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オズ  作者: 紗パカルギ
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演劇見ましょう

忘れていたわけではないんです!この人を!!

学園祭一日目は東堂先輩のおかげでとても濃い一日となった。


オズ戦に出ろと言われ嫌々ながらも出てみれば、相手は何故か魔人で殺されかけるという始末。

東堂先輩が助けに来てくれたおかげで命は助かったものの元はと言えば東堂先輩が私をオズ戦に出さなければあんな危ない目に遭わずに済んだのだ。

その出来事の後に東堂先輩が「お前って狙われやすいから気を付けとけ」と言ってから去ってしまった。

まぁ、助けてもらったので何も文句は言えないのだが、これだけは言わせてほしい。


「あんたが出ろっていったからじゃん!!」



真はそう言いながら飲みかけの水の入ったコップをテーブルに叩きつけた。

「真、可哀そう…」

「あ、あのね、真、勇に、東堂先輩も悪気はないんだと思うの!」

「まぁ、琴音が言うならそうなんだろうけども…」

上から恋、琴音、真という順であるのだが、今、三人は学園祭二日目を満喫していた。

時刻は丁度お昼時なので三人は沢山あるお店の中の一つ『夢喫茶店』に来ている。

ここで、愛奈が可愛いメイドになっていると琴音から聞いたのでやってきたのだが愛奈は見るからに忙しそうだった。


男性は皆、愛奈を見て鼻の下を伸ばしてしまっている。

それもそのはず、女である真でさえドキリとしてしまう程の可愛さを持っている愛奈なのだ。

メイド服を着ようものならもう、どんな男性でもイチコロであることは確信をもって言えた。



「そして、あのツンデレちゃんなんだもんね…そりゃ、ひっぱりダコだよ」

真はうんうんと頷きながら一人納得していると、恋が突然ある一言を口にした。


「真…今日のオズ戦、頑張ってね!!」

真はピシリと固まる。そしてグハッと(見えない)血を吐いてテーブルに突っ伏した。

そんな真を見て琴音は慌てて「恋ちゃん、それは禁句!」と小声で恋に注意しているが恋は「?」とわかっていないのは明白だった。


「もう、辞退とかしちゃダメなのかなぁ…」

「う~ん、できないこともないけど…辞退すると、他の負けた選手とかからのブーイングがすごいかもしれないからおすすめしないなぁ」

「ですよね~」


真は可愛らしくもない呻き声を上げながら顔を両手で覆って泣きまねをする。


すると、真の声とは打って変わって可愛らしい声が頭上から聞こえてきた。


「お客様、泣いてないでご注文は何になさいますか??」

真はそう聞かれたので「特盛サーロインステーキを一つ」と泣きまねしたまま呟いた。

すると、「そんなメニューございませんわ」と言う声と共に頭にトレイがゴツリと当たった。


真がしぶしぶ顔をあげるとなんとそこにはメイド服の愛奈が立ってこちらを睨み付けているではないか。

まぁ、睨み付けられていても全然怖くもなく、むしろただ、可愛いねとしか言えない。


いつものツインテールには片方ずつに黒いリボンが付いていて真は思わずリボンをクイクイと引っ張ってから「可愛さがこれだけでも倍増するとは、恐ろしい子っ」と言ってやると愛奈は顔を一瞬で真っ赤にしてから目を逸らした。


「お、お友達にか、かかか可愛いとか言われても全然嬉しくありませんわっ!で、でも、まぁ、褒められたからにはお礼を言うのは礼儀ですので?あ、ありがとうございますわ」


「「「可愛いね~」」」

今度は恋と琴音も一緒に真の言葉に合わせて愛奈にそう言葉を掛けると愛奈はよりいっそう顔を赤くしてから「他のお客様の注文を先に取りますわ!!」と言って駆けて行ってしまった。


何あの可愛すぎる生き物。なんで私の周りには可愛い子が集まってくるんだろう、モテキかな??



「何ニヤついてんの?」

「いや、ただ、可愛いものは目の保養になるなって」

「ふーん、あ!それって愛奈のことか?」

「そうそう。…ってはい?」


真は自分の隣に素早く顔を向けるとそこには笑顔の新崎君が何故か座っていた。


「新崎君…いつの間に?」

「今さっき!あのさ~俺、行きたいところあるんだけど、真達も誘ってみようかな~って思ってさ!!」


(まったく気づかなかった。この人は神出鬼没だなぁ。ってか眩しい、眩しいからこっちをみないで!)

真は新崎君から目を逸らして顔の火照りを覚まそうと手で顔をパタパタ扇いだ。

「どこに行くつもりなの?」

真が固まっていたので琴音が新崎君に先を促す。


「演劇っ!!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「どうか、この私と一曲お願いできますか?」

お姫様に甘い声でそう囁く王子様。誰でも夢に見たことがある素敵なおとぎ話。


それが今、目の前で現実として見えている!!


