似ている
気分が悪くなったその日は一日中保健室で眠ってしまっていた。
起きたのは恋が放課後に保健室に来てくれた時だ。
ずっと眠っていたせいか起き上ると体が鉛のように重く感じた。
とは言ってもたっぷりと睡眠をとったため体調は悪くはなく、むしろ元気なくらいだ。
「真、大丈夫?まだ寝ててもいいんだよ?」
恋は本当に心配そうな表情で真を見つめており、なんかもう恋が泣いてしまいそうな顔をするので真は慌てて平気だと言い安心させる。
「ごめんね、真が具合悪いの気づけなくって…」
「違う違う!!恋のせいじゃないって!!だって、気分悪くなったのあの実戦中だから」
そう言うと恋の周りの空気が変わった。
「……真、足影麓に何かやられたの?」
「え?いや、違うよ」
「本当に?何か変な呪文でもかけられたんじゃ」
「じゅ、呪文て…本当にただ緊張とか焦りとかからきた体調不良だよ。きっと」
「…そっか。真が言うなら仕方ないよね。今回は」
「…」
なんだろう。恋ちゃん言葉を所々省略しているように聞こえるんだけども気のせいだよね?いつもの可愛い優しい恋ちゃんですよね?なんか目が笑っていないのは私の見間違いですよね?
そんなこと聞けない真はただ恋に「足影君は何も悪くない」としつこく言っておいた。
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翌日、今日も勿論授業があるので昨日と同じ午前の実技授業へと向かう。
恋は午前中にどうしても治療学科の授業が入ってしまうらしいので真は午後の授業にしようかと思ったが、防御学科が今日は昼からしか授業をしないという情報が入ってきたので仕方なく午前に行くことになった。
部屋を出る前恋に散々「気を付けてね」と言われたのだが、一体何に気を付ければよいのかがわからずに部屋を出てきてしまった。
訓練場に着いた。昨日、早退してしまったので遅刻はしないようにしようと思い早めに来てみたがどうやら早すぎたようだ。誰一人としていない。
さてどうしようかと考えた結果ここは訓練場なのだから自主練しようということに決めた。
私は風を使って具現化するオズが結構好きだ。でも、まだ刀しか作ったことがない。
刀は海藤が炎で作っているのを見てかっこいいなーと思いマネてみたらできちゃったという感じだった。
他にもレパートリーが欲しいな…どうしよっかな…
手始めにあの、バラドとかいう魔人が持っていた死神が持ってそうな鎌を作ってみよう!
そう思って頭の中で必死で形を思い浮かべる。が、なかなか上手くはいかなかった。
う~ん、やっぱりあの独特の刃の形は難しいなぁ…
五分間集中してみたがまったく駄目だった。たったの五分間風を具現化させようと頑張っただけなのに少し汗が額に滲んできていた。
「ふぅ~、結構大変だなぁ…」
そう言いながら真は無意識に扇子で自分を扇いだ。
はぁ~気持ち良いなぁ~
パタパタと扇いで数秒後、異変に気付いた。
自分の手で持っている扇子を真はまじまじと見つめて首を傾げる。
「扇子なんていつから持ってたっけ…?」
そう呟きながら手で持っている扇子をパタリと閉じる。
するとその音と同時に扇子が空気に溶け込むように消えた。
そこで、自分が具現化させた物だったということが分かった。
「…おぉ」
真は自分で自分に驚いてしまう程無意識に風を具現化できていたのだな。怖いな。と客観的にそう思った。
その後、色々試した結果細々としたものなら大抵は具現化することが可能で武器になりそうな物はまだ刀しか作りだせないことが判明した。
うん、すごく私って戦闘向きじゃないですね。
もう、どうしてこのクラスに移動になったのか不思議なくらいに弱いですね。まぁ、すごく好都合だけど!!
上手くいけばまた学問中心クラスに戻れる可能性も…!?
そんなことを一人考えてニヤニヤしていると扉の開く音がしてきた。
私以外にも自主練をする生徒がいるとは…!!そう思って真は扉の方を向く。
そこにはいつにもまして眠そうな表情の中丸先生がいた。
中丸先生は大きく口をあけて欠伸をし、こちらをふとした様子で見た。
そして少し目を見開いてから真に向かって微笑んだ。
「おはよう、奥橋」
「お、おはようございます」
朝っぱらからその甘いマスクはいけませんよ先生!!私はイケメン慣れなんていつまでもできませんからね!!
