見たことがあった。


若宮は海藤の態度などみじんも気にしていないようであった。

「お待たせしました。職員室に行きましょうか」

「あ、はい…」


天使は天使でも意外に腹黒天使かもしれない。

真はそんな失礼なことを考えながら若宮の隣で歩いていた。

職員室に行くともう既に全員が集まっていた。


真が初めて見るのはオズ学園から来た先生と女子生徒二名。

自己紹介によるとオズ学園からの先生は中丸暁という先生で男性だった。

暗い藍色の少し癖っ毛のある髪に吸い込まれそうな青の瞳。見た目は二十歳ぐらいの男性に見える。

女子生徒二名は一人はオレンジ色の髪でツインテール、瞳は綺麗なエメラルドグリーン。口調が「~ですわ」と言っていて可愛らしいお嬢様というイメージの宮崎愛菜。

もう一人は肩より少し下まで長い赤毛ロングの髪に赤い瞳。とてもしっかりしている優等生タイプに見える白木琴音。


皆揃って輝いていた。

なんだこれ、オズ学園って美男美女しか入学できないんですか?と聞きたくなるほど美男美女が揃っていた。


「さて、じゃあ、皆揃ったな?んじゃこれからのことについて説明する」


中丸先生は真も入れて計六人に向けて話し始める。


「まず明日の日程だ。明日からお前らは他人の心を一時的になら覗けるようにしてよし。で、怪しい奴がいたら放課後のミーティングで報告。いいな?」


真はこの場から今すぐに逃げたくなった。


他人の内心が覗けるとか…いや、私もやろうと思えばできるけど…誰だって内心は知られたくないものだろうと思い今まで使ったことはない。(学校生活の中では)


それが明日から始まるなんて…皆このことを知ったら大騒ぎだろうなぁとぼんやり考える。

勿論、真はこのことを他の生徒に言ってはいけない。

まぁ、あなたたちの目の前にいる奴オズなんですけどね。

内心で呟く。

これが明日から行えないだなんて…

私、バレないようにできるだろうか…

いや、やるしかない!諦めるな真!お前なら皆を騙せる!

自分で自分にエールを送りながら真は中丸先生の話しを最後まで聞いていた。

「じゃあ、明日からよろしくね。奥橋さん?」

中丸先生は真にニコリと微笑んだ。

「はい、頑張ります」

バレないように。


真は強くそう決意した。

さて、騙し通せるでしょうか?

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