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オズ  作者: 紗パカルギ
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誤解です

麗矢先輩にエステル(麗矢先輩の妹ちゃん)の言葉を伝えた日の夕食のことだった。


真はもうお決まりになっているいつもの女子メンバーで他愛もない会話を楽しんでいたのだが、恋の一言で空気が変わった。


「で、真、会長に告白しちゃったの?」

「……えっと、恋ちゃん?話が全然つながらないんだけど??」


確か今、真達は「各担任の先生」について話していたはずだ。なのに、突然の爆弾を恋は投下してきた。


「れ、恋!!そんな直球で聞いてはいけませんわ!!」

「そ、そうだよ!!もっとさりげな~く遠回しな表現で聞かないと!!」


いや、どうして愛奈と琴音までもがそんなに慌てているのだろう。まるで本当の話みたいじゃないか。


「あの、何をおっしゃっているんだい、三人とも…」

「確かに会長は女の子には優しい人だと思う。でも、絶対に真は騙されていると思うのっ!!」


恋は何故か少し目に涙を浮かべつつ真に詰め寄って「騙されている」と連呼してくるが、真にはまったくもって何の事を言っているのかまだ頭が理解できずにただ恋をなだめることしかできないでいた。


「恋ちゃん?やっぱり何か大きな勘違いをしてい」

「やっぱりあの薬を会長の飲み物に混ぜt」

「恋ちゃん!?」

「待っててね真!私、頑張るから!」

「何を!?いや、待ってやっぱり言わなくていい。なんか怖いから……というか、頑張らなくていいからね!?」


顔はとても満面の笑みなのに言っていることが表情と合っていない恋の肩を掴んで真は必死で「何も頑張っちゃダメだからね」と念を押した。


「というか麗矢先輩には伝えることがあっただけだよ?告白じゃないよ」

「「そうなの!?」」

「……何で愛奈と琴音がそんなに驚いているの?」

「だ、だって会長に『二人だけで話をしたい』だなんてそうとしか思えなくなるじゃない?」

「そ、そうですわ!!しかも少し顔を伏せ気味で恥ずかしそうに言うから」

「ち、違うよ!少し、その、ゆ、勇気がいるじゃないか!(会長さんに自分から話しかけるの)」

「「勇気!?(告白の!?)」」

「つ、伝えなきゃいけないことがあっただけだよ!!他の人の伝言を伝えただけ、というか二人とも何でそんなに顔を真っ赤にするの!?あ、ちょ、恋!どこ行こうとしてるの!?待ちなさい!!」



そんな風に騒ぎ合っているのを丁度食器をもって通りかかった霧が聞いていたことを真達は誰も気づくことはなかった。



同じ食堂の真達から少し離れた場所で霧はキングの男子メンバー全員と食べることになっていた。

いつもは全員で、などはあまりないのだが今日はたまたま皆が同じ時間に居合わせたので霧が皆で食べようと持ちかけたのだ。


すると、断られるかな~と思っていたが皆あっさり承諾してくれたので霧は少し驚いた。

そして、先ほどの真達の会話を聞いてもっと驚いたのだった。


「今日は驚くことが多い日だなぁ」

思わずそう呟いてしまった。少し霧は「あ、しまった」と思う。

「何に驚いたんですか?」

案の定、光が食いついてきた。


「え、えっと、皆でご飯一緒に食べようって言ったらあっさり「いいよ」って言われたからさ~!」

真が会長に告白したらしい、だなんて言ったら一人絶対に不機嫌になる奴がいるもんなぁ……


「そう、ですね。確かにいつも一人か二人何かしらいませんでしたからね」


そう言って微笑む光は相変わらず食堂の外からの黄色い歓声をさらにヒートアップさせた。


そんな時拓斗がまだ五分も座っていないのに眠そうな目になってきているのを霧は発見し、少し目を覚ましてやろうかなと思いつく。


霧は面白い事が好きだ。笑うことが大好きだ。皆が笑うことが。勿論自分自身もだが。


だから、霧は面白い反応をしてくれそうだなと思ったら先程まで絶対にやめておこうと思ったこともしてしまうことがよくある。いつもすぐ行動に移してしまう。これは昔からの悪い癖でもあり、時には長所でもある。


