その後
俺様ナルシストからの突然のキスを受けた夜、真の部屋。
「真、今、何て言ったの?」
おかしい、いつもはこの笑顔がとても可愛らしく見えるはずなのに、今だけは恐怖しか感じない。
「いや、だから、憧れの初キッスを拓斗に奪われてしまいましてね~あはは…」
「真に…?可愛い真に??……ふふっ…ふふふっ」
あぁ!いけない!!恋の身体からものすごい殺気が次から次へと湧き出てきている!!
「ま、まぁでも、きっとからかう程度でしたんだと思うからあんまり気にしていないよ」
そう言った真の肩にポンと手が置かれる。手を置いた相手を見ると哀れみを含んだエメラルドグリーンの瞳と目が合った。
「真、ご愁傷様ですわ」
「何で!?やめてよ!もう私の人生終わるみたいな言葉!!」
「そうだよ、愛奈!まだわかんないよ」
「え、琴音さん『まだ』ってどういう意味?」
二人の意味深な言葉で真は一気に不安になる。
拓斗にキスされたことはそんなにも悪い事が起こる前触れなのだろうか。
「とりあえず、今から唇を消毒しよ?私、消毒液持ってくるから」
「いや、大丈夫だから。恋、拓斗を細菌扱いしてない?」
「え?細菌でしょ?」
(当たり前でしょ?みたいな口調で言いのけたよこの子!!!)
真が恐れ多くあの超絶美形の海藤拓斗を細菌呼ばわりする恋の将来が不安になった。
「恋ちゃん、せめてもっとオブラートに」
「オブラート?包んで揚げるオブラートに失礼だよ」
「そこまでっ!?」
一体恋の中での拓斗の印象はどこまで地に落ちるのか想像するだけで恐ろしかったので真は考えることを放棄した。
「拓斗は一度欲しいと思ったらもう、逃げられませんわよね~…」
「まぁ、でも、真の性格上、拓斗も難しいとは思うよ?」
「お二人さん、何を話していらっしゃるのかな?」
「「何も~??」」
うわっ!この子達少し楽しんでいるよ!!人がこんなに恋をなだめようと頑張っている時に変な方向に話を進めているよ!!
「兎に角、真は拓斗と二人っきりになる時は警戒していたほうが良いと思いますわ」
「警戒?何を?」
「そうだね、真はこういうことに関して鈍いから」
「鈍い?私結構、勘は鋭い方だよ?」
「「はいはい」」
「し、信じていない!まったく信じていない返事だっ!!」
女子達の恋バナ(とは少し違う)はまだまだ続くのであった。
その同時刻。
海藤拓斗の部屋に皆が集まっていた。真を連れてどうしたのかを問い詰めるために。
すると、拓斗は何も躊躇することなく「キスしただけ」と言ったのだ。
「拓斗、それは本当なんですか?」
「嘘をついてどうするんだよ」
光が禍々しいオーラを放ちつつ拓斗を見ている。
霧は目をキラキラと輝かせて「それでそれで!?」などと楽しんでいるが残りの三人は固まっていた。
「拓斗、それは流石に真が困ったのではないですか?というか抜け駆けですか?」
「は?奥橋真は誰にも渡さないに決まってるだろ?」
「君の所有物みたいに言っていますが、本人の意思は」
「知るか。向こうがまだわかってないならこれから伝えていくだけだろ」
「でも、奥橋絶対にわかってないと思うな~」
そんな会話を繰り広げる三人を眺めつつ残りの三人も口を開き始める。
「すごいね、美形だとなんでも許されるんだね」
柏谷凪はそんなことを言いつつ感心したように海藤を見る。
「つまり、拓斗は奥橋さんのことが大好きなのか」
ものすごく真面目な顔で瀬木蘭丸はそう言って頷いている。
「そんな直球で言う瀬木は好きな子いないの?」
柏谷は少しからかうよな口調でそう尋ねる。
「いないな。まだ」
「奥橋さんのことは?」
「まだ、あまり関わったことがない。だから好きかどうかはわからない」
「じゃあ、キングメンバーの子達と関わったら好きになる可能性は?」
「可能性としてはゼロじゃないと思う」
