実技テスト③
「真、今だ!!」
「了解っ」
真は地面に手をつけてできるだけ大きい竜巻を作るために集中する。
今、拓斗と真は悪魔と戦っていた。
悪魔は全長十メートル以上の頭が三つもついている巨大な犬のような姿をしている銅像。
先程からこの悪魔の攻撃を何とか避けながらやっと拓斗からの合図がきた。
拓斗は今、悪魔のすぐ近くにおり、何回かの攻防の末やっと悪魔を炎の輪で取り囲むことに成功したのだ。
そして一瞬怯んだ悪魔を逃がさないために真が竜巻を起こして炎と風を混ぜ合わせるという作戦だった。
「いっけぇぇぇ!!」
真はそう叫びながら悪魔の真下から特大の竜巻を起こす。
ドガァァァァン
ものすごい轟音の中に悪魔は飲み込まれて周りも炎の竜巻によってガタガタと揺れる。
拓斗は悪魔からすぐに離れていたので巻き込まれずに済んだが正直、真の竜巻の威力に驚いていた。
(あいつ、こんなに強い威力で風を操れるのか…)
竜巻が収まった後、洞窟の真上からパラパラと削られた岩が落ちてくる。
竜巻が起こった場所は大きなクレーターになっており、そこには悪魔の姿は何も残っていなかった。
どうやら消滅したらしい。
「終わった…」
そう言って真はその場に倒れ込んだ。
真は大の字になっていたので自然と洞窟の真上が視界に入る。
しかし、真っ暗なので何も見えなかった。
そんな視界の中に小さい炎と見覚えのある顔が入ってきた。しかも呆れ顔で。
「お前、気ぃ抜き過ぎ」
そう言って拓斗は思いっきり見下した顔で頬に「アホだろコイツ」と書いていた。
「しょうがないじゃん!突然あんな映画でありそうな展開になるとは思ってもみなかったんだよ」
「だからと言って突然倒れるな、まぎらわしいんだよ!」
「何で?疲れたんだからいいじゃんか」
「…」
何故か拓斗はその言葉に反論せずにふいと視線をそらした。
(ん?何だその反応??)
真は拓斗の行動の意味がわからずに首を傾げたがあまり気にしないことにした。
「ところで、今って大体何時ぐらいなんだろうね?」
「昼の三時ってとこだろう」
「え…?ってことは恋達と別れたのが丁度正午だったから、さっきの悪魔と三時間くらい攻防してたってこと!?」
「だろうな」
平然とそう答える拓斗だが真は大いに驚いた。
真の体内時計の感覚では一時間程に感じていたのだ。
そのことを拓斗に言うと小馬鹿にしたように「一生懸命だったんだな」と言われた。
非常にむかついたのでこのイケメンを一発殴ってもいいだろうか。
真は本気でそう考えた。
そこでふと気づく。
「悪魔と戦っている間、ずっと拓斗は灯りをつけてくれてたの?」
今、この真っ暗な洞窟の中で先ほどまで戦っていた悪魔の全体が自然に見え、他の場所もなんなく見えていたことに気が付いたので真はそう尋ねる。
「当たり前だろ。灯りがないとお前が何にも見えないから仕方なくt」
「ずっと灯りを保ったまま戦ってたんだ…すごいなぁ」
本心だったので真は笑顔で拓斗にそう言った。
すると、拓斗は少しだけ目をまん丸くした。でもほんの一瞬だったので真は気づかなかった。
「…まぁ、俺も見えないと困るしな」
「あと、最初の方でも悪魔を私から遠ざけてくれたでしょ?…ありがとう」
「……おぉ」
そう言って拓斗は少し照れくさかったのかふいと視線をそらしてからそう言った。
そんなところを見ると真は少しこのむかつく同級生を可愛いと思ってしまった。
そんなことを思ってしまった自分に悔しさを覚えるが同時に嬉しくもあった。
(なんか、これって友達同士の青春って感じだなぁ)
などと一人で思ってクスリと笑う。
「何笑ってんだよ」
そんな真の姿を見て拓斗は少し不機嫌な声でそう言ってきた。
「別に~?」
真は少しおどけた声でそう返事をしてから笑った。
そんな真を見て何を思ったのか拓斗はしゃがんで顔を近づけて来た。
突然の行動に真はキョトンとしてしまう。
今、真は仰向けで寝転がっており拓斗はそんな真を押さえつけてまるでキスをするかのように顔を近づけている。
「えっと…拓斗さん?どうしました?」
多分今、自分は顔を真っ赤にしているだろうなと真は思ったが平然を装ってそう尋ねる。
(男性とこんな近距離で接したことないから!心臓止まるから!!)
