0089
Side:司会者
「えー、はい、はい。
総理官邸で記者会見が行われるようです。
そちらに中継を繋いでみたいと思います。
〇〇さん、そちらはどうですか?」
『はい、こちら総理官邸の記者会見場に居る〇〇です。
現在は記者会見の準備も既に終わり、後は総理と御二柱の方々をお待ちするだけになっておりますが、現在のところまだ……』
ざわざわ、ざわざわ……
「どうやら総理と御二柱の方々が来られたようです。
これから記者会見が始まると思われますが、その前にいったんCMです」
記者会見が始まると簡単にはCMに行けなくなるので、今の内にCMを挟んでおく。
それ自体は普通の事なので当たり前だが、今日の会見はどうなる事やら。
おそらくは台本に書いてない指示が突発的に出るだろうから、しっかりとカンペを確認しなければ……
今のところはプロデューサーもディレクターも態度は変わっていない。
ならそこまでの会見ではないのかもしれないな。
失敗すると睨まれたり干されたりする、胃の痛い内容じゃなさそうで安堵する。
中には裏のスポンサーの御機嫌を損ねる恐れのある会見とかもあるし、そっちじゃなくて助かった。
「そろそろCM空けまーす。5、4、3、2、1………」
おっと、もうCM明けか。
表情をしっかりして、真面目な顔でやらないとな。
「そろそろ記者会見も始まりそうですので、中継を始めます。
コメンテーターの皆さんには後でご意見を伺いますので、よろしくお願いします」
そう言っておくものの、こいつらの言う事なんて最初から決まってる。
そもそも台本ありきだし、こいつらは悪魔に対して反対しかしない。
裏のスポンサーが出せって言ってきた連中だが、本当にこんな奴らを出して物を言わせて大丈夫なのか?
私は悪魔どもに目を付けられたくないぞ。
『それでは記者会見を始めさせていただきます。
まず第一に、今回女王陛下と最高位悪魔の方が我が国に来られたのは、とある注意喚起が目的であられました』
『注意喚起? それはいったいどのような事でしょうか?』
『それはこれから説明いたします。
ゴホンッ! 御二柱からの御忠告では、我が国に対して行われている攻撃、つまり工作活動には当然裏に他国の存在がある。
しかし、その裏には別の悪魔の方々の勢力があるとの事でした。
そもそも虚界において、悪魔の方々も長く争いがあったと聞きます。
現在は小康状態でありますが、無くなった訳ではないと』
『では、外国からの攻撃には悪魔からの攻撃も含まれるという事でしょうか?
そうなれば悪魔の方も参戦なされるという理解でいいですね?』
『静粛に。今はまだ総理の発言中です。
全ての発言が終わってから質問を受けますので、それまで静かにお願いします』
『我々はマスコミであり、国民の知る権利の代弁者だ。
国民には知る権利がある以上、我々の質問に答える義務があるだろう!』
『『『『『そうだ! そうだ!』』』』』
『ですので質問は後で受け付けます。
今は総理の発言を静粛にお聞きください』
『我々の質問には答えないつもりか! 国民の知る権利を『ケェル』なん』
ドゴン!!
『鬱陶しい事をガタガタと五月蠅い連中だ。
死にたいならば声を出せ、全員殺してやる』
『『『『『『『………』』』』』』』
『続けろ』
『ハッ!』
………相変わらず恐ろしい連中だ。
気に入らない事があれば次々に殺していく、やはりあんな野蛮な連中が日本を支配しているなどおかしい。
なぜ自衛隊は何もしないんだ、なぜ警察は何もしないんだ。
今こそ国民の為に立ち上がる時だろうに!
このまま日本があんな野蛮な連中に支配されてもいいというのか。
日本はいつから悪魔の犬になったんだ。
自衛隊や警察が何の為にあると思ってる。
こういう時の為に税金を払ってるんだから、戦わないなんてあり得ないだろう。
こういう時に戦って死ぬのが自衛隊であり警察だぞ!
