ルームメイト
※真は知らない人の前では結構女の子らしくしますが、親しい人の前では素が出て男の子っぽい口調になることもあります。
「ここが今日から真の部屋だよ」
赤髪の美少女、白木琴音に連れてこられたのは青い色の扉の前だった。
この寮は女子生徒専用で男子禁制らしい。
勿論、逆も然りである。
オズ学園は生徒、教師、その他職員全員が寮生活をしている正真正銘の全寮制。
学園内は関係者以外は立ち入り禁止、つまり、家族や友人もこの学園にどんなことがあっても入ることはできないのだ。
本当に厳しい厳しい学園である。
「真?どうしたの?」
「なんでもないっす。はい、本当に」
「…そう?じゃあ、中に入ろうか」
「は、はい」
つい考え事をしていたら心配されてしまった…これからはもっと気を付けよう。
そう決死してから真は改めて扉を見つめる。
よくよく見てみると『200』と金色の数字が刻まれてあった。
そんな真に気づいて琴音は丁寧に説明をしてくれる。
「扉についているのがこの部屋の番号だよ。忘れはしないだろうけど、覚えててね」
ニッコリとほほ笑みながら琴音がそう言うので真は少しドキッとしてしまい慌てて頷いた。
ガチャリ
扉を抜けた先には再び扉。しかも二つあった。
足元を見ると家の玄関のような場所があり、どうやらここからは靴を脱いで入るらしいとわかる。
自然と靴を脱いで一歩踏み出す。琴音は向かって右側の扉を開けた。
中に入るとそこには一つの勉強机とベッドが置いてあるだけだったが高価に見える。
広さは…意外と普通だった。なんかもっと広い部屋を想像していたのだが、まぁいいや。
「真の部屋は二人部屋で、玄関から向かって左の部屋には同じ年でクラスは一緒の子がいるよ。赤姫 恋って名前の子。今は授業でいないと思うから、真は荷物の整理をしておくといいと思うな。荷物は机の傍に置いてある段ボールの中に入ってるよ。手伝いが必要ならいつでも私や愛奈を呼びに来ていいからね!私と愛奈は同じ部屋で番号は『5000』だから」
「うん、…わかった。本当にありがとう」
琴音はその他の説明も終えると部屋から去って行った。
琴音ちゃん…いい子だなぁ…
一つ気になったのは部屋番号が『5000』ってことは一体この女子寮の広さはどれ程なのだろうかということだが、まぁ、今度聞いてみよう。
「さてと、はじめるか」
真はそう呟いて机の傍に置いてある段ボールを見ると何故か段ボールは一つしかなかった。
思わず首を傾げる。
おかしい…私の荷物は段ボール一つに収まりきる程少なくはなかったはず…
母に「真、この部屋ごと持っていくつもり?」と本気で言われてしまった程多い荷物だったはずなのだ。
だってこれからここで二十歳まで暮らすのなら、やっぱり居心地が良い場所にしたいじゃないですか?
計五つぐらいの段ボールが全部パンパンに隙間なく入っていた程の荷物を持ってきたはずなのに…
荷物は先に学園に送って一応検査をして生活に不適切であるとみなされた私物は速やかに自宅に送り返すと中丸先生が言っていたが、そもそも不適切なものの基準がわからないから何とも言えない…
真は恐る恐る段ボールを開けて中を覗く。
そして真は何回か瞬きを繰り返して思考が止まる。
「ふ、二つ…だけ?」
段ボールの中に入っていたのはお気に入りのクマの抱き枕と家族で写った写真一枚だけだった。
つまり、この抱き枕と写真以外は全部不適切だったと!?