そんな内心パニック状態の真の瞳には暗い藍色の瞳だけが映っている状態だった。
「…」
拓斗は何も言わずに真をじっと見つめており、ただでさえ近い距離をさらに縮めてきた。
思わず真はギュッと目を瞑る。
すると、ぺチリと小さい音と共におでこに痛みと言えるほどのものじゃない軽いデコピンをくらった。
真は目を開いてパチクリと瞬かせる。
すると、そこには悪い笑みを浮かべた拓斗がいた。
「バーカ」
たった一言だったが、真はすごくカチンときたので勢いよく起き上ってから言い返す。
「そ、そんなに驚いてなかったし?ただ、なんか頭突きでもされるのかな~とか思ったから衝撃に備えただけだから!!」
「へぇ、それにしては顔が真っ赤に見えるが?」
「これは、怒りのせいですー!!!自意識過剰にも程があるんじゃないですかー??」
そんな言い合いをしていると三時間前に聞いた音が再び聞こえてきた。
ガリッ
「「は?」」
真と拓斗は二人同時に音のした方を向いた。
すると、そこには大きな鎧の騎士の銅像が立っていたのだ。
先程倒した悪魔と同じくらいの大きさで身体全体を鎧で覆い、左手には盾、右手には剣を握っている。
「た、拓斗さん…これは、悪魔ですか?」
「…だろうな」
「嘘ォォ!?」
そんなことを言っている内に悪魔がこちらに向かって剣を振りかざしてきた。
「チッ…行くぞ」
「はーい」
拓斗は面倒くさいと言った感じで真はもう嫌だという感じでそう言って動き出した。
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「こ、…これでっ…もう全部倒した…よね…?」
真は肩でぜいぜい息をしながら拓斗にそう問いかける。
「まぁ、この中にあった銅像は全部消えたからおそらく…な」
拓斗も少し呼吸を乱しながらそう答える。
真と拓斗は鎧の騎士の悪魔を倒したあと、銅像が一体ずつご丁寧に攻撃してくるのでそれを片っ端から片付けて行ったのだ。
そして今に至る。
どれだけ長い時間動き続けたのか真にはわからなかったが、兎に角きつかった。
もう、今、気絶していいと言われればできるくらいには余裕で疲れている。
「今、……何時かな?」
「おそらく…もうすぐテスト終了の時間になる。出るか、この中から」
「喜んで!!!」
そう言った後、二人は足早に洞窟から抜け出して最初の集合場所まで黙々と歩き、そして一時間後、ようやく集合場所にたどり着いたのだった。
そこにはもうすでにほとんどの生徒が戻って来ており、雑談をしたり傷の手当をしたりと騒がしかった。
真は辿りついた瞬間その場に倒れ込んだ。
すると風のような速さで自分のそばに駆けつけてきた人物が一人。
「真っ!!大丈夫!?ボロボロじゃない!」
そう言ってすぐさま真に治療を施してくれているのは涙目の恋だった。
「あはは、本当に疲れたよ…」
「こんなにいっぱい怪我して」
「かすり傷ばっかりだけどねー、あ、私よりも拓斗治してあげてよ」
「俺はいい」
「またまた強がっちゃって~」
真がからかうように言うと拓斗は大きくため息を一つついてどこかへスタスタと行ってしまった。
「え、ちょ、傷」
「いいよ、本人が大丈夫って言ってるし、男の子はかっこつけたいんだよ」
「恋ちゃん、何故そんな遠い目をして…?」
「なんでもない。さ、じっとしててね」
「はーい」
恋のおかげであちこちにあったかすり傷は全部見事に治った。さすが恋ちゃん。
それから少しして中丸先生が姿を現した。
一体今までどこにいたのかは不明だが、どうやら皆の評価をしていたらしい。
そして、すぐに順位発表となった。
「今回の実技テストでもっとも多くポイントを稼いだペアは、奥橋真&海藤拓斗の二人だ」
「え?まじで?」
真はそんな言葉を漏らす。
嬉しい反面ポイントはいらなかったので少し残念な気持ちも残った。
「この二人にはポイント1000000pが入る。よく頑張ったな、おめでとう。はい、拍手」
生徒全員から注目されて真は恥ずかしかった。
「惜しくも二位だったのが、赤姫恋&若宮光の二人だ。この二人には10000p入る。こちらもよく頑張った。拍手」
「恋、すごいじゃん!」
「私じゃなくて光がすごいんだよ」
そんなことをいいながらも恋は恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。
ちなみに三位は新崎霧&宮崎愛奈ペアで四位は白木琴音&足影麓ペアだった。
「足影麓って…あ、思い出した」
真がこの学園に来て最初に授業で試合をしたあの綺麗な顔の男子生徒だった。
(確か絶対にキングになるとか言ってたような…すごいな、有言実行まであと少しだね!)
真は内心で足影に温かなエールを送る。
(ここで大体のキング候補は確定したな…)
中丸先生がそんなことを考えていることは誰も知らない。
こうして実技テストは幕を閉じたのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます!!




