仕掛け
随分間があきました。
「美夏!おはよう!」
「…明日世界が終わるのかしら?」
「何で挨拶よりも先にそんな失礼なこと言うの!?」
「だって2日続けて真が遅刻ギリギリじゃない時間に登校だなんて…」
「いいじゃん!別に!」
「悪いとは言ってないけど、気味が悪いわね」
「ひ、ひどい。ひどすぎる…」
「親友だからこそ本音を言ってあげてるんじゃない」
美夏はムッとした顔で真にそう言い返す。
いやいや、普通ここは私がムッとした顔をしていい場面では…?
真はそう言いたかったが我慢した。
「真、そういえば昨日海藤君からもらってた指輪は?」
「え?なんかその言い方誤解を生みそうな…」
「だって本当のことじゃない」
「っ…まぁいいや。指輪は昨日海藤君に返却したよ」
「返却?つまりお断りしたってこと?」
「だから誤解を生みそうな言い方はやめなさい」
「だって~」
くそぅ、この子完全に面白がっている。
真はすぐさま話を切りかえた。
「そういえば今日って小テストあるっけ?」
「小テスト?ないけど…」
「そっか…良かった…」
「真…話をそらしたつもりなんだろうけど、全くそらせてないよ?」
「何のことかな?」
「…はぁ、わかった。今は何も聞かないけど後で教えてよ」
「…あはは」
真はかろうじてそう答えた。
真は中丸先生が昨日言っていたことばを思い出す。
仕掛ける。と中丸先生は言っていた。
一体何をするつもりなのだろうか…
真は自然と身体に緊張が走っていた。
「おい、奥橋」
真は嫌な予感しかしなかったが声のする方向に顔を向ける。
そこにいたのはわかっていたがやはり海藤だった。
「あ…おはよう。海藤君」
真は自分の笑顔が引きつっていないか心配しつつそう答えた。
すると海藤はいつもの無表情が少し不機嫌な表情へと変化した。
「お前…何に焦ってんだ?」
「え?」
唐突に海藤に質問をされ真は余計に焦った。
ゆっくりと真は海藤の手に昨日の恐ろしい能力がある指輪がはめられていないかを確認する。
よし、大丈夫。
真は内心でホッと息をつく。
もし海藤があの指輪をはめて今ここにいたらかなり本音を隠すのが難しかっただろう。
「聞いてんの?」
海藤はさっきよりもさらにイラついた声で真を見つめている。
朝からイケメンに見つめられるとか普通だったら幸せなことだろうなぁなどと呑気に真は内心で呟く。
「奥橋…」
「はい!」
ガシリと海藤に腕を掴まれ真は固まる。
やばい、この人目が笑っていない。
真が掴まれた腕に力を入れて引き離そうとした瞬間より早く海藤は「ちょっと来い」と言って教室から真を引っ張り出そうとしていた。
「え?ちょ、海藤君」
「ちょっと来い」
二回繰り返した。もうこれはもう一度言わせたら私の命に関わりそうだ。真は本能的にそう思った。なのでおとなしく海藤に連れられて教室を出る。
そして普段は使われていない教室に連れ込まれた。
「あの、海藤君」
「俺の質問に答えろ」
「答えろと言われても…別に何も焦ってないし…」
「じゃあどうしてさっき俺の手に昨日の指輪がないことを確認したんだ?」
バレていたのか…
「今日は指輪作戦ではないんだなって確認しただけだよ」
「本当にそれだけか?」
「そうだけど…」
海藤は黙ってじっと真を見つめる。
真はとっさに海藤から目をそらした。怪しい行動とはわかっているけれど、反射的に海藤に見つめられるということで緊張してしまったのだ。
少しの間沈黙が続いたあと海藤がポツリと真に向かって「そうか」とつぶやき、さっさと教室へと戻って行った。
その場に取り残された真はとりあえずホッとため息をついた、と同時に自分がオズだとバレていたのかという不安に駆られた。
自分の心臓の鼓動がやたらうるさい。
あぁ、何で朝からこんな不吉なことがおこるのだろうか…
真は重い足取りで教室へと戻った。
教室に入ると予想通りクラスの女子たちの視線が突き刺さってきた。
いやいや、私は海藤とはなんの関係もありませんよ?
と言いたいところだったが海藤本人も同じ教室にいるので我慢した。
「真、海藤君と何してたの?」
美夏がすかさず真にそう迫ってきた。
「いや、特に」
「海藤君に連れ去られておきながらよくもまぁそんな」
「ほ、本当に何もなかったんだよ!」
「そう?ならもういいわよ」
美夏はプクッと頬を可愛らしく膨らませてそう言った。
その後、真はただただ違うと言い続けることしかできなかった。
朝礼のチャイムが鳴り響いた。いつも通り藤崎先生が元気いっぱいの声で挨拶をしながら教室に入ってくる。そして教卓の前に立った。
「はい!皆さん!今日は突然ですが一時限目から昼休みまでの時間オズ適正検査を行ってもらいます」
クラスが一気に騒がしくなり、真は固まった。
「はい、静かに!まぁ検査っていっても軽い身体測定みたいなものです。グラウンドでクラスごとに並んで様々な」
他にも藤崎先生は何か話していたが真の耳には入ってこなかった。
これが中丸先生の言っていた「仕掛け」か…確かにこれは逃げ場がない。
真は嫌な汗が額にジワリと滲むのを感じた。
これは本当にやばい状況じゃないのか?真、今からでも遅くない。気分が悪いとか言って早退を…いや、かえってより怪しまれるか…じゃあ、どうしよう。
というか、オズ適正検査ってそもそも何?そんな策があったなら初日からそうすればよかったのに!
「真、着替えに行こう」
美夏の声が突然耳に入ってきた。
「着替え?」
「先生の話聞いてなかったの?体操服に着替えてグラウンドに集合だって」
「そっか。うん、行く行く」
「今日ラッキーよね~午前中の授業がつぶれるなんて」
「うん、そうだね~」
私にとっては不運なことなのだがそんなこと口が裂けても今は言えない。
私がオズだとバレないためにどんな手段を使っても構わない。真は強くそう思った。
今日を切り抜けることができればきっと私の明るい普通の高校生ライフが待っている!そう自分に言い聞かせ真はグラウンドへと向かった。




