誤魔化す
長い1日の翌日。
「セーフ!」
と言いつつ真は教室に滑り込んだ。
「おかえり、私の知っている真」
「美夏さん?それはどういう意味で?」
「遅刻寸前で毎日堂々と登校してくる奥橋真が帰ってきたって意味」
「ひどい。私だってやればできる子なのに・・・」
「やればね。でもやらないでしょう?」
「・・・・・」
くそう、この子面白がっていらっしゃる!!
でも返す言葉がない!!!
まぁ、でも私はこれでオズとバレる心配はなくなってくれたと願っている。
さすがにもう中丸先生は仕掛けてこないだろう。
真はそう思うと嬉しくてにやけてしまいそうだった。おかげで昨晩はぐっすり眠れた。
「真、朝から何かいいことあったの?」
顔に出ていたらしい。気を付けよう。
「いや、ただ普通ってすばらしいと思ってね・・・」
「誰のモノマネ?」
「いや、別にモノマネしたつもりは・・・」
「まぁいいや。それより真!九十九先輩オズ学園の人たちが帰る同じ日に一緒にオズ学園に転校だって!!」
九十九先輩・・・名前しか知らないけど、あなたは見つかってしまったんですね・・・
「・・・そうなんだ」
「真、あんたまさか」
「いや、別に」
「九十九先輩のこと好きだったのか~」
「うん、なんでそうなるのかな?」
「だって悲しそうな顔したじゃない」
「してないです」
「嘘~してたよ」
「してない」「してた」「してな」
このやり取りを二十回程繰り返したとき
「何をしてしまったんだ?奥橋」
興味津々といった顔で真と美夏の目の前にいたのは新崎だった。
「し、新崎君?」
「おはよう。奥橋、江本さん」
「「・・・おはようございます」」
何故か二人して敬語になってしまった。
まぁ、朝からこのキラキラ笑顔はまぶしいよな・・・・
「新崎君、どうしたの?」
「奥橋!今日の昼休みにすぐ職員室に来いって中丸先生からの伝言」
「私だけ?」
「あぁ、みたいだぜ」
「そっか、わかった。ありがとう」
「どういたしまして。・・・・奥橋」
「は、はい」
うん、私の顔に何かついているのかな?というかそんなに見つめないでほしい。
なんか子犬のようなつぶらな瞳がっ・・・・幻覚がっ
「奥橋」
「なんでしょう?」
新崎は何故か真に近づいてきて依然されたことのある匂いチェックをされた。
そして、固まっている真を再び見つめながら
「やっぱり、匂いがしないな」
と呟くように言った。
そらせない瞳、まるで真の中を覗き込んでいるかのようでゾクリとした。
思わず真は新崎から目をそらした。
すると新崎は「またね」と真の耳元でささやいた後
「じゃあ、確かに伝えたからな!」
とみんなに聞こえるように言って去って行った。
「いいな真、羨ましすぎるでしょ。何、モテキですか?」
真は美夏の嫉妬を軽く受け流しながら考える。
~「やっぱり、匂いがしないな」~
新崎の言った言葉がどうも引っかかる。やっぱり・・・?
さっきまで安心しきっていた気持ちが暗くなり不安に変わっていく。
昨日の検査で誰かに怪しまれたのか。可能性は高い。
そしておそらくさっきの言動から新崎も・・・・・
やばい、やっぱりオズを使ったのはまずかったか・・・・
それとも、表情でバレたとか?どれにしても怪しまれていることに変わりない。
「真!聞いてる?」
「ごめん、聞いてなかった」
ベシリと美夏に頭を叩かれた。
問題の昼休みがやってきてしまった。真はずっとどうすれば騙せるのかを考えていた。
ずっと考える。真、あなたはそんなに頭は良くないがやればできる子!!
そんな言葉を自分自身にかけながら真は職員室へ向かった。
すると、藤崎先生に声をかけられた。
「奥橋さん、ちょうどあなたを捜していたのよ!」
「?」
「中丸先生に職員室に来るよう言われていたでしょ?それ、視聴覚室に変更したって」
「視聴覚室?」
「えぇ、私は確かに伝えたわよ?じゃあ」
視聴覚室・・・なんて静かな場所を選んでくるのだ・・・
真は改めて自分にエールを送りつつ変更場所へと向かった。
一応最初にノックをしてドアを開けた。
「しつれいしま、す?」
思わず疑問形になってしまった。
なぜならそこには中丸先生だけでなく海藤と新崎、若宮までいたのだ。
「しつれいしました」
「待て待て、奥橋さん。ここであってるぞ」
思わずドアを閉めようとしたら中丸先生に止められた。
入るように促されたのでしぶしぶ中に入る。
ピンと張りつめた空気の中、真は押しつぶされそうだった。
「そこに座って」
「はい」
中丸先生と向き合う形で座った。
「早速一つ質問をしていいか?」
「はい」
きた。
「昨日奥橋さんの記憶を見たんだが、何故か五歳からしか見ることができなかった。このことについてなにか心当たりはないか?」
予想外のことを聞けれ少し返答が遅れた。
「・・・・ありません」
でも本当のことだった。
「そうか。なら、いいんだ。後、もう一つ質問」
中丸先生は真の目をしっかり見つめながら尋ねる。
「奥橋さんは、オズなのか?」
聞かれるとわかっていてもやはり体が固まってしまう。だがここで黙ると肯定しているととらえられてしまう。
「私が・・・ですか?え、お、オズ?私が?」
「昨日の検査の時少し、奥橋さんの表情が気になってね。昨日、君顔色が真っ青で目の下にクマもあったから。でも、今日は寝不足は治っているようでよかったよ」
「そんなに顔色悪かったですか?」
「「悪かった」」
中丸先生の代わりに海藤と新崎がそう答えた。
見られてたんですか・・・・
「昨日、君は俺が記憶の読み取りを始めた途端顔色がより真っ青になった。でも、読み取りが終わるとすごく安心した表情に変わった。まるで何かの秘密がバレずに済んだかのように」
「そんなつもりはなかったんですけど・・・」
「まぁ、オズだと疑う理由はそれだけなんだけど、一応確認させてもらってもいいか?」
「確認?」
「そう、これをもう一回はめてくれないか?」
そう言って中丸先生が手に持っていたのは昨日の検査のブレスレットだった。
「昨日、はめてなにもなかったんですけど」
「あぁ、でも本当に手間をかけさせて悪いがもう一度はめてくれ。確認のためだ」
ここから一目散に逃げ出したかった。これはもう駄目なんじゃないか?
あぁ、どうしよう。私のスクールライフが崩れ去っていく。
「わかりました」
真は震える声だとバレないように努力してそう答えた。
ブレスレットを受け取る。これをはめたら私は・・・・どうしよう。
皆見たことを忘れてくれたら・・・・ん?待てよ。
「奥橋さん?」
「はい、はめます」
真はゆっくりとブレスレットを手にはめる。
そしてその直後ガタッと大きな音を立ててたちあがる。
呆気にとられる四人。
真は大きく手を広げるそしてその手を勢いよく戻した。
パシンッという音とともに四人ともがキョトンとする。
その間に真はブレスレットをすばやくはずしてイスに座る。
そして何事もなかったように中丸先生にブレスレットを渡してこう言った。
「これでオズじゃないって証明になりましたか?」
「あ・・・あぁ、疑って、悪かった」
「いえ、こちらこそまぎらわしい行動をしてしまってすみませんでした」
なんとかごまかせた!真は内心で安堵のため息をついた。




