丹越君
少し血が出る場面などがあるので苦手な方は引き返してください。
私は今、オズ戦の真っ最中なのだがどうしてだろう?すごく嫌な予感がする。
目の前にいる丹越君は拳銃をこちらに向けて微笑んでいるのだが、まぁ、美少年のせいもあってか少しドラマを見ているような感覚に陥っている。
これは戦いなのだから嫌な予感がして当たり前だ。と自分を納得させようとしてみるが何故だか体が縮こまってしまう。
「奥橋ちゃん、何も攻撃してこないのー?せっかく待ってあげてるんだけどー?」
痺れを切らせてしまった丹越君が少し不機嫌な顔をしながらそう言ってきた。
しかし真は丹越君を黙って見つめる。そしてこの違和感がなんなのかを考えていた。
控室にいた時の丹越君の雰囲気とはかなり違う「何か」が今、真の目の前にいる彼のように思えた。
(でも、何が違う?わからないなぁ…)
真は丹越君をより凝視して首をひねる。
すると、丹越君は真を睨みつけながら「何?」と言って首を傾げる。
「丹越君の雰囲気が変わったなぁって思ってしまって」
「そりゃー戦闘の時だからねー」
「そう、なんだけどさ、なんか、こう丹越君が丹越君じゃないみたいに見えるんだけど」
「は?何が言いたいわけー?」
「えっと…君、本当に、丹越君?私には」
その後の言葉を言う前に真の顔のすぐ近くを何かがかすめた。
丹越君が撃ったのだ、と理解するのに時間はかからなかったので真は少し丹越君から距離を取るために
後ろに下がる。
「まわりくどい言い方って好きじゃないいんだよねー僕。はっきりと言いたいことは言ってくれるー?」
その言葉を発した丹越君を見た真は息が詰まりそうになった。
丹越君の姿が一瞬だけ違うものに変化したように見えたのだ。そしてそこで真は確信した。
(嫌な予感の原因はこれだったんだ)
「丹越君って…悪魔、だよね?」
真の言葉を聞いた丹越君はニヤリと今まで見せてきた笑顔とは違う不気味な笑顔で笑った。
「何だーやっぱり気づいてたのかー、残念だなー。結構騙せてると思ってたのにさー?」
そう言ってすぐに丹越君は自分の頭に銃口を向けて発砲した。
「丹越君!?」
真は思わずそう叫んでしまう。自殺したのだろうか?バレたから??
だが、その不安はすぐになくなった。なぜなら丹越君は自分に発砲した後、血の一滴も流しておらず、ただ服装と身長が変わっていったのだ。
そして真はその姿を見て思い出した。黒い大きめのフードを被っており顔が口元しかみえないローブを纏った目の前の丹越君は、まぎれもなく、真の元いた高校で遭遇した魔人の仲間の一人であった。
「どうやら思い出したみたいだねー。改めて、初めまして?いや、久しぶりでいっか?」
声は先ほどよりも幼くなっており、聞いたことがある。
真は自分の顔から一気に血の気が引いているのがわかった。
そんな真を見て丹越君はクスクスと笑いだしてから話し出す。
「そんなに怯えないでよー、僕、まだ子供だよー?まぁ、魔人だけどねー??」
「魔人…」
「そ、魔人。奥橋ちゃんはあの時バラドの顔しか見てなかったじゃん?だから僕がこの学園に忍び込んで君をもらっちゃおう!ってことになったんだー」
話についていけないが、兎に角、自分が今ものすごく危ない状況ってことは理解できた。
そこで真はポケットに入れていた東堂先輩がくれたホイッスルを思い出した。
(確か、危ない時は吹けとか言ってたよね?)
真はそっとポケットに手を入れ込んでホイッスルを握る。
すると、すぐに真の足元に弾丸が撃ちこまれてきた。
慌てて距離を取ってポケットからホイッスルを握りしめた手を出す。
「その手に何を持ってるのかなー?」
「ただの笛ですよ」
「笛??」
丹越君がキョトンとしている間に真はホイッスルを大きく息を吸ってから思いっきり吹こうとする。
が、その前にホイッスルが手から弾き飛ばされ、カランと音をたてながら向こうに転がって行ってしまった。
「何をしようとしたのか知らないけどー、助けなんて呼ばないでよ?無駄に消さないといけない奴が増えて面倒だからさー」
「…っ」
「あ、やっぱりそうなの?あの笛吹いたら助けがくるんだー?」
「…」
黙ると肯定していることになるのだがこれ以外に返事のしようがなかった。
「なら、早めに処分しなきゃねー」
そう言うが早いか丹越君は笛を弾丸一発で破壊した。
「あ」
真は思わず声が漏れてしまう。
「さて、これで助けは呼べないよ?どうするー?おとなしく僕と一緒に来るか、それとも、ここで抵抗して死ぬか…どっちがいい?」
言葉には似合わない程キラキラとした笑顔で聞いてくる目の前の魔人に対して真は震えが止まらなかった。
何故だろう?悪魔が突然現れてもあまり恐怖は感じないのに魔人となると足がすくんでしまうのは。
そんなことを考えつつ真はここから逃げる手立てを必死で探していた。
この黒く覆われた空間から逃げ出すためにはこの空間を壊すのが一番手っ取り早いのだが、試してみるとなると丹越君と本当の殺し合いになってしまうという恐怖があった。
「…攻撃してこないってことは僕について来てくれるってことー?」
そう言いながら丹越君は一歩一歩近づいて来ている。
(もう、迷ってる暇はないんだ!!)
