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オズ  作者: 紗パカルギ
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占いはあたります

今日は学園祭一日目。晴れやかな天気で皆一気にお祭りムードな日。


そんな日に私は人生の分岐点になるかもしれない場面に出くわしているってどゆこと。


つい先ほど占い先輩から「金髪ピアス野郎とはしゃべるな」というありがたい助言をもらったにもかかわらず、今まさに私はその金髪でピアスをたくさんつけている二年の先輩に頭をつかまれている状態だった。


自分の体から尋常ではない汗が噴き出ているのがわかった。

真の脳内がフル回転で動き、この状況から逃げ出す策を必死に考えているのだが今のところ何もおもいつかないという絶望的な状態。


「おい」

野太く低い声が真に対してそう呼びかけてきているのは重々わかっているのだが、ここで返事を返したらもう自分の安全な学園ライフが望めないのではないかという不安に駆られ口をきゅっとむすんでしまう。


すると真の頭を掴んでいる手に力が加えられぐるりとピアス先輩の方に無理やり顔を向ける形になってしまった。


「おい」

再び声を掛けられるが真は目をそらしながら口をより堅く閉じる。


「…」

「…」


すごい凝視されているのは視線が突き刺さっているのでよくわかるのだが、なぜ黙ってしまったのかがわからなかった。


ただ、すごく睨み付けられているのはわかる。

なぜなら私の手を未だ離していない恋から恐怖の震えが伝わってきたからだ。


恋はすごく怯えているが真の手はぎゅっと握りしめたまま逃げもしない。


周りの人たちは息をのんで真達を見つめている。


さて、本当にどうしようか。



「お前、俺のオズを知ってるか?」

「?」


ピアス先輩が突然そんな質問をするものだから真は思わず顔をあげてしまった。

すると、ピアス先輩が悪役みたいな笑みを浮かべているのが目に入ってきたので顔を上げたことを少し後悔した。


それでも真はまだピアス先輩の言葉に返事はしていない。まだ、希望はあるのだ。


構わず、ピアス先輩はまた口を開いた。

「俺のオズの一つには、触れた相手の意図を読み取ることができるのがある」

「…っ」


まじですか。ピアス先輩は他人の心の中を読めるのかっ!!

真は冷や汗が自分の額から流れ落ちるのがわかった。


「昨日から気になってたんだ。お前の中身はどうして読めない?」

「……へっ?」


私の内心が読めない??どうしてかなんてこっちが聞きたいくらいだ。

だから思わず声を漏らしてしまったことに気づき慌ててピアス先輩から目をそらした。



「…なんだ、お前自身もわかってねぇみてぇだな」

「…」

「お前、生意気だな」

「っ!!」


うん、やっぱりそうきますよね!来ると思ったよ!

ピアス先輩の声がだんだん不機嫌になってきていることは薄々感づいていたが、まぁ、わかっていたところで止めることもできなかったのでスルーしていた。


結果、生意気な一年って思われるのは当たり前ですよね。はい、わかりますよ。

だってさっきから無視を決め込んでいるんですもん。誰だってイラッとしますよね。


「おい、何とか言え」

「…」

「…へぇ…そうか。んじゃ、お前のお友達に少し相手してもらうとすr」

「恋に手を出したら、許しませんよ」


その言葉を聞くや否やピアス先輩はニタリと笑う。

我ながらなんとも安い挑発に乗ってしまったなぁとは思ったが、もし恋が殴られたりしようもんなら私はピアス先輩をこの場で殴り返す自身はあった。


「許さない、か。お前、一年のくせに勇気あんな」

「どうも」


すると、今まで圧迫されていた頭が自由になった。ピアス先輩が真の頭から手を離したのだ。


「お前、名前は?」


普通ならばここで名乗るのが礼儀なのだろう。だが、私は以前まったく同じ質問をされて名前を答えたあとに、最も望んでいない方向に会話が進んでいった覚えがあるので今回は変えてみようと思った。


だから、真はすごく真面目な顔つきのままピアス先輩にこう一言告げる。




「匿名希望でお願いします」

「……は?」


これにはさすがにピアス先輩もポカンとした顔をしており、上手く隙を作ることができた。


なので、すかさず「では、失礼します」と言ってから恋の手を引っ張って真はテレポートを使って逃げたのだった。




真達は外の中庭に着いていた。真は気を抜かずに辺りを厳重に確認する。

まぁ、ここまでくれば大丈夫とは思うけど一応、ね。


そしてピアス先輩はもういないとわかると大きく息を吐いた。


「ごめんね、恋。怖かったでしょ?」

「うん、まぁ、でも、真が守ってくれたから嬉しかった」


恋ちゃんよ、そんな言葉は男性にホイホイ使っちゃダメだよ。皆すぐにその気になっちゃうと思うから。


そう恋に言うと首を傾げながらもわかったと言っていたがおそらくわかっていないだろう。



兎に角、ピアス先輩と会話はしてしまったが、オズ戦に関しての話は一切してないしきっと大丈夫だろうと真は思っていた。占い先輩は「しゃべるな」と言っていたけどもね…。まぁ、なんとかなるさ!!


