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 Side:橘八重



 俺がゲームをしている音が響くが、配信に対してポツポツ書き込みが入るようになった。

 なので七尾さんが読み上げていくんだが……


 「コメントの大半が私の復帰おめでとうになっちゃってて困りますね。

 ここは一応橘君のアカウントであり配信ですから、今回の配信に関するコメントでお願いします。

 とはいえ場を持たせる為に質問には答えますけど」


 答えるんかい、と思いながらゲームを続けるけど、意外に魔物が強くて大変だ。

 なんとか<はがねのつるぎ>は買えたけど、他の物というか<まほうのよろい>ってヤツが高すぎる。


 「この<まほうのよろい>というのだけ、非常に高価ですね?

 何が違うのかは知りませんが」


 「ですね? 何か理由があるのでしょうが、<はがねのよろい>とも違い過ぎます」


 「ネタバレになりますけど、その鎧は数歩進むとHPが1回復する鎧なんですよ。

 コメントにも書いている方が居ますけど、町の下の方に行くとゴールドマンが出て来るので、それを倒すとお金が稼げます」


 「ゴールドマン………成金?」


 「いや、違うから。

 そもそも急に人間が敵として出てきたりしないわよ。

 そんな<覇邪〇封印>じゃないんだから」


 「はじゃのふう〇ん?」


 「そういう名前のゲームがあるんですけど、青い服の商人は駄目ですが、赤い服の商人は殺していいゲームがあるんです。

 赤い服の商人は悪徳商人なので」


 「悪徳商人であろうと、人間は殺せば犯罪だと言ってくるのでは?」


 「ゲームってそれぞれ独立してますから、世界観が違うんですよ。

 なのでこのゲームで駄目な事でも、別のゲームではOKなんてよくあります。

 たとえば、このゲームだと魔物を殺せばお金が手に入りますけど、中には魔物を殺してもお金がまったく手に入らないゲームもあるんです」


 「むしろそれが普通では?

 魔物を殺しても、普通はお金が出てきたりしないと思いますよ?

 それにそんな事になったらインフレが止まらなくなるのでは?」


 「ですよね?

 そんな場所があったら、誰だって魔物を殺して生計を立てるでしょうし、そうすれば魔物が落としたお金が国中に溢れかえりますよ。

 その時点で経済が崩壊するでしょう」


 「この人達はもう……!!」


 なんか七尾さんが怒ってるけど、エルトアリアさん達もワザと言ってるし、七尾さんもそれは分かってる。

 俺はゲームをしながらも皆を自分の目で見て映しているので、結構忙(せわ)しなく視線を動かす羽目に。


 これが思っている以上に面倒臭いので、やっぱり固定された画面の方がいいと思う。

 ビデオカメラはエルトアリアさんが使ってたのがあったはずだから、それを借りて映した方がいいんじゃないかな?。


 「エルトアリアさん達が配信で使ってたビデオカメラを借りられませんか?」


 「構いませんけど、急にどうしたんです?」


 「このカメラだと俺の視点になりますから、さっきから視点を色々と動かさなければならず、ちょっと疲れてきまして……」


 「ああ、やっぱりこういう配信には不向きだったんだね。

 確かに視線を動かして映さなきゃいけないってなったら、それだけ色々と見なきゃいけないし、そうなるとゲームもしていられないか」


 どうやら気づいてもらえたので、エギルターサさんがビデオカメラを取りに行ってくれた。

 これでようやく視線ウロウロから解放される。

 ゲームがし辛くてしょうがなかったんだよ、本当


 エギルターサさんが三脚も持って来てくれて、カメラを固定してから配信用のカメラを切り替える。

 ついでにSDの消費もこれで無くなるから助かるよ。


 あの撮影水晶、地味にSDを消費し続けてたからなぁ。

 多くはないし消費は少ない方だけど、それでも消費され続けるのは納得いかなかった。


 「これで後ろからの固定視点になりましたけど、どうでしょうか?

