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オズ  作者: 紗パカルギ
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第六十話 わからない何か

徐々にシリアスになってきます。

「で、話ってなんだ?」

生徒指導室で二年のキングの一人である東堂勇人と中丸は向き合って座っていた。

東堂はすぐに口を開いて話し出した。

「奥橋真にこの前とは比べものにならない程の強力なオーラが纏わりついているのをキング発表の日に見た。気を付けておいてほしい」

「!!成程、あの日奥橋は『ずっと誰かに見られている』と俺に言ってきたんだが、そのことが大きく関係しているかもしれないな」

「本人も感じる程か…かなりの強い感情の類だろうな」

「その時は体育館に強力な結界を張った。そうしたら奥橋も視線を感じなくなったらしく落ち着いていた」


東堂は無表情のまま考え込み、首を捻る。

「奥橋は確かにオズの能力はキングに選ばれるくらいだから高いことはわかる。だが、他のキングメンバーだって奥橋と同じくらい、いや、それ以上に強い奴もいる。なのに他のキングメンバーには何のオーラも纏わりついていなかった。おそらくは、奥橋個人を狙っているのだと俺は考えているんだが、どう思う?中丸」

「先生をつけろ先生を。そうだな、確かに奥橋だけを狙っている可能性は高い。奥橋は高校からこの学園に入ったにも関わらずキングになる程のオズの強さを持っていた。もしかしたら学園に入る前のどこかで何かに目を付けられたのかもしれない」

「何か、ねぇ…例えば?」

「例えば……魔人」

「!!」


東堂は「そうか」と呟いてから黙り込んだ。


中丸は黙った東堂に対して口を開いた。

「……そう言えば、まだ奥橋がオズだと発覚していない時に記憶を見たんだが」

「何か思い当たるのか?」

「奥橋の記憶を見た時、五歳の頃の記憶から始まったんだ」

「それより前は」

「見えなかった。その理由をまだ本人に聞けていない」

「明らかに怪しいな…じゃあ、そのことを奥橋に聞いておいてくださいよセンセー」

「言われなくてもそのつもりだよ、東堂クン」


そうして東堂と中丸はその場から立ち去るのだった。




そんな話があっていることなど真は知るはずもなく、真の初キッス強奪事件から一週間が経った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





真は周りを見渡してホッと息をついた。

その途端、背後から呆れられた声が聞こえる。


「……お前さぁ……鈍い」

「にょっ!?」


真は思わず変な声が出てしまい拓斗に怒りを覚えたが今はそれよりも優先すべきことがあった。

真は拓斗から全速力で遠ざかるために風を操って自分自身の身体を空に浮かせ、そのまま空中を逃げた。

そんな真の後ろから同じように何かしらのオズを使って拓斗が後を追ってくる。

「潔く捕まれ!」

「全力で逃げます!!!」


今は中丸先生と拓斗と真で鬼ごっこをしている真っ最中。


遊びと侮るなかれ。これも立派な授業なのだ。


鬼ごっこは鬼ごっこでもただの鬼ごっことは少しルールが違う。

普通の鬼ごっこは、一人鬼を決めて十秒数えたら鬼ではない人たちを捕まえに走り出すのだが、真達の今やっている鬼ごっこは結構物騒だ。

まずはじゃんけんで鬼を一人決める。ここまでは普通。

次に鬼が決まった瞬間に鬼ごっこスタート。なのでじゃんけんをしている最中にもうすでに走る構えはとっておかなければ即捕まる。

そして、もし鬼に捕まったらそこでその人はゲームオーバー。鬼を交代するでもなくただただゲームオーバーとなるのだ。

そして鬼が制限時間内に全員捕まえることができたら鬼の勝ちで鬼から生き残れば鬼の負けとなる。


ここまではまぁ、まだ単純でどこが物騒なんだと言われるかもしれない。


当初の真も中丸先生の説明を聞いてそう思った。しかし、中丸先生は「あと、最後に一つ補足」と言って


「この鬼ごっこはオズを使っても構わない。しかも、攻撃もアリだ。怪我をしても問題ない。あとで治療学科に自分で治してくださいと言いに行けばいいんだからな。あまりにも重症を負った場合は……ご愁傷様だ☆」


うん、なんてひどいルール!!最後とか死んでも知らない☆ってことだろうが!



というわけで拓斗と中丸先生という恐ろしい方々と鬼ごっこをしているのだった。

ちなみに鬼ではない者同士も仲間というわけではない。

何故なら、この鬼ごっこの場所には『安全地帯』と呼ばれる人が一人しか入れない小さな円のスペースがあり、そこに入れば鬼に捕まらないというなんとも卑怯な場所である。しかも制限時間内ずっと入り続けることができる。


