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オズ  作者: 紗パカルギ
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試練③

「はい!これあげる!」


目の前には手のひらサイズの人、つまり小人さんがいる。


真は小人が小さな身体で一生懸命に抱えているパズルのピースを素直に受け取る。

「ありがとう」

「えへへ!どういたしまして~」

真のお礼に小人の女の子は金髪で三つ編みをしている髪が揺れる程もじもじしながらそう答えた。

真は可愛らしい小さな生き物を抱きしめたい衝突に駆られたが潰してしまいそうで怖かったので我慢した。

そして視線を自分の手のひらに移して一つの溜め息を吐く。

(これで四つ目か)

真は今、試練の真っ最中でパズルのピースを五つ集めなければならない。今までの試練は1日かかるものから早いと一時間弱で終わるものまで様々な試練を四つクリアしてきた。

どこぞの国の生意気王様、喋るイケメン狼、気の弱い巨人、騒がしい骸骨、可愛い小人…


今までの試練で出会ってきた者達を思い出す。

(なんかちゃんとした人間が最初に出会ったアリババさんしかいないな…)


そんなことをふと考えつつ真は苦笑する。

真は可愛い小人と別れを告げてもといた場所に戻ってきた。

「次で上手くいけば最後!」

そう自分に言い聞かせるように真は呟いて大きく伸びをする。

そして最後の試練になるかもしれない扉のドアノブに手を掛けてゆっくりとひねる。

そして足を一歩踏み出した途端、真は宙に浮いているような感覚に襲われた。

「うわっ!?」


慌てて風を操って落下しないようにと思ったのだが、それはできなかった。

普通風は少しでも吹いていれば操ることができる。しかし今回はまるで「風」という存在がない世界のようだ。

(風が…吹いてない)

真は頭が真っ白になる。このままではただ地面に落下するのを待つしか、そう思いつつ自分が他のオズも使えることを思い出した。

(風がだめなら…)

