0086
Side:橘八重
SDを売ってお金にした後、俺は適当にSCCの中を見回る事にした。
特に何かがあったわけではないが、一ヶ月は通った場所だ。
祖父母の実家がある青梅市よりは、よっぽど思い出も思い入れもある場所になる。
青梅は三年も居たのに何の思い出も無いからな。
それはともかくとして見て回っていると現在講習中であり、調子に乗ったヤツが叩き潰されていた。
俺が通っていた時にも居たが、ああいうヤツは必ずいるみたいなんだよなー。
そして怒られて逆ギレして辞めるまでがセットだ。
「クソッ!! こんなチマチマしたのなんか、やってられっか!!
こっちから辞めてやるぜ!!」
そう言って講習室を出て来たのが居るが、あいつ昨日のチーマーじゃん。
なんであいつが講習を受けに来れてるんだ?
………となると、昨日の事件は事件にすらなってないって事か。
やっぱり警察はクソでしかないな。
そんな事を思っているとチーマーと目が合い、ヤツはこっちに向かって来た。
俺は何の用も無いのに、なんでいちいち絡んで来るんだよ。
「お前、昨日のヤツじゃねえか! ふざけんなよ、逃げやがって!
それよかテメー、さっさとそれ寄越せや。オレのもんだろうが!」
「何言ってんだ、お前?
いつからお前の物になったのか理解不能なんだがな」
「ふざけんじゃねえぞ!
テメーがオレのもんを奪っていったんだろうが!!
さっさと返せ!!」
「いや、本当に意味が分からないな。
お前トチ狂ってるんじゃないか? 早く病院に行った方がいいぞ?」
「はあ? テメーが奪っていったんだろうが、さっさと返さねえと警察呼ぶぜ?」
「呼べば? 俺は呼ばれても何ら問題はないから、さっさと呼べよ」
「へえ? お前オレが何も考えずに警察を呼ぶと思ってんのか?
テメーはこれで刑務所行きが決定だぞ」
「ならそれでいいじゃないか。
さっさと呼べよ、待ってやるからさ」
「ケッ! なら後で泣きを見るんだな。
素直に渡してりゃいいもんを」
そのチーマーが警察に通報したので俺は待ってやる。
上手くいけば警察壊滅の糸口になるんだから、俺がわざわざ逃げる意味が無い。
なので警察が来るまで一緒に居て待ってやった。
その間も偉そうに語ってくるが、俺はチーマーの話をガン無視し続ける。
すると、どう考えても警察じゃないヤツが警官っぽい恰好をしてやってきたのを見て噴き出す。
しかも昨日のチーマー連中も一緒になってやって来た。
なるほど、そういう方向でやってきたのかと思うが、コントとしたら上手く出来てるんじゃなかろうか。
「で、君がコイツに奪われた物を返せと言っているのに、コイツは返そうとしないという事か?」
「そうなんっすよ。さっさとパクって下さいよ、こんなヤツ」
「おい、お前! さっさと奪ったモンを出せ!!」
「あのさ、幾らなんでも下手クソ過ぎないか? 後ろで警察官の恰好をしてるヤツ。
昨日俺を襲って来たチーマー連中じゃないか。
むしろ警察を騙ってるってなると詐欺になるんだが、それ普通に犯罪だからな? 全く理解してないようだが」
「警察官を詐欺師呼ばわりとは、お前は公務執行妨害で逮捕する!!」
「そもそも公務の執行を妨害してないだろうに、何を言ってるんだ?