『という事で、我々は外国勢力からの防衛を強化すると共に、国内に潜伏している外国勢力や工作員、または協力者を逮捕して引き渡す事を決めました。
これは現在警察がしている事の延長であり、現行法のまま可能な事であります』
なんだって!?
司法の場に連れて行かず、悪魔に勝手に裁かせるなんて事を本気で考えているのか!?
それでは既に法治国家とは言えないだろう!
いったい何を考えているんだ!!
『国民の皆さんの中にはおかしいと思われた方も、法治国家として疑念を抱かれた方もいるでしょう。
ですが現在の外国勢力の攻撃から日本を守る為には、これが一番確実な方法であると、私は総理大臣として断言致します』
確実な方法? そんなものはどうでもいい!
日本が法治国家ではなくなる事の方が問題だろう、何故それが分からない!?
『そして現在、自衛隊や警察へと既に命令を下しており、水面下での情報収集で敵性工作員である可能性が高い者を確保に向かっております。
一般の皆様に関しては、そのほとんどの方が対象ではありません。
日本を危険に晒していた者達の逮捕ですので御安心下さい。
それでは頼んだよ』
ダダダダダダダダダダダ!!
『確保!!』
ダン! ドタッ! ガチャッ! バタバタ!
画面の中で次々に警察に捕まっていく記者達。
つまりあそこに居る者達は敵性工作員という事か?
そんなバカな、彼らは唯の記者だぞ!
これでは独裁国家と何も変わらないじゃないか!!
いったい日本はいつから独裁国家になったと言うんだ!!
『彼らの裏には外国勢力がおり、そこから資金を得ていた事は既に証拠付きで突き止めてあります。
今まではそれを踏まえて意図的に流してもいい情報や微妙に間違えている情報を出してきましたが、これからはその必要も無くなりますな』
『そもそもこの国は罪のある者に対して甘すぎるのよ。
さっさと殺すか潰せばいいものを……。
そうしないから、まともな国民が困るのでしょうに。
今までのやり方では、まともな国民に犠牲を強いているようなものよ』
『いや、情けない話ですが、まったくもって返す言葉がありません。
この者達が好き勝手に言葉を書き換えるので、書き換えられた言葉を国民が信じてしまうのです。
その所為で我々は手足を縛られたようなものでしたし、党内に腐った連中を抱えねばなりませんでした』
『あのゴミどもか。
既にほとんどを連れて行ったが、これで多少はマシになる事を期待する。
ならねば国民の半数ほどを始末するだけだ。
ゴミに存在価値は無い故にな』
『………』
なにを勝手な事を! ゴミは貴様ら悪魔だろうが!!
虚界なる所から来て、勝手に地球を荒らす害虫が!!
ダダダダダダダダ!!
「確保!!」
「「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」」
な!? いきなり警察が来ただって!?
バカな、今はオンエア中だぞ!
なぜ勝手に部外者が入ってくる!! ぐぁっ!?
「古立市郎。
外国からの贈賄と、それに関する嘘や捏造を流布した国家攻撃の罪で拘束する。
連れて行け!!」
「ぐっ! そんな罪など存在しない!!
私は違法な事などやっていない!!!」
「お前が何を喚こうがどうでもいい。
お前達は理解していないんだろうが、既に法も国家の形も変わっている。
今は悪魔の方々が居る日本なのだ。
いつまで1999年までの日本に生きている気なのか知らんが、今は2004年だぞ。
既に変わった後だという自覚も無しか」
「なんだって!?」
「お前に説明しても意味は無さそうなのでな、いちいち説明なぞしてやらん。
連れて行け!!」
「ハッ!」
「クソッ! どういう事だ!? 何故私が逮捕されなきゃいけない!?
……弁護士、弁護士を呼べ!!」
「下らん。
お前が連れて行かれる場所は虚界だ、そしてそこには弁護士の用意などされん。
何故なら日本ではないからな」
「なっ!? それでは法はどうなる? 日本国憲法は?!」
「お前達が法律や憲法を都合よく使う時代は終わったんだよ。
それをまだ理解できてなかったのか。平和ボケにも程がある」
へ、平和ボケ………?