「あ、あと、さっき耳に入ってきたんだけどさ!!」

「また驚いた事ですか?」

「そう!!真が会長に告白したんじゃないかって騒いでたよ」


ピクリとわずかだがテーブルに顔を突っ伏して寝ようとしていた拓斗の身体が反応したのを霧は見逃さなかった。


「……真が?」

光も珍しく目を見開いて驚いた表情をしている。

「まぁ、本人は激しく否定してたけど顔真っ赤だったなぁ」


ガタン



「拓斗、どうしたんだ?」

「…………ちょっと行ってくる」

突然立ち上がった拓斗の表情は言うまでもなく「不機嫌」と書かれているかのようだった。



「あらら~、行っちゃった!!」

「……霧、何でそんなに楽しそうな顔をしているんですか?」

「別に~?」

そんな霧の反応を見て光は何かを察したらしく大きくため息を吐いて苦笑する。



「真に迷惑をかけては駄目じゃないですか」

「いや、俺はただ噂をしただけだよ!」

「……はぁ、まったく」

そう言って何故か光も立ち上がりどこかへ歩いて行く。


「どこ行くんだ?光」

「会長に確かめに行きます」

「じゃ、俺も行く!!」


そう言って霧も光の後について行き、残されたのは瀬木蘭丸と足影麓と柏谷凪の三人だった。



「すごい、海藤って意外と感情を表に出すタイプなのかなぁ」

そんなことを柏谷はカレーを口に運びつつ二人に向かって話しかける。

「本人は隠しているつもりなんじゃないのか?多分」

足影は苦笑まじりにそう言ってサバの塩焼きを口に運ぶ。

「不機嫌って顔に書いてあったが、どうしてだ?」

蘭丸は真剣にそう言ってオムライスに向かっていた手を止める。

「それは、奥橋さんが会長に告白したことが気に入らないからじゃない?」

「………どうして、気に入らないんだ?」

「……あれだね。瀬木はかなりの鈍感な奴かもしんないね」

そう言って柏谷は暖かい眼差しを瀬木に向ける。

「そうか?」

瀬木は首を傾げつつ再びオムライスを口に運び始めた。


「そうだよ!俺でもわかるもん」

柏谷は自慢げにそう宣言した。

「じゃあ、どういうことか教えてくれるか?」

瀬木は真剣にそう尋ねる。

「あぁ!つまり、奥橋さんが会長に告白すると何故海藤が不機嫌になったのかというと……海藤は会長が奥橋さんに取られるみたいで嫌だったんだよ!」

「げほっごふっ!!!!」

「ど、どうしたんだ足影?体調でも悪いのか?」

瀬木が本当に心配そうに聞いてきた。

「………いや、なっ…なんでもない。食べ物が喉に詰まっただけだ」

「足影、食べ物はよく噛まないと消化に悪いぞ?」

柏谷は少し呆れ顔でそう言ってきたので足影は殴りたい衝動に駆られた。

(お前が予想とは違う方向の見解を述べたからだろうがっ!!)

足影は内心で激しくそう思ったがグッと堪えることにする。

「しかし、そうだったのか。拓斗は、会長の事…」

「そうなんだよ。まるで兄のように慕ってるって霧が言ってたからきっと自分のお兄ちゃんがとられるのが嫌だったよ。いわゆるジェラシーだなっ!!」

「待て待て待て待て!!!お前ら話がどんどんややこしくなるからいい加減間違いに気づけっ!!」

「なんだよ足影、どこも間違ってないよ」

「……間違いなのか?」

「どう考えてもおかしいだろう!?奥橋が会長をとってしまうことが気に入らないんじゃなく、会長が奥橋を取ってしまうことが気に入らないんだろう」


「「………そうなのか?」」

「何でそんなに心底不思議そうな顔なんだよ!!普通に考えればその考えに行き付くだろうが!」


瀬木と柏谷は二人で顔を見合わせて「そうなの?」という意思疎通をしている。

そんな二人を足影は冷めた目で見つめてからサバの塩焼きに目を移した。

(お前ら二人ともが鈍いんだろうが)

足影はそう言いたいのをグッと堪えて食事を再開するのだった。




今日、真に最大の事件が起こった。


「本当に本当に真は会長に告白したわけじゃないの?」

「さっきからずっとそう言ってるじゃんか!!」


それはやっと誤解が解けてきたと思った矢先のことだった。


「おい」

真の背後から何故かすごい殺気を含んだ声が聞こえてきたのだ。

恐る恐る振り向くとそこにはものすごく怖い顔をした拓斗俺様ナルシストが立っているではないか。


「何でしょう」

真は恐ろしさのあまり敬語でそう答える。

するとすぐに拓斗は真の腕を掴んで席を立たせると何も言わずに引っ張っていく。


「あ、あの」

「いいから来い」

「は、はい」


あまりの威圧感に何も言い返せなくなった真はおとなしく連れて行かれることにした。


拓斗ファンの人々を掻い潜って真と拓斗は人目のつかない廊下の隅っこに着く。

後ろには壁しかなく逃げ道がない真は思いっきり壁にはりつきながら拓斗と向き合う。


「あの、どうしたんでしょうか?」

まだ恐怖から敬語になっているのを拓斗は気にせずに真の顔のすぐ近くの壁に手を付いて真を完全に逃げられないようにする。


「た、拓斗クン?」

「会長、好きなの?」

「へっ?」

「告白、したのか?」

「………し、してない!それ誤解だからね!?というかその話をどっから聞いて」

「あっそ。ならいいや」

「はい!?」

「つか、逃がさないから」

「何が!?」

「覚悟しとけ」

「いや、だから何g」


突然唇が何かで塞がれた。それはほんの一瞬の出来事だった。


今、私は何をされた??まさか、まさか…


そんな真の表情に満足したのか拓斗は何も言わずにスタスタとどこかへ行ってしまった。


残された真は自分の唇を触りながらわなわなと震える。


「は、初キッス…なんですけどぉぉぉぉ!?」

そう誰もいなくなった廊下で真は一人顔を真っ赤にしながら叫んだのだった。




後にこのことは「真の初キッス強奪事件」と呼ばれることになる。(恋達に)

ここまで読んでくれてありがとうございます!

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