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1-2 『突然』



新井雷樹はいつも通り街の商店街を歩いていた。帰り道である。しかし今日は寄りたい場所があったので帰り道とは少し離れ、さえに商店街の大通りとはちょっと離れたところにある、ちょっとしたカフェに行く。そのカフェは知り合いが経営しているので暇なときには行くことが多い。

 雷樹はいつものようにカフェの扉を開け、カウンター席の一番隅に座る。ここが一番落ち着く。店内を見渡したが知り合いの経営者は店内にはいないようだ。店内にいる多くも少なくもない。いつもこんな感じだ。

 雷樹はとりあえずコーヒーを頼んだ。いつもはコーヒーだけを頼むということはしないのだが今日は手持ちのお金が少なかったので仕方なくコーヒーだけである。

 コーヒーはすぐに雷樹のもとへ運ばれてきた。それを口に運びお金を置いて帰ろうとした時だ。

 ナイフを店員につきつけお金を要求している男がいる。要するに強盗だ。

それを見た雷樹は

「何してるんだ?」

 その強盗に話しかけた。

「黙れ!」

 焦っている。声からそれがわかった。若干震えていた。それだけで判断はできる。そう判断した瞬間、雷樹は強盗に近づいていった。

「動くな!」

そうは言われたが恐怖にすらならない。ある程度距離を縮めた雷樹はその強盗を思いっきり殴った。強盗は床に倒れこむ。ナイフは店員がひろった。これであれを使われることはないだろう。

 そこで

「やめてくれないかな、雷樹くん?」

 この緊張感のある空気とは全くべつな雰囲気を出す声が店内に響いた。茶髪のショートカットで、服装はショートパンツに白いシャツととてもシンプルな服装だが、ショートパンツが彼女のすらっとした足を目立たせたり、シンプルなシャツが彼女の胸元を強調したりと、色々考えられてるのだろう。彼女はこの店の経営者である、西城怜である。

「強盗だぞ、西城」

「そのくらい見ればわかるよ、強盗なんて・・」

 言いかけて西城はポケットから素早くナイフを出して強盗の首に突き付けた。

「こうすれば終わりでしょ?」

 西城は自慢げに雷樹のほうを見た。すごいとは思うがナイフを使うなら自分が普通に殴るほうがカフェの中のお客さんを怖がらせることもなかったのではないかと思ってしまった。

 その後警察によって強盗は逮捕され、雷樹と西城はカフェの中にある応接室に入った。


「で、何しに来たの?」

「聞きたいことがあったから来た」

 雷樹がカフェにきた理由は西城と話をするためだ。強盗なんかはどうでもいい。

「何が聞きたいのかな?」

「新しい特異性質者がこの街に姿をあらわしたと聞いたんだが」

  特異性質者、それは他の人間とは異なった性質を持った人間である。その性質には様々な種類があり、体の一部が発達していたり、飛び抜けている特異性質だと瞬間移動に似たようなことなどもできる。そもそもこの特異性質者は第二次世界大戦後、突然、現れだした。どこかの宗教団体は神からの贈り物だ。とか言っていたが、二◯二◯年に日本がそれをある程度解明した。特異性質者の体の一部(稀に全身というケースもある)の細胞が変形し、そもそもその体の部分が人間では無くなってしまっているらしい。このような説明を聞くと未知の怖い生物のようなイメージを持つ人がいるかもしれないが、変形していたとしてもあくまで人間の延長線上にあるのが特異性質者なのだ。どこかの研究者は人間の進化過程の中で起きた突然変異だ。という仮説もあるがその仮説の根拠となる事実が少なく、まだよくわからないところもあるのだ。そしてこの特異性質の力を銃や戦車などに応用し、それを圧倒的な兵器として扱い、第三次世界大戦を起こしたのが日本である。もちろん日本は歴史的勝利を収め、日本の経済は驚くほどに成長した。

「へぇ~、もうその情報掴んだんだ」

 そう言いながら西城は何枚かの紙がまとめてあるファイルを開いた。特異性質者の資料である。西城はこういう資料を集めるのが得意なのだ。それを雷樹に渡し、雷樹はそれを見ていく。だが新しい特異性質者の情報は何一つ載っていない。

「どういうことだ?」

「情報がないんだよ」

「ってことは問題にならない程度の特異性質なのか?」

「今のところはその可能性が一番大きいかな」

「それだといいんだけどな...」

「まぁその点はもう少し調べてみるよ。何かわかったらまた話すよ」

「頼む」

 そもそもなぜこの二人がこんな話をしているかというと二人とも対特異性質者としての訓練を受けているからだ。そのため普段は一般人として生活しているが、特異性質者が問題を起こせばそれを抑えに行くことがある。

