東堂の考え
『勝者は海藤拓斗!!』
そのアナウンスの後にあふれんばかりの歓声が聞こえた。
只今、オズ戦の真っ最中でようやく真ん中ぐらいの順番まで試合が終わったところだった。
真はエントリーナンバー20なのだが、同じ番号の人がもう一人存在しており、その人と試合をするということになるらしい。
そして、その対戦相手が真に笑顔で話しかけてきてくれた丹越君だった。
「うわ~、やっぱり海藤君強いな…」
「奥橋ちゃん、海藤と知り合いなの?」
丹越君は小首を傾げながらそう尋ねてきた。
マリンブルーの瞳が真をじっと見つめている。
まるで女の子みたいだなと真は思いつつ返事を返す。
「まぁ、知り合いっちゃー知り合いなんですけどね…」
「?何か海藤とあったの?」
「いや、何もないよ。ただ、海藤君はイケメンですが偉そうな態度が少し残念なだけで」
「誰が残念だって?」
「ぁ…」
いつから後ろにいたのか額に怒りマークを付けた海藤君が立っていらっしゃった。
真はすぐさま海藤から目をそらしてから言い訳を考えるがどうしても思いつかなかったので諦めた。
「言い訳を考えるのを放棄すんな」
何故にバレた!?この人…まさか、東堂先輩と同じで人の心を読めるオズを持っているんじゃ…!?
「君が海藤拓斗君?」
真が海藤に目だけで睨み殺されそうになっているところを丹越がナイスタイミングで助けた。
「ナイス、丹越君!!」
「奥橋、心の声が漏れてるぞ」
「奥橋ちゃん本当に海藤君と仲が良いんだね~!」
いやいやいや、どこからどう見てもただのカツアゲ現場にしか見えませんが!?と真は思うが目の前の海藤が怖くて口を開けなかった。
「お前、誰?」
海藤君は少し睨みながら丹越君の方を向く。
「僕は丹越瑠夏。実技中心クラス治療学科なんだけど、まぁ、知らないよね~」
だが、丹越君はそんな海藤君の目つきなど物ともせずに笑顔で自己紹介をした。
すごいよ。丹越君、君って奴は怖い物知らずなんだね!?
「…海藤拓斗」
「うん、知ってる。海藤君も奥橋ちゃんと同様で有名だもんね~」
え?私って有名なの??って丹越君に聞いたらどうやら銀城先生との一軒であっという間に有名になっていたらしい。
もう、銀城先生には恨みしかないんですが…!!
「奥橋ちゃん顔が怖いよ~?」
「あ、ごめん、つい思い出しちゃって!!」
そう言ってあははと笑うと海藤君にすごく変なモノを見るかのような目で見られた。
なんだよ、そんなに怖い顔だったって?すみませんね!
「ところで、海藤君のさっきの試合、何分で終わったの?随分早く決着がついたみたいだけど」
丹越君は興味津々といったかんじで海藤君にぐいぐいと迫っていきながら話しかけている。
海藤君は面倒くさそうだがしぶしぶといった感じで口を開いて応じる。
「五分」
「五分!?」
真は思わずそう言って固まる。確かに一試合の時間は長くて一時間、大抵三十分程で勝敗が決まる。
だが、五分は今日の試合の中で最も短い時間だったと言っていいだろう。
真は真剣に試合を見る余裕もない程緊張していたので正直今までの試合の内容はまったく覚えていない。
勿論、今さっきの海藤の試合も最後のアナウンスしか耳に入ってこなかった。
海藤は魔人の件で強いのだとは薄々わかっていたがまさか相手を瞬殺できるレベルの強さとは…
「…奥橋、お前何でこれに出ることにしたんだ?」
唐突に海藤君がそんなことを聞いてきたので真は今までのことを愚痴のように説明した。
すると、海藤君は真が説明し終わった時には目に涙を浮かべて笑い転げていた。
「そんなにおかしいところあった!?今の説明の中で」
真が少し不機嫌な声で言うと海藤君はまだお腹を押さえながらも「悪い」と言ってから呼吸を整えた。
「お前ってさ、変な奴に目つけられるよな」
「ですね。今もこうやって変な奴が目の前にいますし?」
「それは俺のことか?」
「さぁ??」
海藤と真がバチバチと火花を散らしながら睨み合っていると元気いっぱいな声が聞こえてきた。
「おぉ!!拓斗に真!俺さ、今試合終わったんだけど、お前らどうだったー??」
そんな声を掛けてきたのは新崎だった。
「新崎君!お疲れ様、私はまだ試合は終わってないよ」
「そっか、んじゃ、拓斗は?」
「お前の試合の一つ前だったはずだが?」
「あれ?そうだっけ?まぁ、拓斗のことだから負けるわけないよな?」
「当然だ」
「ま、俺も楽勝で勝てたけどね!」
何この二人、この周りの人々の空気を感じ取ってくださいよ。皆こっち睨んでますよ?
どうやら、本気で二人とも気づいていないようだ。天然って怖いよね…
「うわぉ、個性的な人たちだね~」
そう言って丹越君はニコニコしていた。
やっぱり君は勇者だと思う!!
