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 Side:七尾はる



 橘君が帰ってきたけど、鞄と服を買いに行っただけで、何故そこまで色々な事に巻き込まれるのかしら?

 不思議で仕方がないけど、話をよく聞くと、また彼の持ち物を奪おうとした愚か者が出たみたいね。

 いい加減に呆れて来るけど、どうしてこうもバカばっかりなのかしら。


 それに警察も警察よ。

 通報したにも関わらず、また動こうともしない。


 もしかしたら緊急通報センターにも<正義警察>が居るのかしら?

 でなければ疑ってかかるっておかしいでしょ。


 緊急通報センターなんて内容を聞き出して、最寄りの警察に連絡するくらいのはず。

 それが何で疑ってかかるのやら。


 「本当に訳が分からないけど、何故まともに業務一つ満足に出来ないのかしらね?

 緊急通報センターなんて状況を確認して、その情報を最寄りの警察に報(しら)せるだけでしょうに。

 それで仕事は終わりのはずよ。

 なぜセンターが勝手に取捨選択するのか……意味が分からないわ」


 「俺だって分かりませんよ。通報したら「冷静そうだから怪しい」ですからね。

 必ずパニックになって通報しなきゃいけない義務でもあるんでしょうか?

 警察って本当に不思議な組織だと思います。

 もしくは緊急通報センターは警察とは関りが無いんでしょうか?

 民間の会社?」


 「そんな事は聞いた事が無いけど、もしかしたらそうなのかもね。

 通報してもそれじゃ、<正義警察>が蔓延(はびこ)ってるか、それとも適当な仕事をしているかでしょう。

 通報しても意味が無いなら、自分で自分の身を守るしかないんじゃない? 警察に価値は無さそうだし」


 「ですね。

 警察が仕事しないなら任せても無駄ですし、なら自分で自分の身を守るしかありません。

 任せても無駄ですし、そんなのに捜査権なんかの権利を与えてもね。

 自分達の都合よく振り回すだけでしょうよ」


 「でしょうね。

 流石に三度も通報してそれじゃ、どうにもならないわ。

 少なくとも、警察が警察の仕事を放棄したという事実は間違いないんだもの。

 通報しても動かないってそういう事なんだけど………分かってない気がするわ」


 「まあ、いいですけどね。

 外に出る時は小角杖を始め、武器を持っておいた方がいいと思いますし。

 いや、あれはやり過ぎかな? だったらあの大した事がない方の棒を持っていくか。

 それでも棒は武器として使えるし」


 「そうね。

 護身用と言えば許されると思うけど、本当なら前に持ってたステッキが一番いいと思うわ。

 アレなら持っていても問題はないはずだし、いざとなれば身を守る為に使えるもの。

 魔王様に言えば、くれると思うわよ?」


 「ですかねえ……とはいえ、これ以上お世話になるのもどうかと思うんですよ」


 「それは言わない方がいいと思うわよ?

 今さら過ぎるし、多分だけど黙ってた方が怒ると思うわ」


 「そんなものですか?」


 「そんなものよ」


 っていうか、どう考えても女性の気持ちを分かってないわよね?

 まあ、去年まで中学生の男の子だし、分かれっていう方が無理か。

 言わなかったら絶対に魔王様が激怒して暴れるから、出来る限りそうならないようにしてほしいんだけど………。


 そこが分かって無さそうなのよねえ。

 とはいえ私が言うのも変だし、私からそういう注意をしたら、こっちに矛先が向きそうで怖いのよ。

 なのでなるべく自分で気づいてほしいんだけど、まだまだ先は長そうな感じかな。


 …

 ……

 ………


 夕食をコンビニで買ってきて部屋に戻ると、ちょうど魔王様一行が帰って来ていた。

 私達は下のコンビニで夕食を買ってきた事を伝えると、何とも言えない顔をされてしまう。

 とはいえ庶民の食事なんてこんなものだし、安いので助かるのよね。

 