真は自分の手で自分の頬をバチンと叩いた。
その行動に少なからず驚いたらしい丹越君が歩みを止めたのを見計らって真は地面に手をついた。
そして銀城先生の時と同じように竜巻を起こす。だが、今回は大きな竜巻を一つ作った。
「っ!」
丹越君は竜巻が直撃して吹っ飛ばされた。
が、すぐに竜巻は黒い煙に飲み込まれた。
今の攻撃は空に届くほどの大きさの竜巻だったのだが、この黒い空間には傷一つつけられなかったので容易にこの空間から抜け出すのは無理とわかる。
(と、考えている間にどこにいったんだろ?)
真は丹越君がいた方を見続けていたはずなのに姿を見失った。が、次の瞬間後ろからものすごい殺気を感じて真は振り返る。
「ふーん…君は死にたいのかー。なら、仕方ないねー…」
その声と共に真の目の前に黒いナイフが見える。
「うゎっ…」
真はかろうじて避けるが肩に鋭い痛みが走ったので触ってみると手に生暖かい血が付いていた。
その血を見た途端に真の中の恐怖の感情が倍増した。
そこで真は反射的に風で刀を作り丹越君に向かって構える。
「避けないでよー。一撃で楽にしてあげようと思ったのにさー」
丹越君は楽しそうに微笑みながら手に持っていた小さいナイフをパキリとへし折る。
そして黒い煙を使ってハンバーグなどを食べるときに使うようなナイフとフォークを片手に一つずつ持っていた。ただし、丹越君の身長以上の巨大サイズのであった。
「今度はちゃんと受け止めてね?」
その言葉に真はゾッとしたがすぐに身体を奮い立たせて丹越君を睨む。
丹越君の瞳は綺麗なマリンブルーなのに今は恐ろしく冷たい色に見えた。そして、その瞳はどこかで見覚えがあるような気がした。
無我夢中で丹越君の攻撃を受け止めるので精一杯だった。だから、真はすぐ後ろが黒い壁で行き止まりだと気付けなかった。背中が壁にぶつかって初めて気づいたのだ。
「っ!?」
「あはは、追い詰めたー」
そう言って丹越君はフォークを真の顔めがけて突き刺してきた。
真は刀でそれを受け止めるが、相手の魔人は容姿は子供であるのに力が異常にあり、相手は片手なのに自分は両手で必死に受け止めなければならない程の強さだった。
すると丹越君は一回フォークを戻してからニヤリと不適に微笑んだ。
そして壁から何か奇妙な音がしたと思った瞬間、
「なっ」
真の首や腕や腰、足にまで黒い煙のようなものが巻き付いてきて拘束された。
そしてそのまま真を拘束した黒い煙は壁と一体化して真の身体が壁に押し付けられる。
それと同時に刀が手から離れる。
「っ…」
完全に身動きが取れなくなった真は必至で身体を動かすがビクともしなかった。
しかも動けば動くほどきつく身体に食い込んできた。
「ぐっ…」
そんな真を見ながら愉快そうに丹越君は笑う。
「さてと、これでもう本当に終わりなんだけどさー、僕って優しいからーもう一回だけ選ばせてあげるねー?」
そう言って丹越君は真の首すじにナイフを突きつけて問いかける。
「僕と一緒に来るか、ここで死ぬか…どっちがいい?」
黒い煙に首をきつく締め上げられていたので息をすることも苦しく意識がだんだんと遠のいているのが自分でわかっていた。
死にたくはない、でもここで一緒に行くとは言いたくもない。
答えを決めかねていると丹越君は「時間切れ」と言ってナイフを振り上げる。
真はうっすらとした視界の中で目の前の丹越君を見つめる。
死にたくないな…真は心の中でそう呟く。
「さよならー、奥橋ちゃん」
丹越君の声と共にナイフが振り下ろされた。
真は覚悟を決めてギュッと目を閉じる。
が、一向に痛みが襲ってこない。
(??どういうことだろう?もしかして丹越君が楽にスパッとあの世に送ってくれたのかな?)
そう思いつつ真はゆっくりと意識が途切れてしまいそうな自分を起こして瞼を開ける。
するとそこには胸にナイフが刺さっている丹越君がいた。
「に…こえくん?」
真はそう呼びかける。丹越君はキョトンとした顔で呆然と立ち尽くしているがすぐに口から青い液体が垂れてきた。
おそらく魔人の血の色なのだろう。ナイフが刺さっている胸からも青い血がドクドクと流れ出している。
「なんで…僕、に…?」
丹越君はそう言ってからガクリと膝をついて自分の血を見つめている。
青い血が丹越君の周りに広がっていく。
その時、真は自分の目の前にガラスのようなものがあることに気づいた。
そして、突然黒い煙の拘束が解けて真はその場に倒れ込む。
ずっと首を絞めつけられていたので思わずせき込んだ。
すると、黒い壁の向こうから誰かの足音がした。誰だろう?と思っていたらすばやく身体を抱き起された。そして、ガシリと頭を掴まれてその人物の方に顔を向けさせられる。
「奥橋、大丈夫か!?」
その野太く低い声はまぎれもなく東堂先輩の声だった。
ここまで読んでくれてありがとうございました!!




