第二十話 クラス分け
一言で言い表すならばオズ学園「デカいお城」だった。
真は口をポカンと開けたままただただ学園を見つめていた。
ここでこれから二十歳まで暮らしていくのかと考えるとなんだか不思議な気持ちになる。
「奥橋、着いたぞー」
「ふぃっ!?」
いつのまにか真の近くに来ていた新崎が耳元でそう囁くので変な声が出てしまった。
不意打ちってよくないと思うんだ。というか耳元で囁く必要もまったくないと思うんだ!
そんな気持ちを込めて新崎をジトリと睨んだが新崎はイタズラが成功した子供の様な笑顔で返してきた。
残念ながら気持ちは伝わっていないようだ。
「奥橋さんと九十九君は俺についてきて。他の奴は各自解散」
中丸先生はそう言うとさっさとどこかへ歩き出したので真はその後にあわててついていった。
ここで真は隣で一緒に歩いている人物に初めて意識を向けた。
もしかしなくても、今、横にいるのって美夏が言っていたあの噂の九十九先輩なんだっけ?
真は九十九先輩をまじまじと見つめて観察する。
…知らなかった。ウチの学校にこんな爽やかイケメンがいただなんて…!!
真は決してミーハーではない。ただ、この目の前にいる九十九先輩は本当に百人中百人が「かっこいい」と答えるであろうほどの整った顔立ちだった。
スポーツ万能で成績優秀、しかも性格は温厚で誰にでも優しく男女問わず皆から信頼されていたらしい。
全部美夏から得た情報なのだが、もし目の前のこの人がそんな完璧人間であるならば真はすぐに隣で歩くことを止めたくなるかもしれない。
スポーツは並大抵より少し低めの数値で成績中の中、性格は臆病で面倒くさがりで軽いノリで日常をどうにかやり過ごしている私と並んで歩くなんて恐れ多すぎるだろう!!
真は自分が自然に冷や汗をかいていることに気づく。
どうしようかと無駄に焦っているうちに中丸先生はある一つの大きな扉の前で立ち止まり真達の方を見て口を開いた。
「まずはこの部屋で昨日言っていたクラス分けを行うんだが、本当にすぐに終わるからあまり固くならなくていいぞ。クラス分けは一人ずつだからまずは…奥橋さんからいこうか」
「は、はい」
ガチャリ
扉を開き一歩踏み出して真は息をのむ。
そこにはどのくらいの広さなのかわからない程の大きな森があった。
真は室内であるはずなのに外にいるかのような感覚に陥る。
今、真は周りが木々に囲まれている場所に風を肌で感じつつ立っているのだ。
しかも上を見上げると先ほどまでいた外の天気と同じように雲一つ見当たらない青空が広がっている。
信じがたい光景だが、風が吹いて小鳥が空を飛んでいるのだ。
「…ここ、部屋ですか?」
かろうじて真は中丸先生に質問する。
「あぁ、ここは『訓練部屋』の一つだ」
「訓練、オズのですか?」
「勿論。ここは風や動物、植物などのオズを持つ生徒たちの訓練場所となっている」
そうなんだ。つまり、私はこれからこの場所でなんらかの訓練を受けることになるのか。
「あの、クラス分けって」
「あぁ、本当にすぐに終わるぞ。ちょっと待ってろ」
そう言うが早いか中丸先生はポケットから小さなホイッスル?を取り出して大きくそれに息を吹き込んだ。
ピィィィィィッ
森全体に響き渡る笛の音により結構な大きさの部屋であることを再認識させられる。
その笛の音が響き渡り消えた頃、森の奥から何かが姿を現した。
なんだろう?見たところ馬かな…?
真の目の前に白馬がゆっくりとした足取りで近づいてくる。
だがその姿がはっきりしてくるとどうやら普通の白馬ではない事がわかってきた。
なぜならその白馬には大きな鋭い角が一つ生えていた。
「えっと、中丸先生、この馬さんは…」
「この部屋の主であるユニコーンだ」
目の前にやって来たユニコーンは実際の馬の三倍程の大きさがあり、瞳は黄金色で全身が眩しいくらいの綺麗な白だった。
真はあまりの神々しさに息をのむ。だが、そんな真の反応をスルーして中丸先生は説明を始める。
「奥橋さん、まずはこのユニコーンの角を両手で握って」
「に、握るんですか?」
角を握ろうにも高すぎて届かないと思っているとユニコーンが頭を真の目の前まで下げてくれた。
突き刺されたら一発であの世行きになりそうな程鋭い真っ白な角を真は恐る恐る握る。
ゴツゴツとしているが妙に温かさを感じた。その時だった。
『名を名乗れ』
「えっ?」
突然頭の中に直接優しい声が響いてきたのだ。この声がユニコーンのものだとわかるまでに少し時間がかかった。
どうやら角を触ると意思疎通ができるらしい。
『そなた、名はなんという?』
「お、奥橋真です」
『オクハシマコト…では、マコト。そなたは学問をより究めたいか、それともそなたの中に眠るオズを引き出す事に力を入れたいか?』
「学問を究めたいです!!」
真は即答した。これだけは譲れない!!
『…そうか、それが本心ならばそれでよい』
こんなあっさり決まるものなんだ…
真は内心でホッと胸を撫で下ろした。だが、ユニコーンは再び話しかけてきた。
『待て。マコト…そなたは…』
「??」
そう言ってユニコーンは少しの間黙ってしまった。もう終わりなのかわからないので真はユニコーンが再び話すのを待っているとユニコーンは首を少し傾げつつこう告げる。
『まさかな…すまぬ。もうよいぞ』
「は、はい」
真はそっとユニコーンの角から手を離した。中丸先生が真に尋ねる。
「なんて言われた?」
「学問を究めたいって言ったら本心ならばそれでいいと言われました」
真が正直に答えると中丸先生は少し驚いた表情を浮かべつつ「そうか」と言った。
「てっきり奥橋さんは学問中心クラスはナシだと思ってた」
悪気のない笑顔でそう言葉にする中丸先生。
それはどういう意味で受け取ればよろしいんですか先生。
私が馬鹿すぎてってことでしょうか?そうなんですか!?
真はそう問いただしたいのをグッと堪えたのだった。
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