ちょっとしたテスト
「おし、全員集まったか」
中丸先生は大きく伸びをしながらそう言って本日何回目かわからない欠伸をする。
先程、真たちはキング専用の学生寮に荷物を移動させて午前中は皆で自己紹介などで仲を深めた。
そして、午後からは授業の説明をすると言われてここに集まっている。
皆、動くから体操服を着用するように言われた。できれば長袖長ズボンがいいと言われたので皆その格好をしている。
真からするとキングのメンバーは基本的に仲良くできそうな人たちばかりだったので安心している。
「お前ら、仲は深まったか?」
ふと中丸先生がそう言いながら顔をニヤニヤさせている。
皆が返答に躊躇していると、一人だけキラキラオーラ全開の新崎が元気よく言う。
「おぉ!すっげー良い奴ばっかだよ」
そ、そんな純粋な言葉…照れるじゃないですか!と真は思いつつ新崎を眩しそうに見つめた。
「そうか、ならいい。これからもその調子で上手くやっていけよ?んじゃ、本題に入ろうか」
中丸先生の表情がそう言った途端にキリッとなった。
無意識のうちに真達も気を引き締める。
「今日からお前らキングは二人の生徒に一人の担任がついて特別授業を受けることになるんだが、その担任を決めるためのちょっとしたテストを行う」
「担任?中丸先生じゃないんですか?」
琴音が首を傾げながらそう尋ねると中丸先生は頷く。
「そうだ。俺は俺が担当する二人の生徒を主に教えていくことになる。ま、勿論、時々は他の生徒にも指導することはあるぞ。ってことで、軽ーいテストをする。とりあえずついて来い」
中丸先生は言いたい事だけ告げてさっさとどこかへ歩き出すので皆はとりあえずついて行くこととなった。
数分後にたどり着いたのは何故か開発学科専用の研究施設前だった。
「開発学科?」
真は思わずそう口にしてから呆けてしまう。
すると中丸先生はクスリと笑いつつその施設に向かって指を指す。
「今からお前らにはこの施設の中に一斉に入ってもらう。それでいろんな試練が待ってるからそれを全部切り抜けて出口まで行くこと。まぁ、ただそれだけだ。あ、地図を配る」
皆に中丸先生はどこに隠し持っていたのか大きな宝の地図みたいな紙を配る。
真達はそれに目を移してから固まる。
そこには施設内の見取り図が書いてあるのだが、問題なのはその地図いっぱいに散りばめられた星マークの数。
「え?中丸先生?試練っていくつぐらいあるんですか?」
真が恐る恐る尋ねると中丸先生は爽やかな笑顔で「100」と言いやがった。
「「100!?」」
皆が頬を引き攣らせている。
それとは対照的にニコニコとし顔の中丸先生は説明を続ける。
「まぁ、皆が皆100の試練を受けるわけじゃないから心配すんな。これはお前らがどの教師が担任になるのかを診断するためのテストだ。一人一人途中で試練が嫌でも変わってくる。お前らは、この施設の各部屋にある試練を乗り越えたらその部屋の中のどこかにある鍵を見つけてその鍵で部屋を閉めろ。閉めたら鍵は自然に消滅する。つまり、一回誰かがその試練を受けてクリアしたらもう他の奴はその試練を受けることはできないってことだ。勿論、失敗してしまう時もある。その時は自然に部屋から追い出されるからまぁ、気を取り直して他の試練にチャレンジしろ。あ、別に悔しかったら同じ試練に何回挑戦しても結構だ。最終的にお前らはどこかの部屋にあるパズルのピースを5個集めたら出口から出られることになっている。でも、試練は何個クリアしても構わない。それで担任が変わってくるだけだ。…ここまでで質問は?」
真はゆっくりと手を挙げる。
「はい、奥橋」
「その、ちょっとしたテストは今日中に終わるんですか?」
「それはお前ら次第だな。過去最長者で確か一週間戻ってこなかった奴もいるぞ」
「一週間!?」
「ま、兎に角、頑張れよ☆」
「軽いっ!語尾に星マークがついているように見えるんですけど!?」
「気のせいだろ」
そう言いながら中丸先生は指をパチンと鳴らす。
「じゃ、準備はいいか?」
真は慌てて周りを見渡す。皆緊張した面持ちの者が多いが覚悟を決めているようだ。
「入口は普通に今、目の前に見えるあの扉だからな。では、これより適性診断テストを開始する。時間は無制限。途中放棄したものは失格としてキング剥奪とする。よーい、始め!!」
そんな掛け声を言われると走り出してしまうのは人間の性かもしれない。
真達は一斉に入口に向かって駆けだしたのだった。
皆が建物内に入るとそこは白い廊下が延々と続いており、その両脇に扉が延々と付いている。
左右どちらを見てもまったくと言っていい程景色は変わらないので真はすぐさま手元の地図に目を移した。
「何の試練があるのかわからないんだ…」