そんなことを真が内心で言っているとはまったく思っていない中丸先生はこちらにスタスタと近づいてきた。
「もう、体調は良くなったのか?」
「はい、もうすっかり良くなりました」
「そうか。ならいい。で?」
「はい?」
「いつから具合が悪くなったんだ?」
「あ、えっと…試合の最中に突然…ですね」
「……保健室では何て言われた?」
「ただの貧血だっていわれました」
「……そうか」
なんだろう。やっぱり仮病使ったとか思われているのだろうか。まぁ、そう思われても仕方がないかもしれないが…
「睡眠不足だったのか?」
「まぁ、そうですね」
「眠ったら治ったのか?」
「はい!」
「…わかった。今度からは自己管理にも十分気を配れよ」
「はい。すみません」
中丸先生は真の頭を軽くポンポンと撫でる。
真は中丸先生からされるこの頭ポンポン行為が意外と好きだった。何故だか安心するのだ。
だから思わず笑ってしまった。すると中丸先生が少し不思議そうな顔をして真を見つめている。
なので真は慌てて笑顔のまま
「なんか、先生から頭ポンポンされると落ち着きますね~」と少しふざけたような口調でごまかしつつ本音を言った。
すると中丸先生はじーっと真を見つめた後、「そうか」と言って再び頭を撫でてくれた。
真は撫でられている時に中丸先生を見上げると中丸先生はとても優しい表情だった。思わず温かいなと思ってしまう自分にビックリした。
「まだこの学園には慣れていないかもしれないが、ここではそんなに気張らなくてもいいからな」
中丸先生はそう言ってから職員室に忘れ物をしたからと戻って行った。
その後、真は撫でられた頭を自分で触る。
あれ?今、考えると私、ものすごく子供みたいじゃないか?
頭撫でられて喜ぶとかっ…は、恥ずかしっっ!!うわぁ、今度から気を付けよう。
そんな事を思っていると再び扉の開く音がした。
もう中丸先生が戻ってきたのだろうか?なんか恥ずかしいな…うわぁ、さっきの時間をなかったことにしてほしい…
「……何、頭抱えてんだよ。お前」
「あれ?海藤君か…なんだ。良かった。あ、おはよう」
「は?」
「いいのいいの。こっちの話だから」
そう言って海藤に笑顔であははと言ってやった。
すると海藤は何が気に食わなかったのか真にズカズカと歩み寄りすごく冷たい目で睨み付けてきた。
「…海藤君、ドウシマシタ?」
「さっき…俺じゃなくて誰が来たと思ったんだ?」
「え、いやてっきり中丸先生かと」
「中丸?」
「いやね、さっき中丸先生に頭ポンポンされてしまい、そのことで落ち着く自分って…って少し落ち込んでたんだよ。で、中丸先生忘れ物職員室にとりに行ってから残された後だんだん恥ずかしくなってしまい、今顔を合わせると恥ずかしくて嫌だなとおも」
「アタマポンポン??」
「あ、ただ頭を撫でられただけだよw」
「……ふーん。こんな風に?」
「そうそう、こんな風に……???」
そう言ってから海藤が何故か真の頭をポンポンと撫でた。
予想外過ぎる海藤の行動に真は少しの間フリーズする。
海藤を見上げ真はキョトンとしてしまった。
海藤はしてやったりというような顔で口角を少し上げる。
「確かに。ガキみたいだな」
「なっ…」
なんだコイツ。本当に人の羞恥心を増大させやがって…!!むかつく。
そう思った真は自分の頭に乗っている海藤の手をベシリと払いのけてコホンと一つ咳払い。
「海藤君よりは精神的に大人だと思いまーす!」
と言い返したところ、
「にしては顔が赤いなw」
と海藤は言って笑いをこらえている。
「これは怒りのせいです」
「照れのせいじゃなく?」
「海藤君に対しての怒りのせいです!!!」
「あっそ。じゃ、そういうことにしといてやるよ」
「なんでそんな上からな物言いなんだよ!」
思わずツッコむと海藤は声を出して笑いながら真の肩に手を置いて
「だって上だろ?」と言った。
はい、皆さーん!コイツ(海藤)は性格が捻くれ野郎だと判明しましたよー!!!!
真は肩に置かれた海藤の手を払いのけると両頬を思いっきりつねってやった。
「って!!!」
「うっわー!こんな簡単にほっぺつねられる人が上だなんてアリエナーイ!!」
我ながら無茶苦茶な物言いだなとは思ったが口より先に手がほっぺをつねってしまったので仕方がない。
すると海藤は額に怒りのマークをつけながら真のおでこに重い一撃を放った。
ビシィッ!!!
「ったぁ!!」
すごく痛いデコピンをくらった真は自分のおでこを抑えて呻く。
海藤は海藤で少し赤くなった頬をさすっている。
二人はお互いに睨み付けあいながら同時に言い放った。
「あんたの方がガキじゃん!」
「お前の方がガキだろ!!」
(どっちもガキだろ)
扉の前で立ち聞きしていた中丸先生は内心でそう二人にツッコんだのだった。
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