1-3 『困惑』
お久しぶりです!前話の投稿から色々あって1年以上経っています(笑)最近はある程度、執筆できる時間が確保できるようになってきたので、ちょこちょこ投稿していきたいと思いますので、よろしくおねがいします!
少女の元から離れたあと、雷樹は西城に呼び出された場所へ向かい、ある程度歩くと目的地に到着した。そこは廃墟となっている工場のようなものだった。一言で言うと不気味だ。雷樹はこの周辺に住み始めて七年も経つが、ここが何の工場だったかは未だにわからない。
「ら・い・じゅ・く・ん!」
雷樹がこの工場について思考を巡らせてると、工場の雰囲気とは正反対の明るく、気の抜ける言葉が聞こえた。西城である。今日は大きなバックを持っている。おそらく、拳銃など、特異性質者と応戦する時の道具などが入っているのだろう。
「ここに特異性質者がいるのか?」
西城の変な呼び方はスルーし、真面目な質問で返す。
「うーん、特異性質者もいるかも」
「特異性質も」この言葉に雷樹は少し戸惑った。この表現の仕方だと特異性質者でない人間もいるらしい。
「今回はね、怪しい取引をやめさせるのが目的なんだよ」
「怪しい取引?それは警察の仕事だろ?」
雷樹や西城はあくまで対特異性質者としての訓練しか受けていない。密売など通常の人間が起こす事件は警察が抑えるものだ。
「そうなんだけど、頼まれたちゃったからさー」
基本的に特異性質者に関してのことは雷樹と西城は二人で動いている。そのような依頼を受けるのは西城の役目なので依頼主が誰なのかは雷樹は知らない。まぁあまり興味がないのでいつも依頼主を知らずにその依頼を受けている。
「まぁ、やっちゃおうよ~」
「わかった」
考えてもわからないので従うことにする。
その後、西城に戦闘の際の作戦や工場の造りなど多くのことを聞き、行動に移る。戦闘の際の作戦とは言っても雷樹が一人で突撃し西城が後ろでサポートするというだけだった。
「あいつらか」
工場の中を探すと簡単に人影が見つかった。人数は男が二人だ。この工場は入り組んでいるが大人が身を潜められるほどの場所はないらしいので敵はあの二人だけだろう。さらに一人の男がスーツケースを持っている。おそらく、あれが取引されるものなのだろう。
「もう行っていいか?」
敵は雷樹たちに気付いていないので気付かれる前に奇襲を仕掛けたい。そう思った雷樹は西城に問いかけた。
「うん、ただ一応、あのスーツケースには手を出さないで」
「わかった。後ろ、任せるぞ」
雷樹はそう西城に言って、敵の二人の元へ飛び出した。雷樹は戸惑っている男の一人を殴り飛ばした。その間にもう一人の男が拳銃を取り出し、雷樹へ銃口を向けた。
バンッ!その瞬間、乾いた銃声がなった。しかし、雷樹には傷一つない。ただ、男が持っていた拳銃が男の手を離れ、宙に舞いやがて床に落ちた。西城だ。西城が男の拳銃を狙い、拳銃だけを撃ち抜いたのだった。男は何が起きたのか理解できなくて戸惑っていた。その隙に雷樹がその男の懐に入り、殴り倒した。
「これで終わりか」
「そうだね、あとは一応二人とも拘束しようか」
西城は持ってきたバックからロープを取り出した。
「それ、いつも思うけど手錠とか使えないのか」
「手錠は好みじゃないんだよ」
雷樹の頭の中にハテナマークが浮かんだが、西城が不思議な人間ということはわかっているのであまり突っ込まないようにする。
二人が完全に気を緩めた瞬間、突然西城が持っていた拳銃とロープが床に落ちた。いや、叩き落とされた。
「えっ」
声を発したのは雷樹だった。雷樹は西城の背後に人がいるのがすぐにわかった。雷樹が最初に殴った男だった。しかし、雷樹が前、西城が後ろという並びで戦闘を行っていた二人に気づかれず、後ろにいた西城の背後に行くというのは不可能のはずだ。
「特異性質者か」
雷樹はそう言った。このようなことを出来るのは特異性質者しかいない。おそらく、足音、呼吸音など自分の存在感を消すことができるのだろう。
男は西城の首に腕を回し、いつでも首を絞められる状態で、さらに西城を盾にするように雷樹に向けた。
「動くな」
男は低い声でそう言った。雷樹は動けなかった。数秒間なら首を絞められても問題はないはずなので、その間に男に近づき何とかすることは可能だ。しかし、この男が拳銃やナイフなど、西城を一瞬で殺せる凶器を持っていたら雷樹が近づいた瞬間に使用するだろう。この男は存在感を消し、相手に近づくことができる。この特異性質は暗殺に適している。凶器を持っていないというころはないだろう。さらに西城は拳銃の扱い、頭のよさなどはずば抜けているが、筋力は雷樹とは違いほとんどない。このような状況で自力での打開は不可能だろう。
しばらく沈黙が続いた。