 「まあ、そなたらがそれで良いのなら構わんが………他にも食べる物は沢山あるようだが?」


 「それはお菓子類ですから、別腹です。

 それはともかく牧場の方はどうなったんでしょう?」


 「まだまだ建設は始まったばかりですね。

 しかし建物なども多くないですので、そう時間も掛からずに完成するでしょう。

 あくまでも家畜を置いておく為の用地と建物ですからね。

 それも粗末な物で問題ありませんし」


 「というより、家畜である事を理解させる為に粗末な物でなければいけません。

 どうせ<肉魂単一環>で逃げる事は出来ないんです。

 あとは寝泊り用の家畜小屋があれば済みますからね。

 拷問自体は見える場所で行いますし」


 「ついでにだが、この日本にある刑務所とやらの囚人の中でも重罪の者らは家畜小屋に移送となった。

 それと怪しい連中に加え、日本人以外の者も対象だ。

 向こうで拷問して色々と吐かせる事になったからな。

 おそらく、まともな証言は出ないであろうが一応だ」


 「まともな証言が出ない?」


 「それはいったい……」


 私も橘君も首を捻ってしまう。

 そもそも色欲の悪魔の人達は心を読めるはずだし、だったら全てを明るみに出せるはずよね?

 なのにまともな証言は出ないって……


 「そもそもだが、心を読めても本人が記憶しておらんなら意味が無いのだ。

 たとえば洗脳してしまうとか、暗示にかけてしまうというのもある。

 もしくは一時的に乗っ取るという方法も無いではない。

 そうなると本人は記憶しておらぬと言うか、見て聞いて喋っていても、その記憶を引き出せんのだ」


 「自分ではない自分が見て聞いた事など覚えていないというヤツですね。

 こちらでも二重人格などがあるでしょう?

 アレと同じく本人には記憶が無いと言いますか、記憶を脳から引き出せないわけです。

 そして引き出せない以上は、隠す以前の問題になるわけですね」


 「そもそも知らないのですから、心を読んでも出てくる事はありません。

 特に乗っ取り系が厄介なのですが、アレを受けている間の記憶は全くないのです。

 本人からすれば寝ているに等しいわけで、どう足掻いても記憶という物が存在しません」


 「暗示や洗脳に乗っ取りや呪い、それに薬物や道具に契約。

 そういった方法で操られると、大本まで辿り着くのは難しいとしか言えません。

 ですから日本人以外も家畜牧場に収容するんですよ。

 徹底的に調べる為に」


 「日本人であれば、そこまでされる可能性はそこまで高くない。

 もしやったのであれば、それは間違いなく日本国内に居る悪魔だ。

 外からそういった事をするのは不可能だからな。

 記憶を残さず操る方法の全ては、入念に刷り込まねばならん。

 一瞬で出来る事ではない、なので痕跡は必ず残る」


 「残っていないなら日本以外の国でされたという事ですね。

 だから日本人以外となるわけです。

 少なくとも観光旅行などは止めていないので、旅行者の中に紛れ込ませている可能性もあります。

 悪魔が紛れ込む可能性は低いでしょうが、無いとも言えないのが難しいところですね」


 「それなりに長い期間は虚界も小康状態だったからな。

 もしかしたら我の事を知らずに突っかかってくる阿呆もおるかもしれん。

 もしくは十三傑の色欲以外が嗾(けしか)けてくる場合もある。

 下っ端がやった事だとして済ませる可能性は高い」


 「そういう意味でも、これから多くの物事が起こる可能性があります。

 なので気を付けて下さい。

 流石に貴方達を狙ってくる可能性は高くないでしょうが、悪魔であれば直接狙ってくる可能性は否定できません。

 危ないと思ったらすぐに逃げるのが一番いいでしょう」


 「逃げさせてくれるかは分かりませんけどね」


 確かにそれはあるのよね。

 高位悪魔なんていう時点で逃げられないし……。

 いえ、上級悪魔ですら無理か。

 それぐらい強い人達だもの、全力で逃走しないと。


 でなければ間違いなく逃げ切れないでしょう。

 流石に悪魔の人達が相手だと逃げるのも難しいけど、異界の武器があればなんとか逃げる隙ぐらいは作れるはず。


リアクションありがとうございます

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