実戦
あんまり戦ってないです。
「さ、三番目ってことは…え?すぐに準備しなくちゃいけないんだよね?」
「だな」
足影君…少しぐらい急かしてくれていいんですよ?
対戦するなんて初めてだしなんか緊張するなぁ…いや、初めてじゃないか。銀城先生と戦ったか。昨日。
そんなことを思いつつ真は白い結界に包まれたドームのような場所の近くに歩いて行く。
どうやらこの中で戦うらしい。
「よし、準備はいいか?勝負は相手が負けを認めた場合か戦闘不能と判断されたら終了だ。あ、言い忘れていたがこれで勝った方には『ポイント』50000追加する」
この言葉によって皆の目の色が変わった。恐怖の色を浮かべていた者も今は何か鋭い光を持った目になっている。
皆そんなにポイントが欲しいのかな…?
真にとっては進級できればいいのでそんなに魅力的な言葉には聞こえなかったのだが、どうやら他の生徒は全員欲しくて欲しくてたまらないらしい。
真はチラリと足影を見てみたところ何故か足影もこちらを見つめていた。
この事は予想外だったので真は思わずビクリとしてしまった。
「あ、足影君…どうかした?」
美少年だが無表情だとなんか怖いのだ。
「奥橋…すまん。先に謝っておく」
「?」
「俺はどうしても『キング』の中に入らなければならない。だから、この勝負、手加減なしで行かせてもらう」
真はキョトンとしてからすぐに笑顔で「私、弱いよ」と言ってみる。が、足影は無表情のまま首を横に振った。
「あの銀城先生に勝ったんだろう?只者ではない事くらい俺でもわかる」
「…あれはきっとたまたまだよ…うん」
「偶然で負かすことができるくらいの人じゃない。あの先生は」
「…そんなに銀城先生って強いの?」
「学園内では三本指に入る程らしいが」
「まじすか」
知らなかったし!でも絶対あの先生本気じゃなかったから!って言い訳しても今の足影君には理解してもらうことはできなさそうだからもう何も言うまい。
それよりも私は足影君が本気で行くという宣言に焦っているのだ。別に私はポイントなんざ欲しくない。
だから足影君には勝ってもらって全然かまわない。
あれ、なんかすごく偉そうな口調になってしまった。違う違う、私はむしろ足影君に勝ってもらいたい。
だってこれ以上、私のまったりとした学園ライフ計画に支障をきたすようなマネはしたくないからだ。
私は実技中心クラスの弱い奴ってことでいいのでひっそりとしていたいのだ。
なので足影君には是非とも勝ってもらいたい。だから、すぐに終わらせよう。
真と足影が結界の中に入るとそこは元いた高校のグラウンド場程の広さがあった。
広すぎるでしょう!?そんなに動きまわらんわ!!
周りには他の生徒達が結界の外でこちらを見ている。どうやら真達が結界の中に入ったことで結界がガラスのように透明になったようだ。
ただし、外の声はまったく聞こえなかった。
結界の中は静まりかえっており、すごくピリピリとした空気が伝わってくる。
中丸先生はそんな真達の空気の中にスタスタと入ってきた。
「ここは俺が判定役だから。んじゃ、準備はいいか?」
「はい」
足影君は身構える。
「ちょ、ちょっと待ってください。まだ心の準備が」
真は慌てて中丸先生にストップをかけて一つ深呼吸をした。
「大丈夫だろう。お前は昨日銀城先生を負かしたんだから」
「大丈夫じゃありません!!あと、昨日のはたまたまです!!」
「はいはい。言い返す余裕があるならもう始めるぞ?」
中丸先生がそう言って手を挙げる。
「うわ、ちょっと待っ…」
「これより、足影麓 対 奥橋真の試合を始める。」
「先生、待っ」
「始め!!!」
人の話聞けぇぇぇぇ!!と大声で文句を言おうとした途端真の足元が揺れはじめた。
「!?」
「いくぞ、奥橋」
「いや、あのねぇぇぇっ!?」
真は言葉の途中で思わず叫んでしまう。
大きな手、そう、岩でできた大きな大きな手が真の目の前に現れた。
地面から突然でてきたその手は思いっきりパーの形で真を潰しにかかってきている。
「うわっ!!」
真は思わずテレポートで避ける。
ものすごい音をたてながら大きな手は地面を叩きつけていた。
そして手が起き上ると地面には大きな手形がついているではないか。