「奥橋ちゃんと試合なのは残念だけど、僕は成功させるよ」
丹越君は真の方を向いてそう高らかに宣言した。
いや、もうどうぞ勝ってくださいなと言いたかったが、そんなこと言うと他の人たちに変な目で見られそうだったので取りあえずお互い頑張ろうとだけ返事をした。
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観客席で大きないびきをかきながら眠っている男がいた。
周りの人は皆迷惑そうにしているが誰も注意できなかった。
なぜならその男、東堂勇人は『キング』の一人であり、気が短く怒り易い性格だと知られていたからだ。
そんな東堂の席の隣に座ってきた人物が一人。
眠たそうな目をしており大きく欠伸をするその人は大きく伸びをした後、その手を思いっきり東堂の頭に振り下ろした。
ゴスッといかにも痛そうな音がして東堂は「んがっ」とか言って目を覚ます。
そしてゆっくりと隣の人物を見た。
「…」
「そんなに睨むな。俺は悪くないぞ。お前が寝てんのが悪いんだからな」
そう言って怠そうに頭をかきながら東堂の隣に座っていたのは中丸暁先生だった。
「…」
東堂は自分に非があるのはよくわかっていたが眠っているのを起こされたので若干不機嫌で返事を返さなかった。
すると中丸先生は軽くため息を吐いた後、試合の方に目を移した。
「奥橋をオズ戦に推薦したって本当か?」
中丸先生は唐突にそう尋ねてきた。しかもいつのまにか周りに聞かれない為の結界を薄く張っている。
まぁ、そのことで来たんだろうなと予想していたので東堂も口を開く。
「あぁ。本人は相当嫌がっていたがな」
「ならどうして推薦してまで出場させたんだ?」
「…オーラが黒すぎた」
「オーラ?」
「大抵オーラってのは個人個人の雰囲気や気持ちによって色が変わって来るんだが、時々、他人からの執念などが纏わりつく時がある。恨まれることでそういうオーラが纏わりつくのが一般的だな。その種類は濃くて嫌な感じが伝わってくるからすぐにわかる。昨日、奥橋とたまたまぶつかったんだが、その時に薄くだがその類のオーラが見えた。だが、その時はすぐに消えたから気のせいかと思っていた。だが、今日また奥橋と何故かぶつかった時にはっきりとした黒いものが見えた。恨みの類なら放っておくつもりだったが、違った。よく確かめるたらまるで獲物に印を付けるかのようなイメージだとわかった。独占欲…と言ったら一番近いのかどうかわからねぇが兎に角、奥橋は狙われているということは確かだ。だから、オズ戦に出したら餌に釣られて奥橋を狙っている何者かが動くかもしれねぇと思っただけだ」
中丸先生は「ふむ」と言って考え込む。
「確かに、奥橋真はまだ未知数のオズを持っている可能性が高いので狙われる理由はあると言われればあるな」
「アイツに纏わりついたのはあまりに濃い黒だった。あれは、しつこいぞ」
「…奥橋にはそのことについて話したか?」
「いや、自分から警戒しだすと相手がまた距離を置いてから出直してくることになる。そしたらもっと厄介だ。ただ、合図はするように言った」
「合図?」
「あぁ。嫌な予感がしたら俺が予め用意した笛を吹けって言っといた」
「笛?」
「転移用の笛だよ」
「…誰を転移するんだ?」
「俺だが?」
「…お前、そんな笛を作れるようになってたんだな」
「まぁ、俺、天才だから」
中丸先生は頭をガシガシとかきながら呆れ顔で東堂を見ていた。
東堂は大きく欠伸をした後に軽く笑う。
「あんたが『キングになったからには生徒を全力で守れ』って言ったじゃねぇか」
「…俺、そんなこと言ったっけ??」
「言った言った」
中丸先生は首を傾げながらうーん、と唸る。
東堂は再び軽く笑いながら試合に目を移した。
「あぁ、噂をすれば、始まるぜ」
そう東堂に言われて中丸先生も試合に目を移した。
そこにはガッチガチに緊張した奥橋と相手の生徒が見えた。
そして試合開始の合図が鳴り響いたと同時に相手の生徒の手から黒い霧のようなものが出たと思った瞬間に奥橋とその生徒の姿が見えなくなり、霧でできた黒い四角い箱のような中に入ってしまったようだ。
別にルール違反ではないがこれでは観客が楽しめない。
案の定観客席から不満の声が聞こえ出していた。
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「丹越君…皆から見えなくなっちゃったけど、いいの?」
「いいのいいのー。別にルール違反じゃないでしょー?」
丹越君の突然の行動に驚いたが真はなんとか落ち着いていた。
しかも丹越君のオズは霧を操るのかな?そんなことを考え始める自分自信に少し驚いている。
「奥橋ちゃんってさぁーやっぱり強いのー??」
「わかんないっすね!」
「あっそ。じゃ、お手並み拝見しーましょー」
そう言って丹越君の両手には一つずつ拳銃が握られていた。
黒い光沢の拳銃をカチャリと構えて丹越君はその行動には似合わない笑顔を見せる。
「僕を少しは楽しませてね?」
その言葉に真は背筋がゾッとした。
話がなかなか進まない…ごめんなさい
ここまで読んでくれてありがとうございました!!