だが、この考えは甘かったと真は後で知ることになった。



-------------------------------------------------------------------------------



午後、真と恋は琴音も手伝っているという『深海レストラン』に行き昼食をとったあと、そこで女子トークをして盛り上がっていた。


深海レストランはその名の通りまるで深海の中で食事をしているような気分を味わえる場所だった。

なぜならそのお店の周りは水のドームで覆われており、なんとたくさんの種類の魚がその水の中を泳いでいるのだ。


周りの色とりどりの魚を見ながら真はため息を吐く。

すると、一仕事(可愛いメイド服を着て客寄せ)終えた琴音が他の子と交代してきたらしく真たちの席に座ってきた。


「真、どうしたの?なんか、やつれてるね」

そんなことを言って女神は優しく真の頭を撫でてくださった。


あぁ、女神はどうしてそんなに輝いておられるのですか…!もう、眩しくて直視できませんよ…


「真、東堂先輩に絡まれたの」

私がなかなかしゃべらなかったので恋が代わりに琴音に返事をしてくれた。


ってか、あれ?恋、東堂先輩ってピアス先輩のこと??

そう尋ねると恋はコクリと頷いた。


「へぇ、東堂先輩に?…って、えぇぇ!?」

珍しく琴音がいつもより大きく瞳を開いて驚いた。


え?東堂先輩ってそんなに有名な人だったんですか?

真が首を傾げながら琴音に尋ねると琴音は「勿論!」と答えて説明をしてくれた。


「東堂先輩はね、二年生の中でも一位を争う成績優秀者で『キング』の一人だよ!見た目は確かに怖いけど、正義感溢れるとっても頼りになる先輩だよ」

「…嘘、だよね?」

「本当だよ!まぁ、でも結構気が短い人だからすぐに怒る人だけどね」


そう言って琴音はあははと笑って頼んでいた紅茶を飲む。


真は頭の整理が追いついていなかったが、そんなにすごい人だとは思っていなかったので午前中にしてしまった失礼の数々を思い出してどうしようかと悩んでいた。



「真、顔色が悪いけど大丈夫?」

「あ、うん。ダイジョウブダヨ。キット」

「きっと??」


言葉の意味がわからずに琴音は真を見つめていたがすぐにレストラン入口の方に顔を向けた。


なぜなら、入口が随分乱暴に開けられたからだ。

大きな音をたてて開くドアに皆の視線が一気に集中する。


真もドアに視線を向けていた。

そして、入ってきた人物を見た途端に真の思考回路が一気に停止してしまった。


「奥橋真、いるか?」

午前中に聞いたあの野太く低い声が店内に響き渡った。


真はすぐにでもテレポートで逃げ出そうかと考えたが、もう名前も知られていては逃げても無駄ではないかと思い少しの間躊躇してしまった。


それがいけなかった。

「あ、噂をすればだね。東堂先輩!!真ならここにいますよ!!」

琴音はそう言って大きくピアスせんぱ…東堂先輩に向かって手を振る。


「こ、ここここ、琴音ちゃん!?一体なぜに!?」

真は思わず席を立ちあがって大声を出してしまった。

「へ?だって今日、真、東堂先輩と絡んだって」

「うん、そうなんだけども、でもね、良い意味ではなくて」


ガシリと真の頭が掴まれた。

あ、この感じ、午前中も味わったなぁ。などと他人事のように思いながら真は東堂先輩の方をまた強制的に向かされる。


そこには何故かキラキラとした笑顔の東堂先輩の顔があって逆に嫌な予感がする。


「よぉ、奥橋」

「どうも、と、東堂先輩。午前中ぶりですね」

「あぁ、突然消えやがっていい度胸だなぁ?」

「いや、あの、急いでたので」

「ふ~ん?まぁ、いい。おい、白木、コイツ借りるぞ」


琴音ちゃん、help!!

そう心の中で助けを求めたが、琴音には届かなかった。


「真で何するつもりですか?」

「いや、ただ、コイツをエントリーさせようと思ってるだけだ」

「エントリー?」

「まだ、オズ戦のエントリーは受付ている。だから」


オズ戦という言葉に反応し真は東堂先輩の言葉をさえぎって「行きませんよ!?」と必死に抵抗の意を示した。


が、そんな真の言葉などまったく聞いておらず東堂先輩は真を脇にひょいと挟んでしまった。


「じゃ、借りるから」

「え、あの、」

琴音もポカンとしてしまっており何も言い返すことはできなさそうだ。


まずい、このままでは非常にまずい!!よし、もう一回テレポートをして…


「奥橋、次逃げたら…どうなるかわかってるよな?」

「…はい。すみません」


逃げ道がなくなった…!

今なら子牛が売られていく気持ちがわかるよ…ドナドナ~


真は力なくうなだれて東堂先輩に連れて行かれるのだった。

東堂先輩と琴音は生まれた時からずっと一緒に育ってきた家族のように親しいうちの一人なので琴音にとってお兄ちゃんのような存在です。


ここまで読んでくださってありがとうございました!

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