今回の演劇部の出し物は『シンデレラ』。

今、物語はシンデレラが魔法使いにもらったドレスやガラスの靴を身に纏いお城の舞踏会に参加し、王子様にダンスを申し込まれるという場面の真っ最中だった。


シンデレラ役の女の子はとても美人さん。そして王子役は真も知っている若宮光が演じていた。


(若宮君はこの練習をしていたんだ…)

真は一人で納得する。以前、若宮君が全然実技の授業に来ていなかったので疑問に思っていると、新崎君が「光は学園祭の練習してるんだ!」と言っていたのだ。


一体何の練習なのかとは思っていたが、まさか演劇の練習だとは思いもしなかった。


真は周りを見渡す。ほぼ満席状態の会場内はほとんどが女性客だった。

どうやら「演劇部期待の一年生」として若宮君は有名だったらしい。もう、若宮君を必死で皆見つめて感嘆のため息を漏らしている人が大勢いた。


「待ってくれ!どうか、お名前だけでも!!」

そう言って若宮君はシンデレラに向かって手を伸ばす。

もう、ただの王子様にしか見えなかった。

金髪碧眼で甘いマスクと声をもっている若宮君はそう本当にただの王子様だった。


しかも、若宮君の演技力が半端ないのだ。素人の真でさえ息をのんで物語に見入ってしまった程である。



「光…演技上手いなぁ」

「…新崎君は若宮君を見るために演劇に?」

「そうだよ。あ、でももう一つ理由はある。そろそろ行ってくるよ!」

「?どこに?」

「俺、結構大事な役の方々のサポートしなきゃいけないんだ」


そう言うが早いか新崎君はどこかへ行ってしまった。

(サポート?)


残された真達は新崎君の言葉の意味がよくわからないまま最後まで見ることしかできなかったのだが、新崎の役割がなんなのか最後のカーテンコールでわかることとなった。

演劇が終わった後のカーテンコールで役者、照明、小道具などの人々が次々と現れる。そんな中で何故か新崎君が舞台上に現れた。


『次は動物達に協力を頼んでくれた新崎霧君!』

というアナウンスで真達は理解した。そういえば新崎霧は動物と話せるオズであったのだ。


「道理でネズミとかが本物みたいに見えたんだ…」

「まさか本物だったとはね…」

「すごく、可愛かった(ネズミが)」


上から琴音、真、恋と皆新崎君に拍手をおくったのだった。




終わってから特別に新崎君の関係者ということで若宮君に会うことになり、真達は若宮君がいる衣装室に向かった。


「光ー!!お疲れー!!!」

新崎君が勢いよくドアを開けたせいで中にいた他の人々までもがこちらに注目している。

そんなのお構いなしに新崎君は若宮君に手を振って入っていく。


なので、真達も慌てて新崎君の後ろについてそそくさと入った。


「霧、に…琴音と奥橋さん?」

まぁ、驚いた顔をされるのも無理はない。

だって若宮君と改めて会ったのは真が元いた高校の時以来なのだ。

(やっぱり私は場違いだったよなぁ…)

と真が気まずくなっていると若宮君は笑顔で「久しぶりですね」と言ってくれた。


て、天使…天使がここにいるんですけど!?


「今日、たまたま琴音達と会ったから誘ったんだ」

すごく鼻高々といったかんじで新崎君はそう言うがそんなに自慢げになることなのか?


「そうだったんですか。わざわざ見に来てくれてありがとうございました」

「光君相変わらずかっこよかったよ!」

「本当?ありがとう」

琴音と若宮君が会話している姿を見るとなんかここは楽園なんじゃないかと錯覚してしまいそうである。


(女神と天使が会話をしている…)


「本当にもうおとぎ話の中から出てきた王子様みたいだったよ!ね?真」

「え!?う、うん!!もう、すごい迫力だった!!」

「そんなに言われると照れますね…」


そう言ってはにかむ若宮君、それを見てうっとりする他の人々。

うん、やはりこの人は天使だ。


「ところで、奥橋さんの後ろの人は…?」

「へ?」

真は後ろを見てから「あ」と呟く。

そこには恋がまるで真の陰に隠れて一体化しているようにピッタリとくっついていた。


「この子は赤姫恋って言って真のルームメイトの子でとても優しいんだよ」

琴音はそう恋のことを紹介しながら恋を真の後ろから引っ張りだして若宮君の前に立たせた。


「…赤姫、恋です。真と琴音と霧の友達です」

「初めまして、赤姫さん。僕は若宮光です。僕も奥橋さんと琴音と霧の友達です」

「ぅ、はい。そうですか」

「はい、そうです」


恋は何を言っていいのかわからず顔を真っ赤にして口をパクパクしているがとりあえず自己紹介はできたのでよかったなと真と琴音は微笑ましく思っていた。


ただ、若宮君はそんな恋を見て少しクスリと笑いながら「可愛いですね」と言った。


すると、恋は「っ!!?」と言葉になっていないが何かを言ったあとすぐに真の後ろに隠れた。

すると若宮君はさらにクスクスと笑ってから真を見る。


突然見つめられると心臓に悪いのですが!?


「奥橋さんも可愛いですよ?」

「はい!?」

あぁ、どうしよう顔の火照りが再発している気がする。


恋と真の反応を見て若宮君は爽やかな笑顔ながらも楽しんでいたのだが、そのことは琴音と霧にしかわかっていなかった。



若宮君が「可愛い」とか言うと大抵の女性は「まぁ、嬉しい」や「ありがとう」などと返し、詰め寄ってくるのがほとんどだったので恋と真の反応は初々しくて嬉しかったというのが彼の本音です。


ここまで読んでくれてありがとうございました!!

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