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オズ  作者: 紗パカルギ
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お勉強

学園祭が終わってから一か月が過ぎた。

もう十一月になってしまったのだが、十一月といえば…真の大嫌いな期末テストの時期である。


真は勉強が得意というわけではないが、全然ダメというわけでもない。

本当に普通、ど真ん中の順位くらいの成績をいつもとっているのだが、今回のテストは結構危ないかもしれないと密かに思っていた。


十月のオズ戦にあの『キング』の一人である東堂先輩の推薦で出たことで真は一躍有名になり、色々と忙しかったのだ。まぁ、ただの言い訳に過ぎないが。



だが、本当にいろんな人々が学園祭の数日後、真を訪ねてきた。

ほとんどが部活動の勧誘だったのだが、その中に「一戦願いたい!!」という物好きも紛れていて大変だったのなんの。


だが、皆期末テスト勉強という壁が立ちはだかったので今はそれに集中しているようだ。おかげで真の負担は十一月になってかなり軽くなった。



そして今、真は勉強に追われているのだが、どうしても数学がわからないという危機的状況に陥っていた。

先生に質問しに行こうと思っても、他の生徒の行列で一向に順番はまわってきそうにない。


しょうがないので恋に教えてもらおうと思った。恋は快くそれを引き受けてくれたが、どうにも先約がたくさんいるらしいので身を引いた。


恋は頭がものすごく良い。それはクラスでも知られていることだった。


だから、毎回テストでは学年順位は必ず一桁で二桁になったことがないらしい。



勿論、あの、美男美女五人組み(新崎たちのこと)も十位以内を毎回キープしている。


(いけない、他の人のことばっかり考えて勉強に集中できない!)


只今、夕方八時過ぎ、真は自室で机と向き合っている状態だった。

だが、先ほどから手が動いていない、なぜなら数学の問題がまったく解けないからだ。


「証明せよって言われてもさぁ…」

真はそんな独り言を呟いて大きなため息を吐く。


「………場所を移動してみるか」

自分で自分に提案するようにそう言って真は教材を手に寮から出た。

外はもう真っ暗だったが、歩いている生徒はポツポツとおり、怖くはなかった。


(場所を変えてみれば気分転換にもなるし、いいかもしれないとは思ったけども…)


行き先を決めていなかった真は足を止めて考える。

勉強に向いている学校の中のベストな場所と言えば…


「あ」

真はすぐに思いついたので足早にその場所へ向かった。




カランと可愛いドアリンが鳴り、中に入る。

周りには溢れんばかりの本が棚に敷き詰められている。


真は一回深呼吸をしてこの場所の空気を味わう。

なんか落ち着くこの場所を真は待っていた、そう思えた。


(やっぱり図書室はいい場所だ)

真は早速、隅っこの席に座って教材を開く。


その時ふと周りを見渡すとやはり真と同じく勉強をしている生徒が何人か見られた。


(やっぱり勉強するなら図書室ですよね!!)


真は周りの人たちに心の中でそう言ってから再び教材に目を移す。


そして勢いよく解き始めよう!とは思ったもののやはりわからないものはわからない。

ピタリと手が止まってしまう。


それから五分間程問題を凝視し続けたがなんのひらめきもなかった。

なので真は他の問題を解くことにしようと思い、次のページをめくろうとした時に誰かの手がページをそっと押さえつけた。


誰だろうと手を辿っていく、そして真は固まった。


「奥橋さん、証明問題がわからないんですか?」

「…」


(どうしよう、今、目の前に天使が見えるんだけど、私そんなに疲れているのかな?)


「奥橋さん?」

「は、はい!!」


やはり現実のようだと気付いて真は目の前の若宮君を凝視してしまう。


「大丈夫ですか?」

てんs…若宮君が本当に心配そうな瞳で真を見つめてくるので真は慌てて目を逸らす。


「大丈夫、ではないんですけども、」

「!!体調が」

「いや、そうじゃなくて、勉強の方です!はい」

「…そうですか。なら良かった」

「え?」

「いや、この良かったは体調が悪いわけではなくて良かったの方の意味ですよ?」

「あ、ですよね」


何故だか若宮君の前では真は敬語になってしまう自分自身に驚いていた。


「話は戻りますが、奥橋さん、その数学の問題に随分と手が止まっているようでしたね」

「うっ…いや、まぁ、そうですが」

「僕で良かったら教えましょうか?」

「……ハイ?」

「僕、今回のテスト勉強は大体終わりました。なので良かったら数学を教えましょうか?」

「いいの?」

「勿論」


(やはり天使だ!!天使が私に微笑んでいる…!!)


