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オズ  作者: 紗パカルギ
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試練②

ザァァァっという音をたてながら真とアリババ王の目の前で悪魔が砂のようになって崩れていく。


お父さん、お母さん、元気ですか?私は元気です。今のところは。



真はたった今試練の一つ目を乗り越えたばかりだ。サソリのような悪魔を倒すことが今回の試練。

本当に倒せるのか不安だったのだが、どうにかアリババ王と協力して悪魔を倒すことができた。


(まぁ、少し天気を操ったけどもバレてはいないでしょう!)

真はため息を吐きながらその場にストンと座り込んだ。


そんな真をまだ驚きを隠せないような顔で見つめたままアリババ王は自分の掌に目を移す。

(音が、止まない)

先程、悪魔が砂のように消えて行ったのだが、まだアリババの耳にはザァァっという音が届いてくる。


ここは砂漠地帯のど真ん中。照りつける日差しに誰もが目を細めるはずなのに。


(何故、雨が降る?)


アリババは今、雨に打たれていたのだ。しかも、小雨ではなく今までで見たことがない程の大雨。


別に雨が降ったことがないというわけではない。だが、この国は雨なしの国と呼ばれるほどに雨が降らないことで有名なのだ。


年に一回降ればいいと言われるほどで、なおかつその一回しか降らない雨も小雨程度のものばかり。

昔からこのことが問題でこの国は水に頼らなくてもいいような作物を育ててなんとかここまでやってきた。


そんな国なのだ。


なのに悪魔が現れてから今までの間の僅か数時間で空が見たことがないくらいに黒くなり突然大粒の雨が降ってきた。


まるで狙っていたかのようなタイミング。

しかもその雨のおかげでアリババの砂を操るオズの役にたち、結果悪魔を倒す大きな手助けとなったのだ。少し出来すぎてはいないだろうか。

しかし、その疑問について考え込む前にやらねばいけないことがあった。

冷たくて心地よい雨に打たれながらアリババは共に協力してくれた異世界からの魔法使いの少女を見る。


疲れたと愚痴りながら座り込んでいるがどこかホッとしたかのように口元が緩んでいる。


そんなマコトを見ながらアリババはつられてしまったようで口元が緩んだ。

そしてアリババは自然と足を動かしてマコトの方に歩いて行く。


そんなアリババに気づきマコトは視線をアリババに向けてから口を開いた。


「やりましたね!」

雨の音に負けないくらいに大きな声でそう言ってマコトは微笑む。

「あぁ」

アリババはとても優しい眼差しをマコトに向けながらそう一言返事をした。


そのあと、アリババは深く頭を下げた。


「礼を言う。協力してくれて本当にありがとう」

「……こ、こちらこそ、どうもありがとうございました!!」


マコトのその言葉にアリババは顔を上げてから首を傾げる。


「何故、お前が俺に礼を言うんだ」

「だって、協力してくれたじゃないですか」

「それは俺がお前に協力を頼んだからだろう」

「そうだけども、…まぁ、私がお礼を言いたかったんですよ!それでいいでしょ!」

「……そうか」


アリババはマコトを不思議な者を見るような目で見つめながらそう答えたのだった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



悪魔がいなくなったその夜は真も含め国中が祭のように大賑わいだった。しかも、雨は夜遅くまで降り続き国中の人々が珍しいのか外でびしょ濡れになるのも構わずに踊ったり歌ったりしていて真は楽しんだ。



身体を休めるといいと言ってアリババは豪華な一室を真に用意してくれたので真はお言葉に甘えてその部屋でぐっすりと眠りについた。


翌朝、真は部屋からそっと抜け出していた。


(確か、パズルのピースって言ってたよなぁ)

