信頼
かなり時間があきました。内容は女子高生が世界征服をしようと目論む悪の秘密結社と闘うお話です!
※嘘です
「奥橋、俺らを甘く見るなよ?」
どこか意地悪そうな、でも頼りになりそうな藍色の瞳に真は無意識に安心してしまったのかもしれない。
掴まれた腕に入っていた力が完全に消えてしまった。
いくらか落ち着いたので真は冷静に海藤へ視線を向ける。
「海藤君、あの、このことは」
「わかってる。バレないようにする。だから、もっと詳しく教えろ内心だけで」
真は少しためらったが今は皆の命に関わるかもしれない重大なこと。
言うしかない。全部包み隠さずに。
真がひとしきり話し(内心でだけど)終わるまで海藤は黙って聞いていた。
そして、聞き終わると少しの間何かを考えた後海藤は真の腕から手をゆっくりと離した。
「光、これは悪魔の仕業か?」
海藤のその言葉に真は首をひねり予知夢で見た男を思い出す。悪魔?確かに人間に化けて近づき人間を喰らう奴も見たことはあるけど、それにしては人間に近すぎる気配があった。
仮に悪魔が襲ってきたとしたら真にはわかる筈だ。今まで何度も悪魔とは遭遇してきた。だから見間違うはずがない。
「いや、残念だけど違う。奥橋さんが見た予知夢の男は人間だ」
若宮は冷静な口調でそう告げる。
「やはりか」
「じゃあ、人間ってことですか?」
真は若宮に思わず問いかける。
「あぁ、そうだ。でも、ただの人間じゃない。人間と悪魔の血をどちらも受け継いでいる」
真は固まってしまった。
つまり、それって…
固まってしまった真に優しい眼差しを向けながら若宮は説明してくれた。
「簡単にいうと人間と悪魔のハーフ(魔人)ってことだよ」
生まれて初めて知った。人間と悪魔のハーフがいるだなんて。
悪魔は人間を見ると一目散に喰らおうと襲ってくる。
そんな悪魔ばかりだと思っていたけど、人間と恋に落ちる奴もいるんだ…
「まぁ、本当に稀な事なんだけどね。人間と悪魔のハーフの数は少ないがほとんどが人間の姿をしているんだ。でも悪魔の血を受け継いでいるから人間を殺めたいという衝動に駆られてしまう者が多い。だから隔離されるか殺されることが多いんだ。残酷かもしれないけどね。無視するにも彼らは人間の姿で悪魔と同等の力があり尚且つオズまでもっている。だから野放しにはできないんだ」
若宮はそこまで話すと目を伏せた。そしてまた続きを話しだす。
「でも、世界中にはひっそりと生き延びている者も当たり前だがいる。彼らは自分たちを殺す人間を憎んでいる。息の根を止めるタイミングを窺っているんだ。そして、今年に入ってある噂が流れてきた」
「噂?」
「魔人が二十歳以下のしかもオズ学園に在学中じゃないオズを探しているという噂にしては怪しすぎる情報が入ってきたんだよ」
「どうして?」
「わからない。ただ、噂が本当ならオズの生徒を見つけて守らなければならない。というわけで僕達がこの学校に来たんだよ。」
「…じゃあ…魔人は今日ここに来てしまうんだよね?」
「奥橋さんの予知夢は当たる?」
残念ながら
「百発百中です」
すると海藤が小さく吹き出した。
今のどこに笑う要素があったのよ!
と真がムッとした表情で海藤を睨んだ。
海藤は「悪い」
と言いながら真面目な顔に戻った。
「とりあえず、安心しろ。他の生徒は巻き込まれないように手配する」
海藤の言葉に真は安心したと同時に不安もあった。
魔人はオズ学園の人々にバレたらクラス全員皆殺しって言っていた。いくら大丈夫と言われてもどうやって数百名の生徒を守るのだろうか?
「中丸もステラもいる。事情を話せば必ず皆助かる。本当だ。信じろ」
信じろって言われても…
真が黙っていると海藤が今までよりも近くに歩み寄ってきた。
「奥橋!」
あまりにも厳しい口調で言われたので真も思わず便乗して大きな声で返事をしてしまった。
突然右手をガシリと掴まれた。
「ひっ!?」
手が焼かれるのか!?と恐怖で頭がいっぱいな真の耳に入ってきたのは何とも棒読みのあの歌だった。
「ゆーびきーりげんまん、うーそつーいたら針千本のーます、ゆーびきった」
絡み合わせていた小指と小指がゆっくりと離れる。
真はポカンと口をあけてなんともだらしない表情になっていたが、新崎も同じような顔をしていた。
若宮は固定された笑顔で固まっていた。
ただ海藤一人だけは凄く真剣な顔で真を見つめながら一言。
「これで安心だろ?」
指切りされたぁぁ!?