真は喜んで若宮君に教えてもらうことにした。





「そこは公式を使います」

「公式…?あ!これ?」

「そうそう、正解」


若宮君の教え方はとても上手で真は数学のわからないところを片っ端から聞いて行った。

そして約一時間程ずっと若宮君は真につきっきりでわからないところの説明をしてくれたのだ。


「もう、九時になりますね、そろそろ寮に帰らないと危ないでしょう。奥橋さんこの続きはまた明日教えますよ」

「え?いや、そんな悪いよ!!」

「いいえ、ここまで教えたので最後まで言いたいんです。だから、お願いします」

「え、っと…じゃあ、明日も是非よろしくお願いしていいですか?」

「はい、喜んで。じゃあ、明日の放課後すぐにまたここで教えるということでいいですか?」

「うん、是非!!」





こうして明日も天使に勉強を教えてもらえることになった事実がにわかに信じられないまま真は寮へと戻るのだった。



寮に戻ると恋が勉強を教えようかと言ってくれた。だが、真は先ほどのことを恋に話して大丈夫だと伝えると、恋は厳しい顔をして何か呟いたがよく聞こえなかった。



「真、くれぐれも気を付けてね?」

「うん、わかった…??」


一体何に?とは聞けなかった。




翌日の放課後。

真は教材を持って図書室に向かった。

中に入ると一足先に若宮君は来ており、静かに一冊の本を読んでいたのだが、これがまた絵になるのなんのって。


真が若宮君に見惚れているとこちらの視線に気づいた若宮君がパタンと本を閉じてこちらを向く。


「こんにちは、奥橋さん」

「ど、どうも」

「じゃあ、早速始めましょうか」


そこから約二時間ぶっ続けで若宮君は真のわからないところを徹底的に教えてくれた。

おかげで今回のテストの数学の範囲はもう安心できる程のレベルにまで上達していた。


そこからは一通り終わったので休憩もかねて雑談タイムになったのだが、その時に若宮君が「オズ戦」に出た理由を尋ねてきたので真は最初から全部(オズ戦の最後まで)を若宮君に話して説明した。


途中からほぼ愚痴のようになってしまったが、最後まで若宮君は聞いてくれた。


「もう、かいど…拓斗…は何がしたいのかがわからないんd」

「奥橋さん、前から拓斗って呼んでましたっけ?」

「あ~これは、」


真は海藤との賭けに負けてこのことを『お願い』として言われたと説明すると若宮君は少し黙ったあとにこう言った。



「では、僕も賭けをしていいですか?」

「へ?い、いきなりだね…まぁ、いいけども」

「今回のテストで僕が学年一位を取ったら、奥橋さんのことを『真』と呼んでもいいですか?」

「…えっと、別に、真って呼んでくれて構わないよ?」

「え、じゃあ、今から変えてもいいということですか?」

「どうぞ~」


すると若宮君は少しハニカミながら「わかりました」と言う。


(あぁ、やっぱり君は天使ですね…)


「ですが、僕も何かしたいですね…、では、ご褒美として僕が一位になったら『光』呼びになってもらいます。いいですか?」

「……そ、それでご褒美になるなら」

「なりますよ、あ、ちなみに、赤姫さんにも『光』呼びになってもらいます」

「連帯責任みたいになってる!?」

「あはは!もう、決まったことなので変更は無しですよ?」

「え?でも、恋は」

「大丈夫ですよ。きっと承諾してくれます」


なんの確信をもってそう言うのかはわからなかったが、若宮君に教えてもらった身なのでここは若宮君の言う通りにすることにした。


だが、どうして恋まで連帯責任のようになってしまったのかが本当に不明であった。

勉強が終わって寮に帰るとなった時、


「では、結果を楽しみにしていてくださいね」

そう言って若宮君は真のおでこに軽くキスをしてから図書室を出て行った。


あまりの自然な動作だったので真は少しの間若宮君が何をしたのか理解できずに固まっていたのだが、わかるとすぐに顔が熱くなっていると感じる真だった。


(どうしてこう私の周りには私の寿命を縮めるような人が多いのだろう…)

そんなことを真は一人思って頭を抱えるのだった。


ここまで読んでくれてありがとうございました!!

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