そう、地図には星マークが載っているだけでそれ以外の試練に関しての情報は一切なしだった。
さて、どうしようかと悩んでいると拓斗や光は何の迷いもなく目の前の扉に手を掛ける。
「も、もう行くの!?」
思わず真がそう声を掛けると拓斗は「あぁ?」と不機嫌な顔でこちらを振り返る。
「どこがなんなのかわかんねぇなら行くしかないねぇだろーが。馬鹿か」
「そうですけど!馬鹿はいらない気がするけど!?」
「…せいぜい失格にならないように気をつけろよ。おバカさん」
そう言うが早いか悔しい程の美形野郎は少し意地悪く微笑みを見せた後に扉を開けて中に入ってしまった。
「さんをつければいいわけじゃな…っむかつく…!!」
「まぁまぁ、真落ち着いてください。拓斗はあれでも心配してるんですよ」
優しい天使は生意気野郎のフォローまでしてくれるという天使らしさを真に見せた。
「光に免じて今回は許すことにするよ」
そう言って笑うと光も笑いながらさらっとこんなことを言う。
「それは良かった。真の怒っている顔も嫌いではないですが、笑顔がやっぱり一番可愛いですからね。では、お互い頑張りましょう。また後で」
「うん、後でね!………?なんか、今、すっごい恥ずかしいことを言われた?」
確かめようにも光はとっくに部屋の中に入ってしまったので真はあきらめた。
そんな真の腰にものすごい勢いで抱き着いてきたのは可愛い恋だった。
「真っ!お互い頑張ろうね!怪我には気を付けてね?あと、堕天使野郎と俺様ナルシストにも気を付けてね?」
「う、うん。恋も怪我には気を付けてね。えっと、後半の意味はよくわからないけど気を付けるよ…?」
その返事を聞いて恋は満足げに頷いてから近くの扉に入っていった。
そして真は気が付いた。
いつの間にか自分以外は皆廊下にいないということに。
「えぇ、ちょ、どうしよう…もう、いいか!ここで」
真のすぐ近くにあった扉を勢いよく開いた。
ガチャッ!!!
足を踏み出すと、目の前には果てしなく広がる砂漠が見えた。
「えっ?」
真は一気に身体を焼き尽くすような暑さを感じ始める。
ここは、あのいつもの訓練場と同じような感覚できっと果てしなく一つ一つの部屋が広いのだろう。だからこんな砂漠も用意できるのか。
一人で納得していると後ろで扉が閉まる音がした。
振り返るとそこにはもう扉がなかった。
確か、試練をクリアするか失敗するかしないとこの部屋からは出られないんだっけ…
真はとりあえず辺りを見渡す。すると、すぐ近くにいかにも手作り感満載の看板が砂に突き刺さり立てられている。
近づいて見てみると文字が書かれてあった。
『砂の中に眠りし者が目覚める時、国を守りし勇者となれ』
「なんじゃそりゃ」
真は首を傾げる。
国を守りし勇者って…どこぞのゲームの主人公かよ…
「というか、国とかあるの?」
真は周りを見渡すが黄色い砂漠がただただ向こうまで続いている景色しか見えない。
とりあえず歩いてみるしかないと判断した真はゆっくりと一歩を踏み出す。
少し歩いただけで汗が玉のように噴き出てくる。
一体どれほど歩いただろうか。突然目の前に建物らしきものがうっすらと見えてきた。
なんか、絵本の中でしか見たことのないような宮殿がはっきりと見えてくるのがわかっていた。
その大きな宮殿を中心にたくさんの家々が建ててある、街であった。
「もしかして、あれが国?…部屋の中に国??訳が分かんない…」
そんなことをブツブツ言いながらも真はその国の中に足を踏み入れた。
そこは砂漠に囲まれた国とは思えない程涼しく感じた。
驚くことにちゃんと人がいる。しかも沢山。
ここは市場なのだろう。果物やお肉、お酒らしきものをアラビア系の顔をした人々が売り買いしている。
そして不思議なのはその人々の言葉がちゃんとわかるということだ。
真は自分が今、何をしようとしているのか少しわからなくなりそうだった。
そんなときはるか下の方から小さい子供の声が聞こえてきた。
「おねぇちゃん、旅人さん?」
「へ?」
そこには目をキラキラと輝かせた可愛らしい黒髪おさげの女の子が真を見上げていた。
「旅人さんだよね?だって、お洋服が変だもん!」
「へ、変…か」
確かに今、真は長袖長ズボンの体操服姿だったので反論はできないなと思った。
「ねぇねぇ、おねぇちゃん!きっと宮殿に行った方がいいと思うよ!」
「宮殿?あ、あの大きい建物のこと?」
「うん!きっと王様が待ってるから!!」
「おうさま…??」
「うん!この国の王様、アリババ王!!旅人がいたら連れて来いって言われてるの!ほら、行こう!!」
状況を理解できていない真は少女に手を引かれるままついて行くのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございました!!




