親友
魔人達が去った後は時間の流れが早く感じた。
まずは呆然としている真と海藤がいる教室に中丸先生と若宮が入ってきて何があったのかを詳しく説明することになった。
その後、真はクラスの皆の容体を確認をすることができた。幸い、皆ただ気絶していただけだそうだ。体に深い傷を負っている者も一人もおらず今はスヤスヤと眠っている。明日には目が覚めるということだ。
真は緊張が一気に解けてすぐに家に帰りたい気分だった。
すると何故か中丸先生は帰りは送っていくと言って車に乗せられた。
正直いって車に乗るほどの遠い距離ではないのだが何か話したいことがあるのだろう。と真はわかっていたので素直に従った。
車の中でしばらく無言だったのだが、中丸先生が突然話し出した。
「今回は奥橋さんのおかげで被害が最小限で済んだ。ありがとう」
真は中丸先生の隣でつまり助手席に座っていたのだが思わず中丸先生から顔を背けた。
「いえ、私一人じゃどうすることもできなかったですし、海藤君たちが私の内心を見たおかげですよ」
「…奥橋さん、なんか声が暗い気がするんだg「気のせいですよ」
ジトリと中丸先生の視線が真の背中に突き刺さっていたが気づいていないフリをした。
確かに今回誰一人として怪我をせずに済んだのは本当に良かったと思う。
ただ、問題なのは真がオズだとバレた事だ。
仕方がない事だったのだが本来なら真はオズだとバレないで済んだかもしれない。だからこそ海藤にあの時内心を覗かれなければ…という悔しさが今になって込み上げてくる。
まぁ、でも皆が助かったのは海藤のおかげなんだ真。我が儘はよくない。
真はそう自分に言い聞かせて落ち着かせる。
「奥橋さん、わかってはいるだろうが君は」
「オズ学園行き決定。ですよね?」
「あぁ、そうだ」
「せっかくここまで隠し通していたのに最後の最後でこんな事になるとは…」
「…奥橋さん、心の声漏れてるぞ」
「え?」
思わず真は中丸先生の方に顔を向ける。すると彼はこちらを見つめていた。
吸い込まれそうな深い青の瞳はとても綺麗だった。
思わず見つめ返すと中丸先生はニコリとほほ笑んだ。
ちょっっ!!それは反則でしょうよ!不意打ちにもほどがありますよ!?ずるい、これだからイケメンはずるい…!!
真は内心でパニック状態だったが冷静に中丸先生から目をそらして一つ咳払いをした。
「とにかく、私は明日からオズ学園の生徒になるってことですよね」
「そうだな。で、一つ聞きたい事があるんだが」
そう言って中丸先生は車を近くのコンビニに停めてエンジンを切った。
そして真の方を改めて見てから口を開く。
「君はいくつのオズを持っている?」
「…」
「予知夢はあるのは知ってる。だが、それだけじゃないだろう?そうじゃないと一昨日の検査のときにブレスレットが反応しなかった原因がわからない」
さてどう答えるべきか。別に嘘をつきたいわけではないけれど私はできるだけ目立ちたくないのだ。つまり珍しく何種類ものオズを持っている奴と判明したとしてなんやかんやで巻き込まれるのは御免だ。
だからここは無難な所を選びたいのだが・・・・
「普通オズは皆一つしか持っていないんですか?」
「いや、学園で学んでいけば種類は増えるケースもある。だが生まれつきに持っているのは大抵一つの者が多い。稀に二つか三つ持っている場合もある。だがそれ以上は聞いたことがないな」
「そうなんですか」
成程。ならばオズを三つ持っていることにしようじゃあないか!
「実は私、三つオズを持っています」
「三つ・・・」
「予知夢と風を操るみたいなのとテレポートみたいなの・・・です」
「・・・そうか。わかった。話してくれてありがとう」
よし、とりあえずは三つしかオズ持っていない事になった!!
「奥橋さん、明日すぐにオズ学園に転校となるんだが、軽いクラス分けテストがある」
「クラス分けテスト」
「本当に軽い内容だからあまり心配しなくていい。ただ、『学問中心クラス』と『実技中心クラス』のどちらが適正か調べるだけだ」
「学問中心クラス…」
真はそう呟いてゴクリと唾を飲み込んだ。
なんて魅力的なクラスなんだ!私は頭はいい方ではないが学問中心クラスに入ることが出来れば確実にひっそりと学園ライフを楽しめるのではないか!?