真が辺りを見渡すとそこは一面真っ白な世界だった。


「は?」

どこまで続いているのかわからないほどただ果てしなく白い景色しか見えない。

もはや景色と言っていいのかさえ怪しいほど何もない空間。


そして真はここで違和感をやっと覚える。

「…落下してない」

下をみてもただただ真っ白なので自分がどれほどの高さの位置にいるのかがまったくわからなかった。

しかし、地面ではないということだけは自分が浮遊感を感じているのでわかっていた。


とりあえずここでじっとしているわけにもいかないので真は足を歩く時のように動かしてみる。

すると、困ったことに自分が進んでいるのかさえわからなかった。なにしろ辺りは真っ白なのだ。


「うわー…どうしよう…」

言葉にしてもどうにもならないとはわかっていたが真は途方にくれてそう呟いた。


そんな時だった、どこからか声が聞こえてきた。

『お前は誰だ?』

どこか怯えているような怒っているような声。女の子の声に聞こえた。


真は冷静に周りを見渡しつつ大きな声で自分の名を名乗る。

「奥橋真です、えっと…君は??」

どこにいるのかはわからない相手だったのでキョロキョロと視線を動かしながらそう問いかけた。


『オクハシマコト……私は、エステル』

「エステルさん、だね。えっとー…いきなりなんだけど、質問していい?」

『……エステルでいい』

少し拗ねているような声でエステルが言うので真は少しクスリと笑ってしまった。

「わかった!じゃ、エステル!私の事は真でいいからね、んで、さっそく質問をして」

『マコト…マコト!わかった!マコト!!』

「う、うん、そう。真です」

『マコト、ちょっと待ってて』


そう言うと声は聞こえなくなり突然目の前に一人の少女が現れた。

「わっ!」

「マコト、僕、エステル!!」


そう言って目の前の美少女はニコリと笑う。

腰辺りまである長い艶やかな黒い髪にゾクリとするほどのきめ細やかで白い肌。そして大きなクリクリとした瞳は金色で思わず息を飲むほど美しく見えた。

白いワンピースを着たエステルと名乗る少女は真をじっと見つめている。


見た目からして小学一年生程に見えるエステルだが、ここは異世界の可能性が大きいので見た目に騙されてはいけないと真は思った。


「マコト?」

真がいつまでもあまりの美しさに見とれており何も返事をしなかったのでエステルは痺れを切らしてしまったようだ。


「ご、ごめんね、あんまり可愛いから見惚れちゃってた…」

あれ、これ少し変態みたいな発言かな…

そんな真の心配をよそにエステル小首を傾げつつ「そう」とだけ答えた。


「あ、改めて、初めまして、エステル」

「うん!マコト!!初めまして!!」

「あの、出会ってすぐで悪いんだけど、一つ聞いてもいい?」

「いいぞ!!」

「ここって…どこ?」


そう聞くとエステルは一瞬キョトンとした表情をする。そしてすぐに微笑んでから真の手を握りどこかへひっぱっていく。


「エ、エステル?」

「ここは時と時の狭間の世界。そして僕は時の管理者だ」

「??」

「こんなところにくるお客さんは初めてだったから少し怖かった。でも、真は優しそうだから、いい」

「は、はぁ」

「真、何を知りたい?過去?未来?」


真は頭の整理が追いついておらずに黙ってしまう。

少しの沈黙の後、真はエステルが自分の手を少し力を入れて握ったので何か口を開かなくてはという気になった。


「エ、エステルは何か困ったこととかある?」

「え?」

突然そんなことを聞かれたら誰だって戸惑うとは分かっているものの真はそう質問する。

これは試練。ならば何か相手が困っていることが前提なはずだと真は考えたのだ。するとエステルは真を引っ張って歩くのをやめ、足を止める。そして、少し考えた後にポツリと呟いた。


「レイヤに…会いたい」

「レイヤ?」

「僕のお兄ちゃん。とっても優しくって、強くってかっこいいんだ!!」

目をキラキラと輝かせながら兄の事を語るエステルはどこにでもいる妹に見えた。


「そっか。お兄さんがいるんだね」

「あぁ!!だから、会いたい!」

「なんで会えないの?」

「ここは時を操れる者しか入ることはできない。だから、会えない」

「エステルはここから出られないの?」

「出ることはできる、けど、僕がここから出て行ったら時の管理者がいなくなってしまう。そしたら、過去や未来がぐちゃぐちゃに混ざり合って…大変な事になる」


そう言ってエステルは真の手をギュッと強く握りしめる。

真はさて、どうしようかと考える。おそらくエステルをエステルの兄に合わせるのがここの試練なのだろうがまったくいい案が思い浮かばない。そんな真を見かねたのかエステルが口を開いた。


「マコト、僕はレイヤに会いたい。でも、いいんだ。僕はここで生きていくってお母様と約束したから!」

「エステル…」

「レイヤにはもう二度と会えないかもしれないけど、マコトが僕の言葉をレイヤに伝えることはできるだろう?」

「…うん、できる!!」

「じゃあ、こう伝えてくれ『レイヤ、大好きだよ』って」


そう言って微笑んだエステルは泣いているように見えた。

真は胸が締め付けられたような感覚を覚えたが、自分ができることはこれ以外にないとわかったので微笑みながら力強く頷いた。


そして真はエステルに兄のことについてどんなことでもいいから情報をほしいと頼むとエステルはポツリポツリと話し出した。

「僕と同じ黒い髪に金の瞳だ。あと、いっつもニコニコ笑ってて、皆から頼られてて、」

真は相槌を打ちつつ頭の中に情報を刻んでいく。


そして最後の言葉で真は雷に打たれたような衝撃が走ったのだった。


「あとは……すっごく、女の子が大好きだった」

エステルは少し呆れ顔でそう言った。


「女の子…大好き…」

真はそう呟きつつある人物を思い出す。

確か、あの人黒髪で金の瞳じゃなかったっけ?

確か、あの人ずっと笑顔だったような?

確か、あの人女の子大好きとか言われてたような?

しかも、あの人皆に頼られるっていう存在ともいえる…


「生徒会長だったような…」


「マコト!レイヤを知っているのか!?」


真はその問いには答えずにエステルの肩をガシリと掴んで恐る恐る尋ねる。

「エステル、そう言えば、フルネーム…聞いてなかったね?」

「僕の、フルネーム?」

「そう、聞いてもいいかな?」

「あぁ、勿論!!というか、僕も言い忘れてた!実は僕の名前はエステルっていうのともう一つ違う名前があるんだ!」


そしてエステルが改めて自己紹介をしてくれた。



「僕のもう一つの名前は、真城ましろ 星歌せいかだ」



世間って…案外狭いものなのかもしれない。

真はそう感じてしまった。




ここまで読んでくれてありがとうございました!

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