「そっか…ゼロじゃないんだ。やっぱり直球だね。…ってあれ?そう言えば足影がずっと黙ってるけどどうし…たの?」
そう言って足影麓の方を見た柏谷は動きをとめる。
瀬木もつられて足影を見てから、首を傾げた。
「足影、どうしたんだ?熱でもあるのか?」
真面目に心配する瀬木に足影は口をパクパクを動かしつつ首をふる。
今、足影はものすごく顔を真っ赤にしていたのだ。
女の子のような顔付きで顔を真っ赤にさせて声も発しなかったらもう本当にただの女の子にしか見えない足影は顔の火照りを覚ますように自分の顔に手の甲をあてて冷やそうとする。
「や、やっぱり、熱があるんじゃ」
「い、いや、違うんだ瀬木。これは、その」
「足影、もしかしてキスっていう単語に照れたの?」
「きっ!?きす!?ち、違うぞ!違うからな!?」
そうは言うものの足影の顔は「キス」という単語を聞いた途端に先程よりも真っ赤になったのでもう肯定しているのと同じだった。
「そうか、熱じゃなくて足影は単に『キス』という単語で顔を真っ赤にさせていただけなんだな」
「せ、せ、瀬木っ!!そんなことは言わなくてもいいだろう!?」
「そんなこと?俺は何か変なことを言ったのか?」
「いや、そうではなくてだな…あぁ、もういい」
「す、すまない足影。俺はただ足影が顔を真っ赤にしている原因は熱ではなくて『キス』という単語を」
「もう言うなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そんな二人を止めることなく柏谷は面白そうに見つめていた。
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同時刻の職員室。
「ちょっと、今、何て言ったの?」
金髪碧眼の美少女女神(自称)ステラは身体を震わせて目の前の人物を睨み付ける。
「何って…俺の生徒二人は海藤拓斗と奥橋真だと言っただけだが」
「何で奥橋真なのよ!ま、まさか、中丸、あなた奥橋真と一緒になりたいからって何か仕組んで」
「アホかお前。また変な勘違いしてんだろ」
「だって、中丸は奥橋真のことやたらと気に掛けてるじゃないっ!」
「そりゃ、生徒だからな。というか、俺は生徒全員を気に掛けているつもりだが?」
「むぅ…奥橋真に向ける眼差しが優しいくせにっ!!」
「知るか。お前の勝手な妄想だろうが」
「違うわよ!」
そんなやり取りをしている時に一人の生徒が職員室に入ってきた。
「中丸先生、話がある」
そこにいたのは二年のキングの一人である東堂勇人だった。
「東堂か、なんだ?」
「兎に角、二人で話がしたい」
「わかった。ステラ、離れろ」
今、中丸はイスに座っているのだが、ステラが首元に腕を回してきており身動きが取れない状況だったのだ。
「嫌よ!離したくないもの!」
「大事な話をするんだよ、ど・け!」
「い・や・よ!!!」
中丸はステラの腕を外そうとし、ステラは外されまいとさらにきつく中丸を抱きしめる。
「ステラ」
「じゃあ、キスして!」
「はぁ?」
「キ・ス!!」
そう言ってステラはさらにギュッと中丸を抱きしめる。
してもらえないことはわかっているのでステラはきつく抱きしめたのだが、中丸は大きなため息を吐いてから一言。
「わかった」
「へっ?」
ステラはその一言で腕を緩めてしまった。その隙に中丸はステラの腕を外してステラの方を向く。
そして、ステラの首元に手を回して自分の方に引き寄せたのだ。
そしてステラのおでこに軽く口づけを落としてから淡々とした表情で席を立ち、
「これでいいだろ?さぁ、東堂行くぞ」
と言ってスタスタと歩いて行く。
ステラはその場で彫刻のように固まっていた。
「……」
とりあえず東堂は何も見なかったことにしようと心に決めたのだった。
ほのぼのしている話でした。
次回からは少しシリアスが入ってきます。
ここまで読んでくれてありがとうございました!!




