嫌な予感
真がこの学園に転校してきて約二週間が過ぎ、やっと落ち着いてきた。
最初は慣れない事が多かったが今はもうオズ学園の生徒として溶け込めている。
真は学問中心クラス防御学科という場所に所属することとなった。
ルームメイトの赤姫 恋は同じ学問中心クラスだが学科が違う。恋は治療学科という場所に所属している。
学科は主に五種類ある。
1、戦闘学科
2、治療学科
3、防御学科
4、分析学科
5、開発学科
各生徒に最も適切な学科に入ることとなる。当たり前だが通常の教科の勉強もあり、期末テストも存在する。
学科の種類は実技中心クラスでもこの五種類であり、学問中心クラスと実技クラスでの大きな違いは実技クラスの生徒達は悪魔と戦闘になった時の訓練などの時間が勉強の時間よりも多いという事くらいだ。
真の所属する防御学科とはその名の通り防御のオズを中心的に学んでいく。
真は風を主に操る事を得意としている(設定)なので風を使って悪魔から身を守るための訓練を受けている。
攻撃系のオズはほんの少ししか習わない。本当に守りに特化したオズを教わっていて、二週間で結構強力な防御ができるようになった。
オズは主に呪文などは必要ない。すごく高度な技をする場合は必要な時もあるらしいが真はまだそんなレベルまで達していない。(と思う)
真のお気に入りはスノードームのような形の風のバリアを貼るものだ。
透明でまるでそこに何も隔たりがないかのように見えるがすごく分厚いバリアで五人ぐらいは余裕で覆うことができる程の大きさを作ることができるようになった。
他にも様々な方法を習っているがスノードーム(真が勝手に読んでいる技名)が一番簡単で素早く作ることができるので便利だと思う。
何気に真は日に日に新しい防御を覚えるのが楽しいと感じるようになってきていた。
~お昼~
真は大きな食堂の券売機の前に着いた。
「真!」
綺麗な白い髪をなびかせて、恋が真に駆け寄ってくる。この二週間恋にはお世話になりっぱなしだった。
恋は真の質問に一つ一つ丁寧に受け答えしてくれたので真がこんなに早く学園に馴染めたのも恋のおかげと言っても過言ではない。
「恋、お疲れ様」
「そっちこそ午前の授業お疲れ。今日、何食べる?」
「今日は、ガッツリ食べたいからカツカレーにする」
そう言いながら真は自分の腕に付けている時計を券売機にかざす。
すると、ピッという音とともに券売機のメニューのボタンが全部光出す。
この学園では必ず生徒は一つの腕時計を身に着けている。
学年によってカラーが異なり、真達の学年つまり高校一年生は黄、二年は青、三年は赤となっている。
ちなみに制服のリボンとネクタイも同様に色が異なっている。
この時計は勿論ただの時間を見るためだけの役割だけではなく、『ポイント』をためるための物である。
『ポイント』とは、毎日出席して授業を受けるだけでも必ず100pがもらえる。
このポイントがないと食堂で食べ物も買うことはできないし、下手すると進級できない恐れもあるのだ。
つまり、ポイントはお金でもあり成績でもあるということだ。
提出物をだしたり、遅刻しなかったりと普通に生活をしていれば進級に関してはなんの問題もない。
また、テストで学年上位を取ったりオズとして優秀な成績を残すとポイントは加算されていく。十二月に、このポイントが高い上位十人は『キング』と呼ばれるいわゆる特待生として認定されてすんごい重要な任務とかを任されたりするとかしないとか…。
兎に角、この『ポイント』は生徒にとって重要なのだ。
まぁ、その『キング』とやらには絶対に入ることはないだろうけど、入りたいとも思わない。
だって危険じゃないですか!色々と!!
