…のは無理でした
「あの…銀城先生…少しお話をするんじゃなかったんですか?」
真はなるべく声が震えていることに気づかれないように気をつけながらそう銀城先生に問いかけた。
「あぁ、そうだ。だから今こうして向かいあっているだろう?」
少し面倒くさそうに銀城先生はそう答えた。
…確かに向かい合ってはいるけども…
「…あの、一応聞いていいですか?」
「なんだ」
「今から、何するんですか?」
「語り合うんだよ。拳と拳で」
そう言って銀城先生はサングラス越しでもわかる程、目をキラキラさせているのがわかった。
暑苦しい…と真は内心で激しく思ったがまぁ、かろうじて口にはしなかった。
今、真は銀城先生と二人きりで実技中心クラス専用の訓練場内にいる。
先程、銀城先生に脅しに似た呼び出しをくらい「ついて来い」と言われたのでおとなしくついて行くとこうなった。
わけがわからない。いろんな疑問があるがまずはどうして実技中心クラスの生徒達がここに一人もいないのかが気になっていた。
それも聞いてみると「出ていけ」と言ったら皆おとなしく出て行った。だそうだ。
完全に脅しているじゃないか!!と思ったが本人はあくまで皆があまり一生懸命訓練をしているように見えなかったから「ここで訓練するのがだるいならさっさと帰れ」という意味で「出ていけ」と言ったのだと主張している。
まぁ、皆きっと厄介な事になると思って反論しなかったんだろうな…
で、どうして私が喧嘩大好きと言われている銀城先生と一対一で喧嘩をするみたいな事になっているのだろうか。そう問いかけたところ
「お前…昨日の救世主様なんだろう?」
という直球どストレートな答えが返ってきた。
「………はぁ?」
真はかろうじてそう返した。
やっぱりバレていたかと焦ったがこちとらそう簡単に「はい」とは言いませんよ。
「はい」って言った瞬間に私が今まで(たった二週間弱だが)築き上げてきた皆への奥橋真のイメージ(普通の子)が水の泡になってしまう。
それだけはどうしても避けたい。避けたいのだが…
(見てる。すっごい見てる)
この訓練場、ものすごく広くて時には試合をやったりするようでちゃんとした観客席が設けられているのだ。だから銀城先生から追い出された実技中心クラスの生徒達ほぼ全員がその観客席ですごく興味津々といった様子で真を見ている状況になっていた。
どうやら真は『銀城先生に喧嘩を売った生徒』ということになっているらしい。
さっきから耳を澄まして観客席にいる生徒たちの声を聞いているのだが、「生意気」や「ボロ負け」という単語が何回も耳に入ってきているので間違いないだろう。
「おい、もうそろそろ始めようぜ?」
銀城先生が痺れを切らしたのかそう言って地面に右腕を突っ込んだ。
真は思わず自分の足元を見る。ただのどこにでもあるグラウンドのような地面だ。
なのにその地面に銀城先生の腕がまるで水の中に手を突っ込んでいるかのように地面に埋まっていた。
そしてその手を勢いよく引き戻す。するとそこには腕が銀色になっており手は腕と同じ色の大きなマシンガンらしきものが付いていた。
なんか一気に物騒な人のレベルが上がったな、この人。
そう思いつつも真は身構えてしまう。ぶっちゃけ真は悪魔に突然襲い掛かられる事が今まで何回もあったので自分の身の危険を感じると条件反射で身構えるようになってしまっていた。
今の銀城先生は悪魔ではないが本気で真を殺そうとしているような気がするほどの覇気を出している。
死ぬ気でいかなきゃ殺される。真はそう思った。
身構えた真を見て銀城はニヤリと笑う。
「じゃ、こっちから行くぞ?」
そう言うが早いか銀城はマシンガン化した腕をこちらに向けてすぐにぶっ放した。
ズガガガガガガという音がする前に真も動きだす。
とりあえず一番得意なスノードーム型のバリアでなんとか弾丸を防ぐ。が、十秒もたたないうちにバリアに亀裂が入りだした。
(嘘、結構分厚めに作ったのに!?)