真はこれが試練だという事を今さっき思い出して、パズルのピースと鍵を捜している。


この試練の部屋のどこかにパズルのピースと鍵があると中丸先生は言っていたので真はとりあえず宮殿内を探索することにした。

が、流石に悪魔を倒す事を手伝って感謝されている身でも勝手に宮殿内を見て回るのはバレると面倒くさそうだと判断した真は蜃気楼を使って姿を相手から見えないようにした。


正確に言えば見えないようにオズを使おうとした、が正しいことになったのだが。



「こんな朝早くになにを嗅ぎまわっている」

「っ!?」


思わず真はビクリと身体が跳ねる。そしてゆっくりと後ろを振り向いた。

そこには昨日と変わらず王様の服装のアリババが腕を組んで呆れ顔でこちらを見ているのが目に入ってきた。


「あ、アリババさん、おはようございます」

「おはよう、で?マコト。お前、何をしようとしていたんだ?」


質問しているのだが、アリババは何とも言えない王の威圧感を遠慮せずに出してきていた。

真は冷や汗が止まらない程焦っているのに気づかれないように一つ咳払いをしてから笑顔をつくる。


「いや、ちょっと、トイレどこかなって」

「トイレならすぐそこだ」


我ながら馬鹿な質問をしたと思った。アリババが指を指したほんのすぐ向こうにトイレがあったからだ。

「あ、そうですか!ありがとうございます!じゃ、私はこれd」

「あー、そうそう!お前に貸した部屋のすぐ傍にもトイレがあったはずだが…どうして俺の部屋の近くなんだ?」


ニコリと微笑んでいるがアリババ王よ、目が笑っていないぞ。


真は手の冷や汗を密かにシャツでふきつつ目を逸らす。


「その、あー…さ、探し物をですね」

「探し物?」

「はい、えっと…パズルのピースと鍵を…探して…て」


アリババはものすごく怪しげな者を見る目でマコトを見つめる。


「って、やっぱりここにはありませんよね!!部屋に戻りま…」


そこで真は動きをピタリと止めた。

真の目線はアリババの服に釘付けになっているようだ。


「?どうした」

「あ、あの、その、服の飾りみたいなもの」

「?あぁ、これか。これは、…まぁ、そうだな。確かにお前の言う通り服の飾り物だろうn」

「すみません!その飾りいただけませんかっ!?」

「は?」


アリババの服装は昨日と変わっていないと思っていたが、真は自分の観察力の無さに怒りを覚えた。

なぜなら、アリババの服にチェーンの飾りが付いており、しかもそこに一つのパズルのピースと小さな鍵がついていたのだ。


(こんなに近くにあったなんて…)


「こ、これが欲しいのか?」

「はい!むしろそれがないと私は死んでしまいます!」

「死っ!?」

「お願いです!その飾りをください!!」


アリババは真の勢いに気おされつつ素直にその飾りを服から丁寧に取り外してチェーンごとマコトに渡してくれた。



パステルカラーの青色のパズルのピースと小さい金色の鍵を両手で大切に握りしめた。

すると突然パズルのピースが光出した。


「なっ!?マコト!?」

アリババはその光の眩しさに目を細めつつマコトの名を呼ぶ。

そのとき何故か真は少しも慌てなかった。これは多分元の場所に戻るための何かなのだろうと自然にわかったからだ。


「アリババさん、ありがとうございました」

「マコト?」

「また、いつか会えるといいですね」

「待っ」


アリババがこちらに手をのばしていたがその姿は光でかき消されてしまった。


真はあまりの眩しさに目を瞑る。


そして次に目を開けた時真は扉の前に立っていた。


「戻って、きたんだ」

そう呟いた途端目の前の扉のドアノブが光った。

よく見ると、ドアノブの真下に鍵穴らしき穴があり、そこが光っているのだ。

真は自分の手の中にある小さな鍵をその鍵穴に入れてみた。


すると見事にはまったのでまわしてみる。


小さい音でカチリといって扉の鍵穴は鍵と一緒に消えて行った。


手の中に残ったのはパズルのピースだけで真は少しアリババのことを考えて寂しくなった。


(弟みたいで可愛かったなぁ)


そんなことを考えつつ気を取り直すしかないので真は次の扉をどれにするか選び始めることにした。


もうすでに鍵穴がなくなっている扉がいくつかあり、真は誰だろうな~などと考えつつ鍵穴のついた扉を捜す。


すると、少し進んだところにまだ誰もクリアしていない扉を発見した。


一度大きく深呼吸をして真はドアノブに手を掛ける。

ガチャリと勢いよく扉を開けて真は大きく一歩を踏み出した。

ここまで読んでくれてありがとうございました!

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