思わずその場に膝から崩れ落ちる真。
どうしよう、早くも心が折れそうだ…美夏さんよぉ…
脳内では美夏が爽やかな顔で親指を立ててグッとしているだけだった。
それから三十分間の間、真はフリーズしていた。
だが、ずっとフリーズするのも時間の無駄だと気付いた真は少ない少ない家からの私物を両方の手に一つずつ持ち立ち上がる。
一つ(抱き枕)はベッドにもう一つ(写真)は机の上に。
「お片付け終了…」
寂しくそう呟いたその時ふと壁に赤くて丸いスイッチのような物が付いているのを発見した。
「?なんだろう…」
真はためらわずにそのスイッチをポチッと押した。
すると、次の瞬間今まで目の前にあったはずの壁が消え去っていた。
そしてその代わりに見たのは全体的に黒い物で統一されている部屋だった。
その中に一人の少女が立っておりこちらをポカンとした表情で見つめている。
腰のあたりまである長くて雪のように白い髪。大きくて真っ赤な瞳。
髪と同じくらい白い肌。
部屋に黒い色が多いせいで少女の白さはより際立っていて美しかった。
「………誰?」
小さいが凛とした声でその少女は問いかけてきた。
「奥橋、真です。今日からこの学園に、転校してきました…よろしくお願いします」
少し緊張しながら自己紹介をして軽く頭を下げる。
少女は真っ赤な瞳で真を見つめながら「そう」と呟くと何のためらいもなく一歩ずつ近づいてくる。
そして真の正面まで来た。背は真よりも結構小さくて小動物を連想させた。その少女は少し小首を傾げながら口を開いた。
「赤姫 恋。学問中心クラス、治療学科。よろしく」
そう言って赤姫は握手を求めるかのように手を出した。
真はその手をゆっくりと握って笑顔で再び言う。
「よろしく、赤姫さん」
「恋って呼んで」
「あ、うん。じゃあ、私も真って呼んで?」
「わかった。真」
無表情だけどすごくフレンドリーに接してくれる人で良かった…
真は心の中でホッとため息を吐いた。
「真…私と仲良くするの?」
「?うん、仲良くしたいけど…」
「大変…だよ?」
「??何が?」
「嫌になったら言って」
「…??」
「私、皆から嫌われてる。だから、あまり近づかない方が」
「私は恋と仲良くなりたい」
「え…」
「まだ私は恋のこと何にも知らない。だから、仲良くなりたい」
そう言って真はニッコリとほほ笑んだ。
「……っ」
何故か突然顔を伏せて恋はくるりと向きを変え自分のベッドにポフンと倒れこんだ。
「恋?どうしたの?」
真は慌てて恋に近寄る。
すると、恋は何やらブツブツと呟いていた。
あまりにボソボソと呟くのでなんて言っているのかは何一つ聞き取ることができなかったが、とりあえず恋は自分の枕に顔をうずめたまま「大丈夫」と言って大きく一回深呼吸をした。
そして勢いよく体を起き上らせて真の方を向き口をパクパクさせている。
「ぁ、あの」
やっと声を発した恋はそこから再び一つ深呼吸をしてからまた口を開く。
「ま、真?」
「はいはい?」
「友達になってくれる?」
恋は顔を真っ赤にしながら一生懸命その言葉を言ったのだろう。言った後少し涙目になっていた。
真はそんな恋を見てすごくキュンとなり癒された。
「勿論!」
そう言って真は笑った。
すると恋はポロポロと涙を流して「うぅ~」と唸りはじめた。
真は慌てて恋に近寄り「どうしたの?」とか「どこか痛い?」など聞いてみたが恋はどの質問にも首を縦に振らずただ一言ポツリと真の服の袖を少し掴んで呟いた。
「うっ、うれしかった…だけ。ごめん」
その言葉を聞いて真はキョトンとしてしまう。
な、何この可愛すぎる小動物みたいな子…
「泣いて喜んでくれるなんて、なんか照れるな…」
真はそう言いながら思わず恋の頭をポンポンと撫でる。
すると恋は真に抱き着いてまたポロポロと泣き出した。
真はとりあえず恋が泣き止むまで黙って背中を優しくさすっていた。
学園に来て初日。
私のルームメイトは優しくて可愛いらしいということがわかった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。