つまり、鬼ではない者が二人だけとしたら一人は何もせずにその『安全地帯』に入りもう一人は逃げ続けなくてはならない場合があるのだ。


そして、今、真は逃げていた。鬼である拓斗から。



勿論、中丸先生はニコニコと微笑みつつ胡坐をかいて『安全地帯』に居座っている。


「おぉ~、奥橋、お前意外と足速いな~」

「そんな事言ってないでそっから出てくださいよっ!!!」

「あはは、嫌だ」

「あんた本当に教師ですか!?」

「他の奴と話をする余裕があるのか?」


その言葉と共に真の右耳に何か熱いものがかすった。

「あつっ!!」

「チッ……外したか」

なんと火弾でした。



「ちょ、あ、危ないでしょーがっ!!」

「あぁ?ルール違反じゃありませーん」

「言い方がムカつくっ!!」

「はい、もう一発」

「鬼畜!!」



~三十分後~

「今日の勝者は俺と拓斗だな」

中丸先生は淡々とそう告げる。

「お前、弱すぎ」

拓斗は大きくため息を吐きつつそう真に言う。


「この、悪魔どもめが」

真はそう吐き捨てるように言いつつ地面に倒れていた。

鬼ごっこをしただけなのになぜかもう全身ボロボロだ。


「今日の午前はこれで終わりな、午後は今から一時間後の二時から午前と同じ場所に集合ってことで、あぁ、奥橋はちょっと話があるから残っとけ、解散」



拓斗はさっさとどこかへ行ってしまい真はのろのろと立ち上がる。


「いつか絶対に負かしてやる…」

低い声で真は呟いたが中丸先生は笑いながら「頑張れー」と小馬鹿にしたような声援を送る。

その後すぐに中丸先生は真面目な表情になり、真と目を合わせる。

「さてと、奥橋、俺はお前に聞いていなかったことがあるんだが、今聞いていいか?」

「…?どうぞ」

「お前の五歳より前の過去を教えてくれないか?」


そう聞かれて真は言葉に詰まる。


「それは…すみません。わからないんです」

「何でもいいんだが、些細な事でも思い出せないか?」

「私、五歳からの記憶しかないんです。どうやら両親と一緒に交通事故に遭ったみたいで、両親は即死だったらしいんですけど私だけ頭を強く打ちつけて記憶喪失になったけど奇跡的に軽い怪我ですんだとは義理の両親から聞きました。でも、聞いただけで自分ではまったく覚えていないんです」

「そうか、わかった。でも、もし、何か思い出したりしたらすぐ俺に伝えてくれないか?」

「何故ですか?」

「キングの発表があった日にお前『誰かにずっと見られている』って言って顔色が悪くなるぐらい怯えていただろ?」

「はい……あ、でも、中丸先生に相談した後はすっかり視線を感じなくなりましたよ!あの時は本当にありがとうございました!」


そう言って真は頭を下げた。すると、中丸先生は軽く笑ってから真の頭を乱暴にかき回した。


「なんか、お前って…面白いな」

「お、面白いんですか?なんか、褒められているのかけなされているのかわからないんですが」

「褒めてる褒めてる」

「嘘っぽい…」


そんな真の言葉にまた軽く笑ってから中丸先生は「真」と名前を呼ぶ。


「は、はい!」

「困ったときは一人でなんとかしようなんて思うなよ?俺や拓斗、他の皆を頼れ。いいな?」

「……はい、ありがとうございます」

真は笑顔でそう答えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




夜、ベッドの上で真は寝転がって中丸先生の言葉を思い出す。

「頼れ」と言われた時に、真はすぐに返事ができなかった。

昔から真はギリギリまで自分の辛いという気持ちを自分で気づくことが得意ではなかった。



正直、真は誰かに頼ることが苦手だ。嫌でたまらないわけではないのだが、自分の本当に苦しんでいる姿を大切な人たちにさらけ出すと余計な心配をかけてしまう。それが嫌で仕方がないのだ。

そして、自分で自分が誰かに情けない姿をさらすたびに妙に恥ずかしくてどうしようもなくなってしまう。

前の高校で拓斗達に助けられた時もキングの発表の日に中丸先生にしがみついて震えてしまった時も後で胸の中になんとも言えないモヤモヤとした感情が残るのだ。


これは、きっと自分の我が儘なのだろうとは思う。そして、自分の本当の気持ちから逃げているとも思う。いつも人のせいにして本当は辛いことを見せたくないのではなくて解決したくない、向き合いたくないのだ。


そこまで自分でわかっているのに何も変えようとしないのはいけないと頭では理解している。

でも、これがどうしてなかなか上手くいかない。



美夏からよく言われていた。「頼ることは別に恥ずかしくもなんともないんだよ」って。


なのに、私はいつもその言葉に頷いたくせして何も変わらなかった。昔も今も。



「駄目だなぁ…私」

自分の弱さに思わず呆れてしまう。


この感情が所謂、『思春期』なのかななどと思いつつ真は瞼をゆっくり閉じた。

すると案外すぐに意識が遠のいていった。



そして、またいつかと同じ夢を見た。


雨の中、自分はびしょ濡れで立ち尽くしており、周りには壊れた建物がある。

ザァザァと雨音しか聞こえない。


そして、私の目の前にはゾッとするほど綺麗な女の人が同じく雨に濡れていた。

その人はゆっくりと微笑んでいるがあまりに口の中が真っ赤に見えたので綺麗なのに恐ろしさを覚えた。


私はその女の人を見つめながら決まって最後はこう言うのだ。






「ゆるさない」






そしてこの夢はいつも私自身の言葉で目が覚めるのだ。




夢なのにあまりにも現実のような感覚に陥ってしまうのは何故なのだろうか。


そんな疑問を浮かべつつ真は瞼を開く。

まぁ、夢なんだし、深く考えなくていいだろう。

真はいつも最後にはそう思って終わる。


だが、後々この夢が自分に深く関わってくるなんて真はこの時思っていなかった。


ここまで読んでくれてありがとうございます!

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