さすがは教師。昨日の悪魔の時のように上手くはいかない。
亀裂が大きくなっていくが今だ弾丸は撃ち続けられている。このままではもう一分ともたない。
「くっ…」
真は突然バリアを自ら壊した。バリアがガラスのように砕け散り消える。そして真は勢いよく弾丸をくらいその場に倒れ込んだ。
観客席の生徒達が騒がしくなる。
銀城は撃つのを止めてゆっくりと真に近づいてきた。
そしてすぐに気づく。銀城は自分の後ろに誰かの気配があることに。
ガキィィン
マシンガン化した腕と風で作られたガラスのような刀が交わる音が響き渡った。
「ほぅ…騙し討ちか?そんな小賢しいマネじゃあ俺には傷一つつけられないなぁ」
「…っ」
真はバリアを壊して一瞬目を奪ったすきに風で分身をつくり、自分はテレポートを使って姿を眩ませその場から離れ、銀城の背後から首筋に刀を突きつけるという作戦が駄目になってしまい本気で焦る。
他のオズをバンバン使ってもいいならばまだ勝ち目はあるかもしれないが、風とテレポートしか戦闘になった時に使えないという設定で通している。ここでほかのオズを使うとさすがに怪しまれ今後の生活に支障がでそうだ。
「考えてる暇はねぇ…ぞっ!!」
「うわっ」
一瞬の隙をつかれて真は思いっきり振り払われて顔に銃口を突き付けられた。咄嗟にしゃがんで刀を投げ捨て両手を握りしめて風を圧縮する。そしてその両手を思いっきり地面に叩きつけた。
「っ!」
銀城は一瞬で察知したのか避けるためにジャンプをする。が、一瞬だけ遅かった。
ゴォォォォっという音と共に地面から竜巻が二つ飛び出してきた。
銀城は二つの竜巻に挟まれて上空へ吹っ飛ばされる。が、空中で体勢を立て直してマシンガンを構え周りを見渡した。
が、真の姿が見つからない。
(どこだ?)
「隙ありぃっ!!」
「っ!?」
そう言いながら真は銀城よりもはるか上空から刀で切りかかってきていた。
銀城は銃口を真に向けてぶっ放す。
が、真は風のように消えた。
「また騙し討ちかっ」
銀城はそう呟いたところで地面へと着地した。
そして首筋にヒヤリとあたる何かの感触に思わず動きを止める。
「へぇ…やるな」
銀城はそう言ってニヤリと笑う。今度は少し優しそうな笑みだった。
「これは…騙し討ち…じゃなくてただのテレポートですっ」
真は銀城の真正面に立って堂々とそう言った。
だが、もう緊張で息はあがっており汗も尋常ではない程かいていたので正確には息絶え絶えで言い返しておりなんかかっこ悪い。
銀城はその言葉を聞くや否や大声で笑いながら腕を元に戻して一言。
「そりゃあ悪かったなぁ、俺の負けだ」
そう言って真の頭をくしゃくしゃと撫でた。
一気に緊張感がなくなった銀城先生に真も呆気にとられて刀を消す。
「お前、まだ名前聞いてなかったなぁ。なんて名前だ?」
「奥橋真です」
「そうかぁ、じゃあ奥橋、お前明日からクラス変更な」
「はぁ………はい?」
今、この人なんて言った??
「喜べ。明日からお前は実技中心クラスに仲間入りだ!」
そう言って銀城先生はまた大声で笑いながら真の肩をバシバシと叩いた。
「…………えぇぇぇぇぇぇ!!!???」
真の声は銀城先生の笑い声よりも大きく広間中に響き渡ったそうだ。
ここまで読んでくれてありがようございました。