適当に公務執行妨害とか言えば逮捕できると思い込んでるだけだろ。
お前の警察官のイメージ、物凄く貧弱だな? もう少しちゃんとやれよ」
俺がそう言うと、警官役のヤツは顔を真っ赤にしてプルプル震え始めた。
あからさまにキレかかってるが、幾らなんでもキレやす過ぎるだろ。
言葉は悪いが警察なんて耐える仕事だぞ。
理不尽なイチャモンやクレーム、それに出動要請に悩まされながら酔っ払いの相手。
そんなのが警察官の仕事なんだが、こいつが出来ているとは思えないな」
「テメェ、ふざけやがって!! ブチ殺してやる!!!」
警官役のヤツは突然腰の銃を抜いてこちらに向けて来た。
なので俺はすぐに相手に背を向ける。
パン! パン! パン! パン! パン! パン! カチッ、カチッ
俺の背中におそらく当たったと思うんだが、何の痛みも無いし怪我もしていない。
なのでこのローブには全く傷が付いていないようだ。
元から大丈夫だろうと思っていたが、なんの問題も無かったようで助かる。
調べた事が無いというか、調べられなかったので一種の賭けではあったんだけど、その賭けには勝ったらしい。
「このローブには銃弾が通用しないんだが、やっぱり頭が悪いと分からないか。
そして銃声がしたんで、必ず多くの人が駆け付けるぞ。
ついでにあそこを見ろ、監視カメラがあるからな?」
俺がそう言うと、昨日と同じく一斉に監視カメラを見るチーマーども。
本当に懲りない連中だ。
「テメーら、なんで監視カメラの場所を調べてねーんだ!! ふざけるなよ!!」
「すんませんっした!」
「「「「したっ!」」」」
なんか昨日と同じコントをやっているようにしか見えないが、コレは俺がローブという強力な防具を持っていたからというだけだ。
無ければとっくに死んでる。
それと、今回の事で警察に通報しても無駄だから止めておく。
昨日もアレだったし、本当にするだけ無駄だと思っている。
それにしなかったらしなかったで、こっちが悪いという事にしてくるだろう。
あんなのとやり合うだけ無駄だ。
自分達に都合のいい事しか言わないし、やり取り自体が無駄でしかない。
そんな事を考えていると、周りからゾロゾロと人が集まってきた。
すると連中は「ニヤリ」と笑った後、突然大きな声で話し出す。
「キミ! 早く彼から奪った物を返したまえ!!
それは彼の物だろうが!!」
「そもそもこれは貰い物で俺が頂いた物だ。
お前らチーマーの物じゃないよ」
「訳の分からん事を言うな!! さっさと奪った物を返せ!!」
そんな事を言ってくる最中、突然横にサキュバスの人が現れた。
で、俺と警官に扮したチーマーを見た後、突然チーマーを殴りつけて吹っ飛ばす。
ドゴォッ!!
「嘘を吐いているのはお前でしょうが。
そもそも彼はエルトアリア様の契約者。
嘘を吐く必要がどこにもないうえに、お前達は彼から嘘と捏造で奪おうとしている。
お前達は私達サキュバスの事も理解しないで騒いでいたようね?」
「な、なにが………! あいつはオレの物を奪ったんだぶぉぇっ!?!??」
ドゴッ!!
「私達を舐めているのかしら? お前達の心の声など聞こえているのよ。
私達色欲の悪魔は、悪魔の中で最も心を読む力に長けているの。
その私達を本気で騙せると思っているとは………随分と舐め腐ってくれるじゃない」
あーあー。完全に怒らせているよ、あいつら。
確かにサキュバスやインキュバスの人達に簡単に分かる嘘を吐くって、完全に舐めているとしか言えないもんなぁ。
そりゃ怒るわ。
「こ、心が読めるってなんだよ。
聞いてねぇよ、そんなこと……」
そんなチーマーの声が聞こえてきたが、こいつらバカすぎない?
そんなの今の世じゃ常識だろうに、その程度の事も知らないって………
「マジかよ。
あいつら悪魔の人達が心を読めるってこと知らないんだってさ。
どこの山奥で暮らしてたんだ? 町で暮らしてたら都会じゃなくても知ってるぞ。
どこの秘境の原人だよ、あいつら」
「げんじんwwww」
なんだか掲示板だと草が生えているような反応だが、殴り飛ばしたバカどもを、インキュバスの人が首根っこ持って引きずってきた。
「こいつらは虚界に連れて行った方が早いな。
どうせこの国の連中ではまともに裁く事も出来んだろうし、こっちで都合よく使った方が良かろう。
こんなゴミでも有効利用は出来る」
拷問ですね、分かります。