 顔が遠くなった? それは仕方ないでしょう。

 ビデオカメラはそういう物です」


 「ズームすればいいのでは? そこまでする意味があるのかは知りませんけど……」


 「魔王様が魔王様じゃないって書かれていますけど、そういえば口調が違う事がありますね?」


 「これはメイド姿の時のものです。

 数千年このような事をしてきましたのでね、結構染み付いてしまっているのですよ。

 やっていた理由は、愚かにも我が家を探りに来たり襲って来た者を捕らえる為です。

 私がメイドをしているなど思わなかったのか、結構な者が引っ掛かってくれましたね」


 「もちろん分かっている方は居ますし、そういう方は最初から喧嘩を売ってくるような事はしません。

 しかし、どこにでも愚か者というのは居るのです。

 そういった者を捕らえては潰し……」


 「様々な物の素材として使っていたわけですね。

 少し前に主様が使われた邪魂縛鎖結晶。

 あれも愚か者が材料に使われています。

 そして人間もそういった物の素材として使えるのですよ。

 ですので、どんどん日本に工作員を入れてくれると助かります」


 「完全に唯の素材扱い……」


 「愚か者どもなど要らないのですから、役に立たせてあげているのです。

 むしろ感謝してもらいたいぐらいですけどね?

 人間がどうして生きる価値も無い連中を生かすのか分かりません。

 生かす価値が無いものは、生かす価値が無いのですよ」


 「日本にだって<穀潰し>という言葉があるでしょうに。

 アレは無駄飯喰らいという意味なのですから、せめて素材として役に立ってくれないと駄目でしょう。

 有限な食料を減らす者など要りませんよ」


 なるほど、人間とは食べる者が根本的に違うもんなぁ。

 それを考えると無駄飯喰らいは早めに潰されるって事か。

 それが虚界の普通なら素材にされるのは当然だろうし、悪魔の人達が容赦ないのも分かる。

 唯の文化の違いだ。




 その後もゲームを続けていき、夕食には適当にピザを注文して食べた。


 配信だが、割と七尾さんやエルトアリアさんへの質問が多く、俺のゲームプレイはスルーされている感じだ。

 とはいえ俺的にはその方が助かる。

 なんか妙に敵が強くなってきて、先に進むのが難しくなってきたし。


 「橘君、そろそろ鎧が取れるようになっているはずなので、取りに行きましょう。

 と、コメント欄に出てますよ?」


 「よろい?」


 「最強の鎧ですね。

 とある町にありますので、さっさと取って身につけた方がいいです。

 既に盾は最強で、剣は一歩手前ですからね。

 後は鎧を最強にするだけです」


 「はあ……」


 俺は言われた通りの町に行き、そしてとある一角に差し掛かった所で急に出て来た魔物を倒した。

 ビックリするほど強かったが、それでも倒せないほどじゃなかった。

 とはいえギリギリだったけど。


 「手前の方で変な人魂が言っていたので分かりましたけど、さっきの魔物、思っていたよりも強かったですよ。

 あんなに強いなんて予想外でしたけど、勝てて良かったと思います。本当」


 「ん? 明日もこのゲームで配信するのかって出てますね?

 ……知っている人も多いですし、視聴者が飽きた可能性が高そうです」


 「そうなんですか? だったら明日は配信無しで普通にゲームしてます」


 「一斉に「余計な事を言うな」の大合唱になってますけど、明後日はどうするんですか?」


 「明後日は異界に行きますよ?」


 「だったら、その日に私も行きましょう。

 異界探索の先輩でもありますし、少しは他の連中から絡まれるのも防げるでしょうしね」


 「なら、明日にでも屋敷に取りに戻りましょうか?

 何か渡せる物があるかもしれませんし」


 「同じ程度の物で良いでしょう。

 あまり差があるようだと、今度はそちらに合わせられてしまいます。

 出来れば八重に合わせた魔力量の物にするべきですし、となるとSD換算で90~100辺りですか」


 「その程度なら幾らでもありますね。

 下っ端が使う物でしかありませんし」


 そうなんだよなぁ。

 ローブだって倉庫で眠ってたくらいだし、本当にそのレベルの物なんだよ。

 悪魔の人達にとっては。


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