私はひっそりと静かに息をひそめて学園で過ごしたいのだ。
こんなことをずっと思っていると悲しいかな、反対の方向へと引っ張られる事が時々起る。
私がオズ学園に転校してきてから約二週間、ようやく慣れてきた学園生活を楽しいと思い始めた頃のことだった。
私はいつも通りに授業を受けていつも通りの時間を過ごし、放課後になった。
教室からいつも女子寮までの道のりは約十分程度。
教材をスクールバッグに詰めて席から立ち上がり寮へと帰るため歩き出す。
いつもなら恋と一緒に帰るのだが、今日は恋が放課後は治癒系のオズの訓練補講があるので先に帰っていてと言われた。
なのでゆっくりと寮への道のりを歩いていた。
途中、二人で仲良く話しながら歩いている女子生徒たちとすれ違う。
そして、その数秒後のことだった。後ろから声が響いてきた。
「「いやぁぁぁぁぁ!!!!!」」
真は慌てて振り返る。
するとそこには先ほどすれ違った女子生徒二人がその場に座り込んでいる姿があった。
そして次に目に入ってきたのは、女子生徒二人のもっと向こう側に立っている悪魔だった。
かなり大きい図体をしており、見た感じ巨大な犬だった。
ただ、あまりに巨大で毛の一本一本が針のように鋭く紫色で顔には目玉が五つあり口元からダラダラと涎を垂らしているのですごく気味が悪い。
女子生徒たちはあまりの恐怖で動けないようだ。
悪魔がガパリと口を開けてその二人に飛びかかろうとしているのはすでにわかっていた。
だから、真は考える前に動いていた。
ガリィィッ
悪魔の鋭い牙は生徒たちに届く前になにか固い物にぶつかる。
「思ったより、分厚く作ってよかった~…」
真はそう呟きながら両手を前に突き出して風を集める事に集中する。今、真は生徒二人と自分をスノードーム状の形の風で作ったバリアで覆っていた。
ちらりと二人の無事を確認する。どうやら気絶してしまったようだ。
真は周りに他の生徒がいないかを確認する。
この場所は人通りが少ない。だから、悪魔は出現したのだろうか?
そんなことを考えている間に悪魔はより力を込めてバリアを壊しにかかってきていた。
少しバリアに亀裂が走っている。
このままでは壊されるのは時間の問題になってくる。
さすがに気絶している生徒を見殺しにはできないので真は決心する。
目の前で口をあんぐり開けて自分たちを食べようとしている悪魔に片手はバリアを保つために前に突き出したままもう片方の手を真横に突き出す。
そして頭の中で大きな切れ味の良い刀をイメージする。
真横に突き出した手の中に確かな感触があった。それをしっかりと握りなおす。
カチャリ
風を具現化させてつくった刀を悪魔にめがけて思いっきり振りかざした。
シュンッという音と共に悪魔はピタリと動きを止める。
そして何が起きたのか理解していないのか少し首を傾けてしまった。
次の瞬間、悪魔の首が地面に落ちた。
そしてすぐに砂のようになって跡形もなく消滅した。
真はそれを確認するとバリアを解いて刀を消して倒れている女子生徒たちの方を見る。
するとちょうど一人が目を覚ました。
「う…」
「大丈夫ですか?」
真は駆け寄りその生徒に問いかける。すると生徒は真の肩をがっしりとつかんで震えだした。
「あ、あぁ、あの、悪魔が」
生徒は真っ青な顔をして必死に真に悪魔のことを知らせようとしている。
「大丈夫です。もう、終わりましたよ」
「本当?」
「はい。悪魔は退治しました」
そう言うと彼女は安堵のため息を吐いて「ありがとうございます」と言って少し泣いていた。
しばらくの間その子の背中をさすってから落ち着いたところでもう一人の子と一緒に念のため保健室まで連れて行った。
そして風のように素早くその場を去ってから寮に帰りついた真は自分の部屋でベッドに倒れ込む。
……誰にも見られていませんように…!!そう心の中で呟きながらクマの抱き枕のお手てを合掌させていた。
どうしよう…嫌な予感がする…
真は大きなため息を一つしてから再びクマの抱き枕のお手てを合掌させて現実逃避をするのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。