真は血の気が引いた。
もしこの手に押しつぶされていたら即死だっただろう。
足影は真を殺す気なんだろうか?もう、今ここで「負けました」と言ってしまおうか。でも考え直す。……いや、これは悪魔と戦う為の訓練の一つ。
だから、足影の行動は正しいのだろう。
真も魔人の件で戦うとはどれほど命がけなのかを体験した。あの時、真自身は何も力になることができなかったが、海藤と魔人が戦っているところを目の前で見てわかったのだ。
皆全力で戦っているのだと。
『相手が一生懸命なのに自分が手を抜いたら相手に対して失礼だろう?』
昔、誰かに言われた言葉。どうしてなのか突然頭の中でこの言葉が響き渡った。
男性の声で懐かしいような初めて聞いたような不思議な感覚だった。
と、同時に吐き気がした。
まぁ、確かにそうなんだろうけど、私は本当に勝てそうにないかもな。(体調を考えて)
そう思いつつ真はあることを決心した。
「ごめん、足影君」
「?」
「私も全力でいくよ」
そう言うと足影はほんの一瞬だったが目を見開いた。そして強く頷いた。
真はそれを確認すると両手に昨日も使った切れ味の良い刀を想像した。
二刀流なんてしたことないけど、あの岩(手)を斬るには一本じゃ難しそうだもんなぁ。
真は両手に作った刀を握ってから大きな手を見つめる。
そしてまっすぐに手に向かって走っていき風を使って自分のジャンプをより高くする。
「はぁぁぁぁぁっ!」
ザシュッ
一瞬で決着がついた。
真が地面に着地したと同時に岩はガラガラと崩れ落ちていったからだ。
だが、それと同時に真が持っていた刀も砕け散った。真は両手を眺めてため息を吐く。
「足影君、岩が固すぎて刀が壊れたんですけど!!」
「…いや、それは奥橋が無理やり」
「また作ればいい話だけどもなんか悲しいよ!?」
「……す、すまん…?」
真の理不尽な怒りをぶつけられただけなのに足影はつい謝ってしまっていた。
そしてその後すぐに真は中丸先生の方を見てこう高らかに言う。
「中丸先生、私は降参します!!」
一瞬空気が凍りつく。
「奥橋!?」
流石に足影君も無表情だが驚いた声でそう言った。
「なんで?」
対して中丸先生は落ち着いた態度で真に問いかける。
「私はまだ風のオズで刀を作って攻撃するということしかできません。しかも、今、足影君が作り出した岩の大きな手を切り刻んだら刀は砕け散りました。私にはまだ力が足りません。だからこれ以上続けても結果は一緒だと思います」
「それはお前が勝手に決めつけているだけだろう?」
「そうかもしれません。でも、私はこれが今の最大限の力なんです。だから降参します。負けました!!あと、今すごく気分が悪いです!!」
そう言って真は中丸先生を見つめる。
「………勝者、足影麓。奥橋はすぐに保健室に行け」
「な、中丸先生?」
足影は中丸先生を見て首を傾げる。
一方、真は「ありがとうございます」と言うが早いかさっさと結界から出た。
皆がキョトンとした顔で真を見ているが真はそんなの気にせずに結界の外で恋に「終わったよ~」と言って話しかける。
恋は真の戦いを見ていたのでオロオロしながら問いかける。
「真、よかったの?」
「うん、一番最善策だったよ。だって私は弱いもん。あと、今ものすごく気分が悪いんだよね~」
「え?」
気分が悪いと自覚した途端にみるみる自分の顔色が悪くなっていくのが自分でわかった。
恋がついて行くと言ってくれたが真はそれを断り、保健室へと向かった。
保健室のベッドを借りてすぐに真は眠りについた。
夢を見た。
自分が大雨が降りしきる中、びしょ濡れで立ち尽くしている。そして、周りには何故か壊れた建物らしき物の残骸。一歩、踏み出そうとした。
が、足に何かがぶつかった。
それを見ようと下を向く。
が足元は真っ暗闇で何もなかった。そして足場が真っ暗だとわかった瞬間に真はその暗闇に落ちていった。
「っ!!!」
真は飛び起きて周りを見渡すと保健室だった。
ホッとため息を吐いて真はボフンとベッドに倒れ込む。
「変な夢…」
そう呟いて真は再び目を閉じるのだった。
真はが降参した理由は気分が悪くなったことが一番影響していますwwここまで読んでくれてありがとうございました!!




