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Side:橘八重
邪魂縛鎖結晶を置いたエルトアリアさん達と共に、俺達は新宿へと戻る。
既に配信は停止していて映っていないものの、御三方が超絶に目立っている所為であまり意味が無い。
電車で戻り、新宿区の家電量販店へ。
そこでモニター2つとデスクトップパソコンとノートパソコンを購入。
モニターの一つは七尾さんで、残りはエルトアリアさんが買っていた。
全部即決の現金で購入し、何故かお金はエギルターサさんのメイド服のポケットから登場。
200万以上を現金一括で支払っていたが、何故あれだけの現金が小さなポケットから?
「このポケットは指定した場所と繋がっているのですが、【空間魔法】の応用でこの程度の事は簡単に出来ます。
人間がいちいち持ち運びに苦労している意味が分かりません。
異界に行くなら分かるのですが……」
あ、はい。そんな便利な物があればそうでしょうね。
そして異界では効果が無いと。
やっぱりあの狂った空間は特殊なんだなというのがよく分かる。
出る事は出来ても、入る事は危険すぎて止めた方がいいレベルだ。
トンデモな空間なのがよく分かる。
逆を言えば、そんなトンデモ空間でない限りは、空間そのものを好きに弄れると……。
それもおかしいと言えば、十二分におかしいとしか思えない。
まあ、悪魔の人達からしたら普通の事なんだろうけどさ。
そんな訳の分からない買い物を終えた後、俺達は真っ直ぐタワーマンションへと戻った。
そして余っていて使われていない一室を借りて、そこにゲームを繋いで準備完了。
俺は昨日の続きをしていく。
………んだけど、何故かエルトアリアさんが部屋に居るままだ。
今日は家畜牧場とやらに行かなくていいんだろうか?
「家畜牧場で私がしなければいけない事は全て終わっています。
後は向こうの技師と女王に任せておけば問題ありません。
それよりコレは何ですか?」
「これはゲームです。
ただし相当に古いと言いますか、家庭用ゲーム機が世に出て、そこまで時が経っていない頃の物ですね。
ですのでグラフィックもアレですし、今の物よりも見劣りしますけど、俺は初心者なので丁度いいかなと」
「そろそろ配信も始めたいんだけど、カメラに関しては先程の緑の水晶でいいんですよね?」
「そうですね。
誰が配信するかで変わってくるでしょうが、どうします?」
「ライブデーモンにアカウントを持っておられるなら、そちらでもいいですし。
ライブジャパンで新規アカウントを作ってもいいと思います。
どちらがいいでしょう? ライブジャパンなら橘君のアカウントという事になりますけど……」
「だったらそれでいいのではないですか?
こちらの方のアカウントは私かエギルターサが使う事になるでしょうし、もう一つそちらの側のを作っておくべきでしょう。
そうすれば様々に配信できるでしょうしね」
「とはいえ、配信なども含めてどうしていいか分からないんですけどね。
まず何をすればいいんでしょう?」
俺は配信用アカウントの作り方と、緑の水晶の使い方を聞いて覚える。
正直に言ってアカウントを作る方が面倒で、緑の水晶を使うのは簡単だった。
この落差はいったい何なんだろうって言いたくなる。
「そもそも使う道具が複雑など、使いにくくて仕方ないでしょう。
道具は可能な限りシンプルな方が良いのですよ。
無駄に凝る者も居ますが、使う者の事を考えないのは唯のマヌケでしかありません」
「それは本当にそう思います。
とりあえず配信用のアカウントは出来たので、まずは配信していきますか。
とはいえカメラじゃないので、全編が俺視点になってしまうんですけどね」
「だったら私が使おうか?
