実技テスト②
「これで悪魔何体倒したっけ?」
真は少し疲れを感じる身体を伸ばしながらそう問いかける。
「多分、百…いや、二百はいってると思う」
そう恋が小さな声で答えてくれた。可愛らしい声も今は少し疲れを含んでいるのがありありとわかった。
今、真は実技テストの真っ最中だ。
テストが始まってやっと二時間が経過したのだが、訓練場内だというのに悪魔の数が尋常ではないくらいに多いということが今までで嫌と言う程理解した。
一体倒したと思ったら違う方向からまた一体が襲い掛かってきて…の無限ループ。
これがあと十時間以上続くと考えると
(どうしよう、涙が出そうだ)
と真は思って心の内で泣いた。
女子二人がこんなに疲れているのに対し男子二人はテストが始まった時となんら変わらない表情で汗もかいていない。
「これ以上強い奴はもういないのか」
拓斗はつまらないという言葉を顔に張り付けながらそう愚痴る。
「いや、そんなことはないでしょう。一番強いレベルの悪魔はもっと奥にいると思いますよ」
そう言いながら光はニコリと微笑んでいる。
強い奴がいないいないと嘆いているが今まで倒した悪魔は結構強いレベルの悪魔たちばかりだった。
真は風を操って拓斗と光のサポートに徹底していたので二人よりは体力を消耗していないのだが、正直二時間でかなり疲れていた。
昔は悪魔と遭遇しても一日でこんなにも多く数を倒すことなど一度もなかったので無理もない。
真が少し疲れているのに対して拓斗と光は真よりも倍以上の体力を消耗しているはずなのにピンピンしている。むしろ退屈そうにしているというこの現状。
(何、この二人の異常な体力!)
真は激しくそう突っ込みたかった。
ほぼ森の中と言っていい訓練場内の奥深くに真達は進んでいく。
そしてある看板が目に入ってきた。
『この先、危険レベル10以上の悪魔しかいません。ご注意ください』
「危険レベル10以上ってどのくらい?」
真は独り言のように呟く。
「今まで出てきた悪魔のレベルは一番強いものでレベル5くらいでした。ですから、今まで倒した悪魔の倍の強さの奴らしかいないということですね」
天使は微笑みながらその顔とはまったく似合わない説明をしてくれた。
「今までの倍の強さ…」
そう呟いて恋は真の服の裾をくいっと引っ張ってきた。きっと不安なのだろう。
そんな恋の行動を見て真はこの子は必ず守ろうと思った。
が、光が看板を見直して「おや?」と言って三人にこう言った。
「どうやらこの先はペアだけで行動しなければいけないみたいですよ」
「へっ?」
「え~、何で?」
そんな真と恋の反応に光は看板の一部分に指を指した。
『※この先は他の二人組とは共に行動してはいけません。万が一共に行動していることが発覚した場合、失格となります。』
「うぅ、このルール、ひどい」
恋はそう言いながら真にギュッと抱き着いてきたので真は恋の頭を撫でてやる。
恋を守りたいのは山々だが、失格にされては共倒れになってしまうのでここはグッと我慢することを決心した。
「恋、お互いに頑張ろう。光がいればきっと大丈夫だよ。でも、十分気を付けてね」
「……っ…わかった。頑張る。真も気を付けてね!!」
そう言って抱きしめあった後、真達は恋と光ペアと別れて別々の道へと進んで行った。
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恋達と別れてはや数分後に一つの洞窟が見えてきた。
「ここ、訓練場内だよね?」
「のはずだがな、まさか洞窟があるとは俺も思ってなかった」
そう言って拓斗も苦笑いをしている。
真はあたり一面を見渡してみるが、どうやらこの洞窟の中に入る以外に選択肢はないらしい。
なぜなら、この洞窟以外の道がもうないのだ。
おそらく中に入って進むしか先へ行く方法はないように仕組まれているのだろう。
「いくぞ」
「うん」
拓斗と真は洞窟の中に足を踏み入れた。
中は真っ暗でなにも見えない。時折、水が滴る音が響いて聞こえてくるだけだ。
「どうする?」
「進むしかないだろ」
拓斗は当たり前のようにそう言ってから先にズカズカと歩いて行く。なので真は慌てて拓斗の後ろについて行った。
その時、ポワリと小さな光が真の目の前に現れた。
「ひ、人魂!!」
「馬鹿か。ただのランプだ」