「それじゃあ今日はもう帰るな」

雷樹は特異性質者について探ることは西城に任せたので帰ろうと思った。

「えー、もうちょっとお話しようよ」

 子供のように西城は言った。西城の困るところはこういう時、西城が可愛く見えてしまうことだ。年齢的には雷樹が一七歳、西城が二二歳と五歳も差があるのだがなぜか同級生やそれ以下の女の子のように可愛く見えてしまう。

「あ、今、変な目で私のこと見たでしょ?」

 笑いながら雷樹をからかうように質問した。西城はこういうのに対してはなぜか鋭いのである。

「見てねぇよ」

 若干うつむきながら雷樹は答えた。

「じゃあな」

 とりあえず雷樹は西城に別れを告げてカフェを出た。

 いつも思うのだが西城怜とは不思議な人物だ。雷樹と西城は知り合ってから七年目で小さい時から知っているのだが、まだよく理解できていない。まず二十歳で自分のカフェを立ててそれを今でもそこそこな売上で続けていること自体がよくわからない。すごい人なら続けられると思うがあの性格的に難しいのは・・・と思ってしまう。

 そんなことを考えながら帰り道を歩いて帰った。

 雷樹は小さくも大きくもないアパートに住んでいる。親とは雷樹が小さい時にあった第三次世界大戦で亡くなったと聞いている。だが生活に必要なものは基本的に送られてくるので生活に問題はない。これも国が戦争勝利を収めたことで得たために受け取ることができるようになったものだ。

「新しい特異性質者か・・・」

雷樹は特異性質者について思考を巡らす。特異性質者にはその力を人のためや社会のために使う人もいるがだいたいは自分の利益のために悪用するのが普通だ。しかし多くの特異性質者の特異性質は地味な特異性質が多く、あまり使えない特異性質であることが多い。

 害がない特異性質者であることを今は願うしかない。

 とりあえず今は考えても仕方がないので考えないことにする。雷樹はいつも通り適当にご飯を食べて、風呂に入り、そのまま寝た。


 翌日、この日は土曜日なので学校はない。

 いつも休日は街を歩いて時間を潰している。この日もそんな感じで過ごそうかと思っていたが、早朝に携帯に西城からメールが入っていて呼び出されていた。

 正直、要件はわかっていた。おそらく特異性質者が関係している。いつも「暇だから、遊ぼう」という時はとりあえずカフェに呼びだされることが多い。逆に他の場所の場合は特異性質者が関係している要件というケースが多い。今回は場所がカフェじゃないので後者である。

雷樹と西城は対特異性質者としての訓練を受けている。訓練といっても一ヶ月程度、特異性質者について学ぶだけで身体能力がいい人は大抵の特異性質者とは戦えるようになるのだが。しかし、それは特異性質者の特異性質があまり使えない能力である場合である。

とりあえず集合場所は雷樹のアパートから遠くないので歩いていくことにする。

 しかし、商店街とは逆方向なので若干地味な路地である。とは言え住宅街の近くではあるので子供たちが走り回っているのが見える。

 雷樹が集合場所へ向かい歩いていると、一人の女の人が十字路で立ち止まっていた。雷樹は道に迷ったのかと思い話しかけた。

「道に迷ったんですか?」

 するとその人は雷樹の声を聞いて振り向いた。身長は一五五センチくらいだろう。顔は・・・正直可愛い。髪は黒いが、髪型は西城と同じショートカットだ。しかし、西城とは違い胸は小さい。服装はどこかの制服のようだ。顔や身長、制服からして中学生だろう。

「見つけた」

 彼女はそう小さくつぶやいた。そして

「助けて欲しい」

「どこに行きたいんだ?」

「道に迷ったわけじゃない、助けて欲しいの」

 雷樹は少し彼女のことを不思議に思ったがちょっとタイプは違うが不思議な人の扱いは西城のおかげでなれている。

「俺は何をすれば君を助けられるんだ?」

「私を助けるんじゃなくて仲間を助けて欲しいの」

「じゃあどうすればその仲間を助けられるんだ?」 

 雷樹は再度問いかけた。

「政府を潰して欲しい」

「お前、何言ってるんだ?」

どうやら西城よりも変な人に会ってしまったようだ。政府を潰す?そんなことできるはずがない。

「俺には無理だ。そんなことできるわけないだろ」

「嘘、あなたならできる」

まるで雷樹を知っているみたいな話し方だ。しかし仮に雷樹のことを知ってたとして雷樹が政府を潰すことが出来るなんて言わないはずだ。

「悪い、おそらく人違いだ」

そう言って雷樹は彼女をおいてその場を去ってしまった。

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