しかも、ニコリと微笑みながら言われた!!!!
な、内容は突っ込み所満載なのに何も言えねぇぇ!
くそぅ!イケメンなら何やってもキラキラ輝くっていうのか!
理不尽だ!世界は理不尽すぎる!
なのに少し可愛いと思っている自分が悔しいっっ!!!
恐らく先程の微笑みはこの学校の女子生徒なら皆余裕でハートを射抜かれていただろう。(真を除いて)
海藤以外が固まっていたその時、中丸先生の声が聞こえてきた。
「奥橋さん!待て!そこを動くなよ?」
あ…そういえば中丸先生から逃げている途中だということを忘れていた。
中丸先生は少し走り疲れた様子だった。
あれ?私、足速かったっけ?
私が逃げてた場所から結構すぐだったはずだけど…
「ったく、突然走ったら見失うだろうが!」
「み、見失う距離じゃないのでは?」
思わず真は本音を口から滑らせてしまった。
すると、新崎が苦笑いしながら真に告げる。
「奥橋、中丸先生は迷子の天才なんだよ」
はい?
「それって…」
「「「方向音痴」」」
海藤、新崎、若宮が声を揃えてそう言った時、中丸先生はウッとあからさまにわかりやすく体がはねた。
「そうだったんですか…それは、なんというか…」
「いい。もう何も言うな。わかってるから」
中丸先生は自分でそう言いながらズーンという効果音が似合いそうな程落ち込んでいた。
「って俺のことはどうでもいい!奥橋さん!何を隠してる?」
「あの、実は」
真が全部話し終わると中丸先生はわかったと言ってどこかに電話をかけだした。
そして電話を終えると真達に向かって指示を出し始めた。
さすがはオズ学園の教員、先程海藤達に方向音痴と罵られ落ち込んでいた姿とは打って変わって今は最も頼もしい存在として真の頭で認識されていた。
その頃同じ時に神林高校近くの公園。
キィーコキィーコとブランコが揺れる音が静まり返っている朝に響いていた。
ブランコの音を鳴らしているのは身長が百四十センチ程の子供だった。
「ねー、まだ行かないのー?」
声は幼い男の子のようだ。
「まだです。というかあなたが午前九時と言ったのでしょう?」
ブランコの近くのパンダの椅子に足を組んで座っている女性はそう言ってため息をつく。
「時間なんざ守る必要ねぇだろうが。行こうぜ、早く」
待ちきれないといったような声でジャングルジムのてっぺんでまっすぐ立っているガッシリとした体つきの男性。
「まぁ、ニコルが午前九時と言ったので待ちましょうよ。一応こちら側が時間指定をしたのにその時間を守らないのはマナー違反でしょう?」
パンダの椅子に座っている女性はまた大きなため息をつきながらそう言ってどこから出したのか不明な分厚い本を開いた。
「メリスひどーい。僕悪くないもーん」
ニコルと呼ばれているらしい少年は頬をプクリと膨らめていじけたような声でそう言った。
「だからどーでもいいじゃねぇかよ、んなこと。マナーなんざ俺らが持ち合わせてると思ってんのか?」
「バラドと一緒にされたくありません」「バラドと一緒にされたくなーい」
女性と少年はピシャリと言い放った。
「けっ、可愛くねぇ奴ら。じゃあ、お前らと格が違う俺は先に行ってるぜ」
そう言うが早いかバラドという男はその場から姿を消した。
「はぁ、まったく…」
メリスという女性は頭を抱えながら今日何度めかわからないため息をつく。
「まぁ、いーじゃん別にー。バラドだしー」
「だからよくないんですよ!あいつが間違えてオズも殺しかねないから不安なんですよ!」
するとニコルはクスリと笑いを含めながらこう呟く。
「それならそれでいーじゃん。弱い奴ら(人間)なんていらないからさー?」
メリスはただ黙ってニコルを見て、ただ一言呟いた。
「…そうね」
それは憎悪に満ちた声でもあり慈悲に似た声にも聞こえた。