そう言って拓斗が呆れた目で真を見ている顔がその小さな炎で照らしだされていた。
どうやら拓斗がオズを使ってくれたらしい。それはありがたいのだが…
「炎をつけるならつけるぞって一声かけてくれればいいじゃんか」
と真は小さな声で愚痴った。
「つけるぞー」
「遅いわ!!」
少し道なりに進んでいくと大きな空間の場所にたどり着いた。
小さな炎では全体が見えなかっので拓斗は炎の威力を大きくした。
すると目に入ってきた光景は一面の大きな銅像の数々だった。
翼の生えた天使のような銅像や反対に天使に似た翼だが悪魔のような銅像、顔が三つある犬の銅像などほかにも様々な銅像が無造作に転がっていた。
しかも全部全長十メートル以上の大きさの銅像ばかりで動かそうにもオズを使わなければいけないくらいだ。
「なんか、すごい」
「全部銅像か。しかし、訓練場内によくもまぁこんなにデカい物を…」
「というか、ここで行き止まりみたいだよ。どうする?」
「そうだな、一旦引き返すか」
真は黙って頷く。
二人は銅像達に背を向けて来た道を戻り始めるつもりだった。
ガリッ
「?」
真は何かの音に反応して後ろを向いた。
そして、固まる。
「た、拓斗さん、拓斗さん」
こころなしか声が震えてしまったのは許してほしい。
「あ?なんだ…よ…」
拓斗は立ち止まり真の方を振り向いて言葉を失くす。
そこには、転がっていたはずの銅像の一つである頭が三つの犬がこちらをジッと見ていたのだ。
勿論、しっかりと地に足をつけて。
まるで生きているかのように身体を上下に揺らして呼吸をしている。
犬特有のハッハッハッという息遣いが洞窟の中に響き渡っていた。
しかも涎付きでご丁寧に三つの顔一つ一つの表情も違っている。
一番右端の顔は瞳を爛々と輝かせてこちらをみつめている。まるで新しいオモチャを見つけた子犬のように見える。
真ん中の顔はこちらをギロリと睨み付けておりまるで餌を見るかのような瞳を向けている。
一番左端の顔はとても眠たそうに目を半開きにしておりこちらには興味なしという感じが見て取れた。
兎に角、こちらに襲い掛かってくることはありありと想像できる。
「た、拓斗!う、動いた!!銅像が動いたよ!?」
「うるさい、んなこと見りゃわかる!あれが悪魔だったのか…まさかとは思っていたが」
「あれ、悪魔なの!?実はハイテクな動く銅像ではなくて!?」
「聞いたこともないし、いらんだろ、動く銅像」
「まぁ、確かに」
そんな呑気な会話をしていると痺れを切らせたのか真ん中の顔が吠えた。
真のイメージでは『わおーん』かな?などと考えていたのだが、違った。
ウガァァァァァッ
(こ、怖いじゃないですかァァァァ!!)
真はビクリと身体を震わせてからすぐに目の前の悪魔に身構えた。
拓斗も同じように銅像を警戒する。
「真、気を抜くなよ」
「抜きたくても抜けないでしょ…!!」
二人がそんな言葉を交わした直後に悪魔はものすごい勢いでこちらに突進してきた。
予想以上に走ってくるスピードが速い。
そう思っている内に銅像犬は真の目の前に来ていた。
「真!!」
「っ!!」
間一髪で真はバリアを貼るのが間に合った。のは良かったのだが、咄嗟に作ったのであまり分厚くは作れなかった。
すぐさまバリアにヒビが入りまるでガラスのように粉々に砕けてしまう。数メートル真は吹っ飛ばされた。
だが、その間時間は稼げたので悪魔の攻撃を避けることはできた。
しかし、すぐに悪魔は真に再び噛みつこうとしている。
真は風を使って何か攻撃をと思った矢先目の前にいた悪魔が一瞬で視界から消えた。
そしてすぐさま向こうの方から何かが壁に叩きつけられる音が鳴り響く。
見ると、悪魔に一本の大きな炎でできた槍が突き刺さっていた。
「真、無事か!」
「だ、大丈夫です!」
思わず敬語になってしまったがどうやら拓斗が助けてくれたらしい。
「真、少し作戦立てるぞ」
「え?今?」
「当たり前だろーが。いいか、俺が合図をしたら竜巻を起こせ」
「わ、わかった」
拓斗は真の瞳をしっかりと見て頷いた。
だから真も拓斗の瞳をしっかりと見つめ返して頷く。
拓斗はその後、悪魔に向かっていく。
その後すぐに真もそれに続いて走り出すのだった。
悪魔の危険レベル10以上は教師が二人がかりで普通に倒せる強さ。
つまり、教師一人では少し手こずる程の強さです。
ここまで読んでくれてありがとうございました!!