真は少し学園ライフに希望が見えてきたきがして思わずにやけた。
「安心しろ。奥橋さんは高確率で実技中心クラスだと思うから」
「えぇ!?何でですか?」
「君はオズをもとから三つも持っている。だから恐らくこれから学園で学んでいけばもっとオズの種類は増える見込みがある」
「ないです!見込みなんて一ミリもないです!」
「…ま、まぁ、とりあえずテストを受けることは知っておいてくれ」
「はい…」
こんなことならオズ二つ持っている設定にしておけばよかった…!
真は激しく後悔した。
その後中丸先生は自宅まで真を乗せていき両親にも説明していた。
真はその間に明日の準備をしなければならなかった。
なんでもオズ学園は全寮制なのだそうだ。
一度入学すると余程の事が起こらない限り自宅へは帰って来ることはできない。
なんと、早い子は生まれた時から二十歳まで学園で過ごすとか。
お金は全負担なので両親に迷惑をかける心配がない。そこは本当に良かったと真は安心した。
噂ではオズ学園の敷地はすごくすごく広い孤島であるとかないとか・・・。
つまり逃げることも周りが海では不可能。
なんでも過去に逃げ出そうとして海に飛び込みそのまま行方不明になった人が数えきれない程いるとかいないとか…
もう噂は尽きることなく今まで聞いてきた。
その噂のオズ学園に私は転校するのか…
真は大きなため息を吐いてベッドに倒れこむ。
明日、朝早くに高校に行き皆とお別れをしてすぐにオズ学園に行くと言われた。
真にはまだここでやり残したことがある。
それは長年出来なかった事、美夏に自分がオズであることを告白することだった。
今日の放課後言う予定だったが魔人のせいでダメになってしまった。
明日、言う暇あるのかな…何も言わずにはい、さようならは嫌だなぁ…
そんなことを考えている時に真の部屋をノックする音と母の菊の声が聞こえてきた。
「真、入っていい?」
「どうぞ」
ゆっくりと五歳から真を優しく時には厳しく育ててくれた母が入ってきた。その手にはなぜが受話器が握られている。
「真、美夏ちゃんから電話よ」
「え?美夏!?」
真は咄嗟に菊から受話器を受け取りすぐさま口を開いた。
「美夏、大丈夫!?まだ気分悪かったりしないの?」
『大丈夫よ、私タフだもの』
「いや、でも」
『いいから黙る。真、私はあなたに聞きたい事があります』
「はいはい」
『…オズってこと、バレちゃったんでしょ?』
「………え?」
真は自分の耳を疑った。真がオズであることは明日皆に知らせると中丸先生は言っていたはずだ。
なのにどうして美夏が知っているのだろうか?
「美夏、なんで知って」
『あんた、親友なめんじゃないわよ。そんなこととっくの昔に気づいてた。でも、真が隠しているみたいだったから知らないフリをしてただけ』
「…嘘でしょ?」
『残念ですが本当のことでーす!』
美夏は受話器の向こうでクスクスと笑い声をあげた。
「み、美夏、黙っててごめん。別に隠したかったわけじゃ」
『わかってる。別に怒ってもないし悲しくもないよ。ただ、学園に行っちゃうのは寂しいかも』
「…ごめん」
『何で謝るのよ、そこは美夏ちゃんめずらしい!とか言いなさいよ』
「…み、美夏ちゃんめずらs」
『遅い』
「ひどい…」
何故か真はそこで笑いが込み上げてきた。すると美夏もつられて笑っていた。
やっぱり、美夏には敵わないなぁ…
美夏はいつも私の行動を先読みしてどうすれば私が傷つかないか考えてくれている。
いつも助けられてきた、いつも励まされてきた。
「美夏」
『何?』
「今まで本当にありがとう。これからもよろしくね?」
『…何を今さらなこと言ってんのよ、死亡フラグですか?』
そんなことを言っているが美夏の声が震えているのが真にはわかっていた。
真も自分の目に涙が溜まっていることに気が付く。
「し、死なないよ!ひどいなぁ!」
『生きて帰ってきなさいよ?』
「当たり前じゃん!」
『…真』
「何?」
『私の方こそありがとう、二十歳になったら必ず顔みせなさいよ?』
「勿論!美夏も元気でいてよ?」
『当たり前でしょ?あんたじゃないんだから』
「私そんなに貧弱ではないと思うんだけど!?」
それから真達は二時間程他愛もない会話をしていた。会話が終わった後、真は部屋で静かにたくさん泣いた。
明日笑顔で親友に「いってきます」と言うために。
オズ学園の生徒は悪魔と戦い命を落とすことが多いです。