私なら後ろで見ていれば済むし、全体が見渡せる位置に居るけど?」
「それはそれで大変ですし、まずは俺の視点でやってみましょう。
代わりに趣旨説明とか、お願いします。
言い出しっぺなんですから」
「まあ、それはね。
………ノートパソコンもOKだけど、これ最新モデルだけあって、私のボロいのとは全然違うね。
やっぱり早めに異界に潜ってお金稼ごう。
こうやって触ってると、最新のが欲しくなる」
「カメラはオンにしましたけど、どうです? 映ってますか?」
「………うん、映ってる。
後はコレを配信設定にして、と。
………それじゃ、行くよ。
5、4、3、2、1、ゼロ」
って始まったのはいいけど、まずはアカウント作成者である俺が話さなきゃいけないのか。
「えーっ……突然、俺の視点で始まって困惑していると思いますが、エルトアリアさんが作られた新しいカメラをテストしています。
で、この配信なんですけど、趣旨説明はこの方に御願いします」
「はい、お久しぶりでーす。
七尾ですけど、最近はそろそろ異界探索者に戻ろうと思って更新に行っていきました。
なので既に異界に行けるんですけど、今までは色々忙しかったのでこれからになりますねー」
「そちらはプライベートな事ですから、この配信の趣旨説明をお願いします。
ファンの方が今も多いので分かりますけど」
「あ、そうだった。……ゴホン!
この配信はゲーム初心者どころか触れた事もなかった橘君に、色々なゲームをやらせてみようという企画です。
不定期ですけど暇なら配信しますので、見たい人だけ見て下さい。
で、第一弾がアレですね。昨日からやってます」
俺はモニターの方を向き、ゲームを再開する。
といっても王様の前からであり、昔は王様に話しかけるとパスワードを教えてくれたそうだ。
今は王様に話しかけるとセーブできる。
「よく考えたら、セーブさせてくれる王様が最強なんじゃ……」
「言いたい事は分かるけど、昨日と同じく野暮なところにツッコんじゃ駄目だよ。
昨日なんて<ぬののふく>が売ってるなら裸じゃないの? とか言い出して困ったんだから」
「<ぬののふく>……ですか?」
「ええ、<ぬののふく>という鎧カテゴリーの防具が売ってるんですよ。
だったら主人公は布の服すら着ていないのが正しいですし、という事は全裸なんじゃないかと思うんですけど……」
「考えてみると確かにそうですね?
<ぬののふく>すら着ていないのであれば、それは裸と言って差し支えないでしょう。
貫頭衣ですら布の服と言えますからね、それも無いとなれば……」
「昨日<どうのつるぎ>を買った後に、ふと思ったんですよ。
こいつもしかして、全裸で剣だけを持ってるんじゃないかと」
「全裸で剣………!!」
急にグラドウェムさんが爆笑し始めた。
でもなー、想像してみるとマジでそんな光景しか出て来ないんだよ。
だって<ぬののふく>なんだよ? 服って書いてあるんだ。
だったら最初はそれ以下だって事になるじゃん。
「確かにそう言われればそうですね?
このゲームとやらを作った者は何を考えてそんな風に作ったのでしょうか。
意味が分かりません」
「普通はそういう細かいところにツッコんだりしないんですよ。
全裸で剣を持ってる主人公とか、唯の変質者でしょうに。
だったら今の装備も十分におかしいでしょ?
裸の上から<てつのおの>と<くさりかたびら>に<てつのたて>ですよ?」
「せめて布鎧を身につければいいと思いますが、鎖帷子を直接肌の上に着るとは………なかなかの剛の者ですね?」
「そういう意味じゃありませんし、それしか持ってないっておかしいでしょ? って事です」
「<やくそう>も持ってますよ?」
「シャラップ!!」
何故か黙れと言われたが、そもそも<やくそう>と<りゅうのうろこ>も持ってるんだよなぁ。
なんで握り締めると防御が上がるのか不明だけど。
普通は握り締めるとパンチ力が上がると思うんだけど、何故かゲームの世界では防御が上がる。
あと防御が上がり続けてるって事は、ずっと握り続けてるんだろうか?
片方は武器で、もう片方は盾を持ってるのに?
………これもよく分からないな。
リアクションありがとうございます