「何を迷っているの、あなたの特異性質を使えばいいだけじゃない」
その沈黙の中で、少女の声が響いた。
「お前は...」
雷樹はこの少女に見覚えがあった。身長が一五五センチ程度で黒髪のショートカットで胸が小さい。雷樹に「政府を潰して欲しい」と頼んだ少女だ。
「まぁ、あなたがしないっていうなら私がやるけど」
そう言って少女は男に近づく。
「動くな」
男は自分がいつでもこいつを殺すことが出来ると見せつけるように西城を少女に見せ、雷樹の時と同じく低い声で警告した。
「ごめんなさい、その人がどうなっても私には関係ないの」
そう言って少女はその容姿には釣り合わない拳銃を取り出し、西城を盾にしている男に向けた。
「やめろ」
雷樹はそう少女に言った。たが少女は迷いなくトリガーを引いた。
驚くことに少女が放った銃弾は西城には当たらず、男にだけ、命中していた。男が被弾し、力が緩んだ際に西城は男から離れる。さらに雷樹は西城が落とした拳銃とロープを拾い、男に近づき銃口を男に向けた。
「動くな」
雷樹は男にその言葉を返すように言い、そのままロープで拘束した。
もう一人の男も気絶していたが念のため拘束した。
その後、西城は依頼主に二人を拘束したことなどを電話で報告した。
「後の処理は依頼主さんがやるみたいだから、カフェに行こうか、もちろんあなたも」
電話を切ったあと西城はそう言った。少女もカフェに連れていくようだ。
カフェに着いた雷樹たちは従業員用の出入口からカフェに入り、西城がいつも取引先の人たちがカフェに来た際などに使用している応接室に入った。
「とりあえず、助けてくれてありがとね」
西城は少女に向かって礼を言った。しかしこの時に雷樹は違和感を感じた。普段の西城ならもっと明るく、少しふざけたような風に礼を言うはずだ。まぁ自分の命がどうなるかわからない状況で助けてもらったから、真面目に礼を言ったのかもしれない。
「で、雷樹くんとはどういう関係?」
低く真面目な声でそう少女に問いかけた。また違和感だ。こんな質問を西城が真面目に聞くはずがない。だがこの違和感もさっきと同じような理由しか思いつかない。
「私の全てを奪った人」
え?雷樹は自分の頭の中でこの少女と自分の関係のついて思考を巡らすが少女の答えとは一致しない。
「え、あなた何歳なの?」
西城も戸惑っていたが、冷静に年齢を聞いた。
「十四歳」
「雷樹くん...」
少女が年齢を答えると、西城は雷樹のことを軽蔑したような目で見た。
「いやいや、ちょっと待てよ!」
雷樹はその視線に耐えられず、少し大きい声を出してしまった。
「こいつとはちょっと道で会って少し話しただけだ!」
「少し話しただけで...」
「だから違う!」
完全に誤解された。それに少し西城は楽しんでいる。さっきの違和感は無くなり、いつもの西城に戻った感じがする。しかしなぜ少女はあんなこと言ったのだろうか。
「あ、変態雷樹くんに頼みがあるんだけども」
「ん、なんだ?」
少し間を空けて西城は雷樹にそう言った。雷樹は変な呼び方をスルーして普通に返答した。
「飲み物買ってきて欲しいんだ」
西城は財布から千円札を取り出し、雷樹に渡した。
「ん、別にいいけど、近くのコンビニでいいか?」
「うん、そこでいいよ」
「了解。じゃあいってくるわ」
雷樹は西城から受け取った千円札を自分の財布に入れ、応接室を出た。
西城が経営しているカフェの近くにはコンビニがある。西城のカフェにはよく行くので、このコンビニにも店員と知り合いになるくらいに通っている。
「いらっしゃいませ!」
店内に入ると元気のいい声が聞こえてきた。店員さんが雷樹のことに気づくと軽く会釈をしてくれたので、雷樹も会釈をする。
その後、雷樹は三人分の飲み物を選ぶ。西城はミルクティーが好きなのでそれを選ぶ。雷樹はコーラが好きなのでコーラを買うことにする。二人分の飲み物はすぐ決まったのだが、少女の分を何にするか悩んでいた。まぁ特に決まらないのでオレンジジュースにした。これなら「嫌だ」と言われることはないだろう。
三人分の飲み物を決めた時に雷樹はさっきまで忘れていた違和感をまた感じた。さっきまで雷樹たちがいた場所はカフェだ。カフェなら飲み物なんてたくさんあるはずだ。ということはあえて雷樹をカフェから遠ざけるために飲み物を買いに行かせたのだろうか。何かある。雷樹はそう確信した。
雷樹は飲み物を買うと、すぐにコンビニを出て、カフェへ走った。
カフェに着くと、すぐに従業員用の出入り口から入り、応接室に向かった。
応接室の前につくと西城の声が聞こえた。普段とは全く違い、大きな声だった。怒っているようにも聞こえるような声だった。
「なんで、雷樹くんが特異性質者だって知ってるのよ!」




